第14話 何かが起こりつつある

おかしい、座間組の人間と連絡がつかなくなっている。


あんな、只の中年サラリーマンを殺すなんて彼奴らにとっては簡単な筈だ。


だが、昨日から連絡がつかなくなった。


何が起きているのか解らない。


自分の考えの外で何かが起こっていた。



そして会社の方もどうも様子が可笑しい。



妻の裕子が圧力をかけようとしたが、今井に対して圧力が掛からない。


「あの男が気に入らないからクビにしてくれないかしら?」


そう言った所...


「お前...今井係長は被害者なんだぞ! お前の夫が不倫みたいな馬鹿な事をしたから家族を失ったんだ、そんな非のない被害者である今井くんをクビに等出来ないな」


「そんな、私は貴方の妹です」


「妹...はぁ~、馬鹿な事ばかりやっているから、お前達は【要】の苗字を名乗る事も許されなかったんじゃないか? いい加減目を覚まさないか!」


「お兄様は実の妹よりも部下を取るのですか?」


「そういう問題じゃ無いだろう? どう考えても不倫して相手の家庭を壊した、しかもお前の旦那が有責者だ、被害者は今井くんじゃないか? 法律でそうなっている以上は処罰するならお前達になる、当たり前じゃ無いか」


「解ったわ、お兄様には頼みません」


つまり、今井には何かがある。


今迄、妹にあれ程甘かった社長が係長のクビ一つを飛ばさない訳が無い。


そこから考えられる事は...今井は今の会社もしくは社長にとって切れない関係にある。


そうに違いない。


だからこそ、彼奴が強気に出ていたのかも知れない。


ならば、やっぱり先手を打っていて良かった。


まぁ、座間組に任せておけばどうにかなるだろう。


今は連絡がつかないが...一般人がヤクザに勝てるわけが無いのだ。



ブランデーを片手にゆっくり過ごしていると、娘の真理が入ってきた。


「どうした、こんな時間に珍しいな」


「お父様、お願いがあります」


「どうしたんだ? お小遣いでも欲しいのか?」


「いえ、お父様、婚約を破棄して頂きたいのですが、お願いできないでしょうか?」


「おい、冗談だよな? お前は勇吾くんの何処が気にくわないんだ...この間も楽しそうに過ごしていただろう」


「確かに勇吾さんは良い人ですけど、ただそれだけなのです、心がときめかないのです」


「心がときめかない? 大丈夫だ、私と母さんもそうだったが今はお互いに支え合って生きているんだ、結婚なんてそんなもんだ」


「ですが、他に心惹かれる人がいるのです...その方を思うと胸が締め付けられて苦しいのです」


「ほう...その相手とは一体誰なんだ」


「その、お父様の部下で、今井泰章さんです」


まさか、此処でもまた彼奴なのか?


俺の邪魔ばかりしやがって...うん、待てよ。


どうせ彼奴は殺されるんだ、此処で無理に反対するよりやり過ごした方が良い。


「今井くんか、まぁ齢をくっていなければ、そこそこ優秀な男だ、だが齢が20近く離れているんだ、よく考えなさい」


「私の気持ちは変わりません」


「そうか...じっくり考えるんだな」


「はい」


無理に反対する事は無い...どうせ彼奴は死ぬのだから










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