第19話 真理 幸せの第一歩
「お父様は、裏の病院に居るんですか?」
「はい、何でも大きな失敗をしたらしく...指を10本折られて治療しているそうです」
「まぁいい気味ですね...アレを父親だと思うと本当に嫌になります、いっそうの事、そのまま殺されれば良かったのに」
「そんな、幾ら何でもお父様ですよ?」
「女狂いの馬鹿男...まぁ才能は少しはありますが、女に見境が無く、しかも商売女で満足していれば良いのに【素人】が良いなんて本当にクズですよね」
「その点は同意しますね」
「そうですよ、私より年下の女から40代のおばさんまで本当に見境がない、この前は慰謝料までしっかりとられて馬鹿みたいですよ」
「それでお父様はどうしますか?」
「どうしようかしら? 私的にはこのまま死んでくれると助かるわ」
「それは【殺したい】そういう事でしょうか?」
「有り大抵に言えばそうよ...だけど、あれには関わる必要は無いわ、放って置いても、自滅すると思います」
全てを無くしたお父様はもう用なしですね。
「それでは手を出す必要が無いと言う事でしょうか?」
「そうね...1度くらいは手を汚すのも良いかも知れないわ、私の手で手に掛けるのも良いわ」
「それじゃ、確保をこちらで手配します」
「頼むわね」
「それで、裕子さまはどうしますか?」
お母さまね...
「一応、親は片親位は必要ね、まぁ【要】の苗字を貰うのに必要だから放っておいて良いでしょう」
「確かに...必要ですね」
「そう、殺すのは、叔父さんと一緒にです。 そうプライムコーポレーションを手に入れたい、その時ですね」
今はまだ利用価値はあるから生かして置いて良いでしょう。
ただ、痛い目にはあっては貰いましょう。
「そうね、お母さまの付き合いのあるホストは特定出来るわよね? もう男遊びを辞めさせる為に、少し痛い目にあって貰いましょう...私に必要なのは、要裕子の娘...それだけだから」
「ですが、そんな事をしたらもう、北条との繋がりが無くなりますよ?」
「それがね...私もう北条も要らないよ、本当なら、北条と竜ケ崎組をどうにか手にして、日本を牛耳るつもりだったけど...あははははっ、もっと欲しい者が出来ちゃったのよ」
《可笑しい、あのまるで悪魔の様な、真理様が...野望を捨てると言うのですか?、しかも何故か此処の所機嫌が良さそうに見える》
「日本を表と裏両方から完全に支配する...それ以上に欲しい者があるのでしょうか?」
「ええっ、私恋をしたのよ!」
《恋? 恋ですか?...嘘でしょう、真理様ですよ! 悪魔の方がまだ優しいとさえ思える存在の真理様が恋? なんの冗談でしょう》
「恋ですか...本気ですか? どんな男でも私の下僕にしか過ぎない、そう言ってましたよね」
「それは私が恋を知らなかっただけです、今の私には泰章さんしか居ません...北条の件は断られて正解でした」
「あの...本当にそれで良いのですか? 日本、しいては世界を手に入れる、それはもう良いのですか?」
「まぁね...それはもう良いわ、私はそうね、今井泰章様を夫にしてプライムコーポレーションでも手に入れて面白可笑しく暮らせれば、それで良いわよ」
《嘘ですよね...あれ程野望に燃えていて、人なんて虫けら以下、そう考えている真理様...それが恋なんて》
「そういう訳だからね」
【神谷SIDE】
此処は何処だ...家に帰ってくる途中でいきなり拉致された。
まさか、竜ケ崎組がまた俺を、攫ったのか、だが此処は見覚えがある。
うちの別荘だ...
「お父様、目が覚めましたか?」
可笑しい、俺の幻覚なのか? うちの娘真理が、裸で目の前に立っている、しかもナイフ迄持って。
体は...なんで縛られているんだ。
「お父様、今回は随分下手をうったみたいですね? 指は折られて3億ものお金迄失って、何をしているんでしょうかね?」
これが真理...娘なのか?
何か得体の知れない物に見える。
「ああ、確かにそうだが、まだお父さんは大丈夫だ...その前になんでお前が知っている」
「3億円はお父様の裏口座からキッチリ振り込んで置きました、残った5億円は私が頂きましたわ...良いですよね? まぁ嫌と言っても無駄ですよ~ お父様これから死んでしまうのですからね!」
「やめろ、お前は何がしたいだ? 父さんはお前に何かした事があったか? 俺はお前の幸せの為だけに...うぐっ」
「煩いですよ? お父様、今真理がしたいのは...殺人の経験ですわ、ほら【一回は人殺しの経験をしておかないといざという時出来ない】というじゃないですか? 私はお父様の大事な娘ですから...その経験をさせてくれますよね...うふふっ」
「やめろーーーーーーーっ」
神谷の声がこだまする。
「うふふ、お父様、此処は滅多にこの時期に人は来ない場所ですよ? だからお父様も良く、この場所を使うのじゃ無いですかぁ~」
「助けて...」
「嫌です」
「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーっ」
神谷の絶叫が聞こえてきたが...誰にも聞こえない。
此処はそういう場所だから....
「うふふっ、これでもうお金に不自由はしませんね、いっそうの事、叔父様に頼んで泰章さんとの仲を取り持って貰おうかしら? それとも直接アタックしましょうか? これで反対しそうなお父様もいないし...うん幸せへの第一歩ね」
「うふふふっ....あはははははっ」
真理の笑い声が森にこだました。
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