第23話 女難

駅前の占い師に占って貰ったら...女難の相が出ていた。


結婚してお金が無いからここ暫く占って貰わなかった。


独身の頃は、良く困ると此処で占って貰っていた。


1件1000円とリーズナブルでお人好しなのか、この1000円で1時間近く幾つも質問した事がある。


もはや1件1000円で無く...何件でも1000円だな。


うん、当たっているな。


感情的になるもんじゃないな、つい【魅了】を使ってしまったが、いま思えば使うべきじゃ無かった。


【魅了】の最大の問題は...一度掛けてしまったら解けない事だ。



スマホを見ると留守電にメッセージが入っていた。


義両親からだった。


メッセージを聞くと...やばいな。


簡単に言うなら...


孫の恵美は凄く反省している。


貰ったお金も手をつけず、一種懸命バイトをし始めた。


償いとして生涯結婚もしないで、【俺の介護をするつもりでいる】との事だ。



そして更に元嫁の陽子の事も入っていた。


今はパートだが事務職で働いているらしい。


日々頑張って正社員を目指している。


【泰章が体を壊したのは自分のせい】だから、自分が働いて食べさせていく【勿論介護も頑張る】だから復縁して欲しい。



そんな話だ。


そして、何より、義父に義母は二人を応援するようだ。


最後に「今直ぐとは言わない、本気で反省しているようだから、もう一度だけチャンスをあげて欲しい」


そう入っていた。



本当にヤバイ。



多分義父母が怒っていたのは2人が余りにも俺を蔑ろにしたせいだ。


今の2人は、【俺の為に頑張っている】対外的にも...いや本当にそうだ。


それは彼女達の本当の心じゃない...【魅了】により捻じ曲げられた心だ。



だが、【魅了】に掛かったと言う事は...あいつ等二人は【本当は誰も愛していなかった】魅了は本当に愛する者が居たら掛からない。


【真実の愛】それだけが魅了を防ぐ。


だが、これは後からでは意味が無い、後から本当に好きになる人間が出ようが、本気で愛してくれる人間に出会っても手遅れ。


魅了に掛けられた時に【本当に愛する者が居た】そういう場合のみ掛からない。



二人に魅了が掛かったと言う事は、結局、陽子は神谷を愛していなかったという事だ。


俺にはその確信があった...だからこそ魅了を使った。


俺に最初言い訳をしていた位だから、お金だけの薄っぺらい関係だった筈だ。


だが、魅了に掛かった事でもう一つの嫌な現実も解ってしまった。



それは【俺も愛して貰って無かった】そういう事だ。


もし、神谷との関係が過ちで、本当は俺が好きだった...そういう事なら魅了には掛からない。


魅了に掛かったという事は、腐れ嫁も腐れ娘も【俺を愛してくれていなかった】その証拠になる。



ただ、今現在は【魅了】に掛かっているから、ある意味【本当に愛されている】そういう状態になっている。


だが、それは...本当の愛じゃない。


多分、あの日トラックに轢かれる前の俺が本当に欲しかった物...それが今は目の前にある。


俺が一言「許してやる」そう言えば、あの時どんなに手を伸ばしても手に入らなかった物が手に入る。


だが、それは、違う物だ。



どうした物かな。



もし、俺がマリアーヌに逢わなければ【それで良かった】のかも知れない。


だが、たった数日だが【本気でを愛してくれた】その想いを知っているからこそ、駄目だ出来ない。



直ぐじゃないなら...何か考えよう。



俺はビールでも飲もうと冷蔵庫を開けた。


無いな...仕方ないから、コンビニに買いに行くか。


幸い、コンビニは歩いて5分と近い。



コンビニでビールと弁当を買っていると、見知った人物と目が合った。


「あっ、今井泰章さん...お久しぶりです」


「神谷真理さん、どうしたんですか? こんな所で」


「いえ、ちょっと買い物に、あと神谷は、その正確には違います...要真理が正しいです」


「あっそう言えばそうですね」


「はい、まぁ会社では叔父様が認めてくれないから、神谷ですがそれは姪の私には関係ないですから」


何故だろうか?


真理を見ていると...癒されるのは、まぁ気のせいだろう。


「そうですね、それじゃ俺はこれで」



「あっ、今井さん」


「どうかされましたか?」


「いえ、何でも無いです」


「それじゃ、失礼します」



《落ち着きなさい...なんで顔が赤くなるのよ、なんで離れるだけで悲しくなるの? あーっもう、恋をするという事は馬鹿になるそういう事なの? この私が、真面に話せなくなるなんて...馬鹿らしいわ》



「はい、それじゃまた」



はぁ~ 神谷が失踪するなら...これもやるべきじゃ無かった。



確かにこれは女難だ。







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