第18話 それぞれの居場所

【恵美SIDE】




恵美を警察から引き取った後。


家の中は揉めに揉めていた。


「この面汚しがぁーーーーーっ!」


お爺ちゃんに生まれて初めて殴られた。


今回の事が起きるまで、怒鳴られた事すら無い。


お母さんは、夜もパートにいっている、だから居ない。


お婆ちゃんは泣いていた。


「なんで、そんな事するのよーーーっ顔を出さない約束をしたでしょう、ねぇ、ねぇねぇーーーーーっ」



「だけど、わたしお父さんに償いをしたかったのよ、お父さんが動けないなら、私が...ハァハァ...私がお世話をしたいのよ」



「だからって、お前は何を考えているんだ? 血も繋がって無いんだぞ、そんな人間に面倒見られても迷惑なだけだ」


「そうよ、何を考えているのよ」


だけど、私は引き下がる訳にはいかない。


だってお父さんと一緒にいたいんだから...



「解っているの...私のせいでお父さんがあんなになって、全部私が悪いの、だから、だから、私は結婚なんてしない...傍に居て一生お父さんの面倒をみたいんです」



「だからと言って無理やり押しかけるのはどうかしているぞ」


「だけど...お父さんがこれ..こんな事までしてくれたんだから、絶対に私を愛しているよ、だから、だから...恩返しがしたいのよーーーっ」


私はお父さんから貰ったお金を取り出した。


お母さんがお金は使っちゃった筈だから...多分これはお父さんにとって貴重なお金なんだと思う。


下手すれば最後の貯金なのかも知れない。


「この大金を泰章さんが用意してくれたの?」


「うん、私の大学の学費だってお父さんが、私がキャンパスライフを送りたいって言っていたから、私、あんなに酷い事したのに貯めていてくれたんだと思う...お爺ちゃん、お婆ちゃん...私、お父さんを見捨てて自分だけ幸せなキャンパスライフなんて送れないよ」



「そうだな、それが人間として正しい姿だ」


「そうよね、少しは真面な考えが出来る様になったのね」



祖父や祖母は【泰章に冷たい】自分の娘と孫に怒っていた。


それ故に【責任を取りたい】そうともとれる恵美の話を聞き【応援したい】そう思う様になった。



「そうね、解ったわ反省しているなら、お婆ちゃんも話してあげるわ」


「そうだな、そういう言事なら儂からも打診しよう、だからもう勝手な事はするなよ...良いな」



「ごめんね、お爺ちゃん、お婆ちゃん」


「良いのよ、かわいい孫の為ですもの人肌脱ぎますよ、ねぇ貴方」


「そうだな、過ちを正し、罪を償うのならそれは良い事だ、儂からも言っておこう」


二人は孫が更生し反省から、変わった、そう思った。


だが、実際は...全く別、恋愛感情からだと言う事を...知らない。




【神谷SIDE】



指が明後日の方向を向いている。


ズボンは濡れていて、顔もぐしゃぐしゃだ...この手じゃ鞄は持てない。


その前に風にあたるだけで手が痛い。


組員が闇医者に行く事は許してくれたみたいだ...此処までは手が回っていなかった。


「こりゃ随分、酷い事になっているね、簡単には治らないぞ」


「...」



「とりあえず、骨を正常な位置に戻して置くけど大きな病院で手当てを受けないと真面に動かなくなるぞ」


「うがぁぁぁーーーー」



いきなり指を引っ張りやがった。


「あぁぁぁぁぁーーーーーーーっ」


「麻酔なんかうってやらんよ」


「痛ぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ」


「うちは闇医者だからな、あくまで応急処置だ...あとでちゃんとした病院に掛かってリハビリするんだな」


チクショウ...こんないい加減な治療で100万円もとりやがって...痛みだって全然引かない。


真面な病院に行く位なら闇医者なんかに行く必要なんてなかった。


その前にこの指治るのか?


それもあるが...これで竜ケ崎組とは完全に切れてしまった...


どうすれば良い?


俺の仕事は裏仕事だ...これではもう何も出来ない。


俺の後ろから竜ケ崎組が離れた今...抑えは効かないだろう。


終わったな...プライムコーポレーションに最早、俺の居場所は...無い。



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