第5話 異世界から帰った後

気がつくと俺はベッドで寝ていた。


周りをキョロキョロと見回してみるとどうやら病院の様だ。


自分の指を見たら、マリアーヌの指輪が嵌っていた。


てっきり、あれは夢だったのか、そう思ったが違った様だ。



《ステータスオープン》


こっちに戻ったから使えないだろう、そう思ったがしっかりとジョブは【勇者】しかもスキルも全部残っていた。



周りは暗いから今は夜なのだろう。


体は物凄く痛い...看護師を呼んだら、点滴が既に痛め止めで...


「本当に痛い時は点滴と繋がっているポンプを押して下さいね」


そう説明を聞いた。


なんでも、そのポンプを押すと余分に痛み止めが体に入る、そういう物らしい。


この痛め止めは針で脊髄に刺さっているそうだ。


詳しい事は明日説明をしてくれるらしい。



恐らくは再起不明な程の怪我なのだと思う。


まぁ【実際はトラックに跳ねられて死んだ】のだから、そこから少し回復しても重傷なのだろう。


そんなのはどうでも良い。


俺は近くにあったスマホに手を伸ばした。


着信履歴は無かった。


まぁ、神谷も部長ではあるから、事故の報告位はしているだろう。


多分かなり捏造されていると思うがな。



俺はスマホからまず友人の一人滝口に電話をした。


滝口は友人でありそして同僚でもあるからだ。


「夜分、遅くにすまないが」


「おい、今井大丈夫なのか? トラックに轢かれたと聞いたけど...死んでないよな?」


「まぁ、何とか生きているよ...それで会社は今どうなっている?」


「ああっ、神谷部長が事故にあったと上にあげて、とりあえず1か月の休暇扱いになっているぞ」


「そうか?」


俺は滝口にだけは真相を話した。


「そんな事があったのか、神谷の野郎ゆるせないな」


「まぁ、良いよ、お前の事じゃないんだからそんなに怒るなよ」


「だがよ、お前が愛妻家なのは会社でも有名だし、神谷の野郎だっておしどり夫婦って有名なのによ」


「そう、カリカリすんなよ、俺も正直頭には来ているが【普通】に法的対処して終わらせるよ」


「そうか」


「ああっ、体がまだ痛いから、またな」


「いいって事よ」



滝口との電話を切って、そのまま、仕事で知り合った笠井さんに電話した。


笠井さんは、まぁ平たく言えば弁護士だ。


ちいさな事務所で、お爺ちゃん弁護士。


大きな事なら兎も角、離婚やちょっとした慰謝料位なら別に問題ないだろう。


ことの経緯を説明して、今後の事をお願いいした。



そのあと、陽子の実家にも電話した。


陽子の両親は、俺が事故にあった話は聞いていたが【不倫】については初めて聞いたらしく驚いていた。


かなり電話で謝罪してきたが「お義父さんやお義母さんが悪いんじゃないですから」と伝え電話を切った。



俺の実家は両親は亡くなっており、妹は結婚して郊外で暮らしている。


だから、妹に事故の事は話さず「妻が不倫して離婚するかも知れない」とだけ伝えた。


「だから、あの女は辞めた方が良いって言ったのに」と言われてしまった。


腐れ嫁と妹は元から仲が悪いから...こんなもんだ。


「俺は女を見る目が本当に無かったよ」とそれを最後に伝え電話を終えた。



消灯のアナウンスが流れてきた。


窓から見える月は異世界でみた物と変わらない。



明日から忙しくなるだろうな...痛みを堪え俺は眠りについた。








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