第20話  裕子、転落の始まり

私は何時も様にお酒を飲んでいた。


本当に忌々しいわ、浩二は結局...使えなかったわ。


【表で活躍するより裏で暗躍した方が金になる】


そんな事言いながら、結局は...役立たずだった。


ヤクザとのつながりは終わった。


もう【神谷浩二】の看板は無い。


プライムコーポレーションにいる【渉外部長】どんな案件でもかたずけられる。


それが夫だった、暴力から地上げ、その汚い事の全てを全部解決してきた。


故に一番美味しい汁が吸える。


だが、それも裏に座間会、しいては竜ケ崎の力があればこそ。


その力があるから、北条の嫁に娘を押し込めた。


それが...簡単に瓦解した。


何が起こったのか解らない...


だが、その原因の中心に、今井泰章がいる。


あの男の妻に浩二が手を出してから、運命は転がりだした。


不倫の慰謝料に...2500万、そんな金額すら踏み倒せない。


退職金なしで解雇させようにも出来ない。


何かとんでもない力を持っているような気がする。



だが、それよりも驚くのは【あの真理が好意を持っている】


これは可笑しい、我が娘ながら、あの子を見ていると蛇に睨まれた様な気がする。


私や夫以上の化け物にしか思えない時がある。


しかも、あれ程までに欲していた...北条への執着も無くなった。



絶対に今井泰章には何かがある。



まぁ良いわ...あの子が何か考えがあり、お金に困らないのなら問題は無い。


多分、浩二は終わりだから、次は育てた恩があるから【真理】に寄生すれば良いわ。



「裕子さん、今日は元気なさそうですね、何かあったのですか?」


「うん、何でも無いわ、そうだ景気づけに、1番高いシャンパンでタワーでもやって貰おうかしら?」


シャンパンでなく、高級シャンパンでのタワー...まぁ1000万位はいっちゃうけど良いわよね?


こんなにうっとおしい事ばかりなんだから、こうでもしないとやってらんないわ。



「それ、じゃ冗談でなく...本気ですか?」


「本気よ! その代わり聖夜、今夜つきあいなさい」


「はい」


裕子はその日、いつも以上に羽目を外した。


何時もなら精々が200万円上限なのだが、このところの憂さ晴らしで思う存分遊んだ。



「それじゃ、はいこれで払って」


裕子が出したのはブラックカード、その中でも上限が3000万という物。



だが、店員がカードを通すがエラーがでる。


「裕子さま、使え無いようですが」



「そんな事は無い筈よ、だったらこっちを使って」


「はい...これも駄目ですね」


「嘘、じゃぁこっちは?」


「これも駄目です」


裕子の持っているカードは3枚とも使えなくなっていた。



「裕子さん、カードが全部使えないようなんだけど、現金で払ってくれないないかな」


「現金は持ってないわ」


「それじゃ、今日の支払いはどうするつもりですか?」


「解ったわ、明日にでも持ってくるわ」


「ハァ~本来はそういう訳にいかないんだけど...まぁ常連だから今回だけは待ちます...明日必ずお持ちください」



何があったのか解らない...


まぁ、仕方ないわ...旦那に頭を下げてお金を出して貰うしか無いわね。



だが、家に帰った後...浩二はいなかった。


娘の真理も知らないと言うし、会社に聞いても無断欠席している...


仕方なく、裕子は今迄に買った、ブランド品や宝石の1/3を手放してどうにか、ホストの代金を詰めた。





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