第16話 閑話:陽子
私の名前は陽子。
少し前まで専業主婦をしていました。
今は実家に帰って仕事をしています。
長い事働いてないし、年齢も40歳を超えているから再就職なんて出来ません。
スーパーでパートをしながら、夜は清掃業で働く、そんな毎日です。
娘も転入試験に受かったから市立高校に入りましたが、大学へは行けません。
奨学金でも貰えば別ですが...まぁ多分無理でしょう。
これも、全部、私が不倫をしたから悪いのです。
最初の1回は...私には非はありません。
多分、お酒に睡眠薬を盛られたのだと思います。
この時に主人に相談するなり、警察に相談すれば、こんな人生にならなかったと思います。
ですが、あの時の私は多分刺激が欲しかったのでしょう。
その関係を自ら受け入れました。
私を犯した男と一緒に自分達の為に一生懸命働いていた夫を馬鹿にしていました。
しかも、最初は相手が奢ってくれましたが、気がつけば不倫の時のお金は、自分達の為に...主人が貯めていたお金を使って。
今思えば、あの人は自分の為には一切お金を使わずによれたスーツにボロボロのコートを着ながらいつも身を粉にして働いていました。
私が不倫で手を付けていたのは....自分の未来や娘の為に、主人が頑張り貯めていたお金です。
そんな貴重なお金を、私は馬鹿な事に使ってしまったのです。
離婚して実家に帰ってきてからは...針のむしろです。
当たり前の事ですね。
不倫をした挙句、その事が原因で主人は一生を失った。
あはははっ、父も母も冷たくなるのは当たり前ですね。
軽蔑され、冷たい扱いをされるのは当たり前です。
今の私には...自由な時間はありません、パートと清掃の仕事の時間以外は父か母が私を見張っています。
「俺はお前みたいな娘を持って悲しい、慰謝料は要らない、そう泰章くんは言っていたし、あんな体になっても情けまで掛けていた許したのだろう、だがな、俺はお前を許さない、お金を貯める苦しさを知れ、泰章くんが自分を犠牲にしてまで貯めた2000万、お前も死ぬ気になって貯めてみろ! それを貯めた時、自由をやる、そのお金を持って出て行くが良い」
「あんたは本当に馬鹿だわ、あんな良い人を騙して不倫するなんて、正直顔も見たく無いけど、母親の務めで真人間になるまで付き合うわ...あんたの為に頑張っていた旦那を騙して不倫迄して置いて...あそこで【一生面倒見るから】それも言えなかったクズ、それがあんたよ? そこから人間になるまで自由は無いと思いなさい」
今の私は、給料は取り上げられ、化粧も出来ないし、服も最低限しか買って貰えません。
ですが、その原因は自分にあるのだから仕方ないのです。
私は本当に馬鹿でした。
何故、不倫なんてしたのだろう...
何故、あんなに愛して尽くしてくれた主人を馬鹿にしたのだろう...
それに...なんであの時に【今度は私が頑張って面倒みるから】そう言えなかったのだろう...
あははははっ本当に馬鹿な女ですね...
今になって気がつきました。
あの人は中学~離婚する今迄、ずっと愛してくれていました。
多分、あの人ほど私を愛してくれた人は両親を含んで他にはいなかった。
私は...私は...ああああああああーーーっ。
今になって気がついてしまった。
いなくなって初めて気がついた。
私はあの人を愛していた。
愛していた...いや、愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している愛している
傍に居なくなってから解った。
あれから、私の頭の中は泰章さんの事で一杯...寝ても覚めても、お風呂の時も仕事の時もずうっと【元主人】の事しか考えらえない。
何で気がつかなかったの?
もっと早くこの事に気がつけば、今みたいな惨めな人生になんてならなかった。
多分、マンションをローンで買って、娘は大学に進学して...私は2人の帰りを待つ...そんな幸せな人生があった筈なのに。
誰が悪いの...そう、私が悪い...
なんで離婚なんてしてしまったのかな...
なんであの時に「嫌だ」って泣いて縋りつかなかったのかな...
あの人にあわす顔が無いわ...
どんな顔してあの人に会えば良いのかな...
私も悪いけど、他にも【悪い人】は...いるじゃない。
神谷部長が全部悪いのよ。
私も悪いけど、神谷部長はもっと悪いわ。
私が泰章さんに認めて貰うには...
もう神谷部長を殺すしかないんじゃないかしら。
私を犯して不倫迄させた癖に、未婚と言っていたのに【既婚者】だったし、その結果私は泰章さんと別れる羽目になったんだから...
殺しても良いわよね....
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