第4話 これで世界は魔族の物
今迄の人生は何だったんだ。
そう思える程、この七日間は充実していた。
死ぬのは解っている。
その恐怖に耐えながらも、勇者として俺をもてなしてくれた人達。
誰1人守れなかった。
「先に報酬を貰ってしまったな」
普通の勇者は魔王を倒した後に、領地や爵位を貰い王女と結婚する、そう泰章は考えていた。
だから【先に貰ってしまった】そう、泰章は考えた。
「さぁ、死ぬには良い日だ」
【強奪】 目を合わせた相手からスキルを盗む
【ドレイン】敵からHP、MPを奪う
【オートヒール】自動的に回復魔法が常にかかる。
【反射】敵の攻撃を全て敵に跳ね返す
【経験値10倍】
【毒攻撃無効】
【即死魔法無効】
【魔法攻撃無効】
【攻撃力50倍】
【防御力50倍】
【特殊毒】周りにいるもの全てが毒に犯される。
等を重ねがけしていく。
そして【スキル起動無詠唱】
戦った所で何かが変わる訳じゃない。
だが、命と引き換えにジョブやスキルをくれた女神イシュタス、そして俺を歓迎してくれて僅かな期間だが妻になってくれたマリアーヌ。
彼等の為...戦わない選択は無い。
今準備したスキルは【俺が憧れた勇者や主人公】のスキルだ。
俺は、全てのお金を腐れ嫁と腐れ娘に使っていた。
唯一の自由になる物...それはスマホだけだった。
だからこそ、ネットで小説を読んでいた。
ネットの小説は無料。
オフブックで100円の小説すら買えなかった、唯一の趣味。
これだけが、あの腐れどもに感謝出来る事かも知れない。
門を蹴破る、魔族の前に躍り出た。
【強奪】が良い具合に働き、次々に色々なスキルを奪っていく。
ただでさえ、元から無数のスキルがあったのに...次々と魔族のスキルを奪っていく。
「お前は何者だーーーっ」
1人の魔族が叫んだ...見渡す限りの魔物や魔族。
最早、この世界に人間は俺一人。
もう、この世界で人類は俺一人。
もう勝利する事は無い。
もし奇跡が起きて、俺が全ての魔族を駆逐しても...俺は1人ボッチ。
つまり、絶望しか無い。
「俺は勇者、そして人類最後の1人 泰章だーーーっ」
俺は一気に走り出す。
だが、相手は無数にいる...
「あはははったかが一人でこの魔族の大群に勝てると? 他の人間は? 死んだのか?」
「ああっ、七日間の時間をくれた事だけは感謝だ...悪いが死んで貰う」
「あはははっ、この人数相手に、ぐはっ」
「何が起きているんだ、体が」
【特殊毒】の効果だろう。
「それじゃ、行くぞ」
それだけ断り...斬って、斬って斬りまくる。
「なんだ、此奴、強いぞ」
「極大魔法」
「これが奥義光の翼だぁーーーっ」
魔族が叫んでいるが聞こえない。
今の俺は殺戮マシーンだ、耳を貸さない。
聞く必要もない。
ただひたすら剣を振るい。
魔法を放つ。
【周りは全て敵】ただただ、殺せば良い。
火矢も投擲された石も【反射】で全て相手に跳ね返る。
これも確か、無敵に近いスキルの一つだ。
ただ、魔法を放ち、スキルを載せて剣を振るえば...敵は死んでいく。
それを自分が死ぬまで繰り返すだけだ。
案外、この戦法は悪くない。
恐らく、今の俺を止める事は出来ない。
そのまま王城から外に出るように敵を斬り伏せながら進む。
凄いな俺、多分宮本武蔵でも、呂布でもこんな事は出来ないだろう。
まぁ、小説の中では出来そうな主人公は...いないな。
一騎当千、一騎当万、なんて存在がいても...一騎当億なんて奴は本の中にも居なかった。
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ
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もうどれ位の敵を倒したか解らない。
だが、気がついてしまった。
此奴らは見た目は異形だが、ちゃんと話し意思疎通も出来る。
倒し続けてなんになる。
もう、人類は終わっている。
ただ、俺が戦うだけで、その命が失われていく。
戦う中には、耳の形とただ体の色が違うだけで殆ど人間にしかい見えない存在もいた。
「うげぇぇぇぇぇぇーーーっ」
盛大に吐いたが、止まっていられない。
もう何時間経ったのだろうか?
俺は叫んだ。
「魔王ーーーっ、もし居るなら此処まで来い、そうすれば全てが終わる」
「魔王様がお前の相手等、するかーーーっ」
「この人数相手に1人で何が出来るかーーーっ」
魔王が来るまで、戦闘は止めない。
そこから、どれ位経ったか解らない。
もう夜になり月が見えていた。
かなりの人数を倒した気がする。
少なくとも一騎当万はしただろう。
周りは死体だらけだ。
戦えば殺される。
そう考えたのだろう、魔族や魔物は50メートルほど離れた位置で取り囲んでいた。
その一方向をかき分け、明かに格上の相手が5人現れた。
その中心人物が手を挙げると4人が膝をおった。
「お前が勇者か? 余に用事があるようだな?」
「お前が魔王かだな、俺は勇者泰章、お前に決闘を申し込む」
「我が名は魔王ゾーディアック、これ以上犠牲を出されても困る、その決闘受ける」
沢山の魔族や魔物を殺して居れば来ると思った。
少なくとも強い人間相手には、マリアーヌの話では【四天王や幹部が戦った】そういっていた。
まさか、魔王が来るとは思っていなかったが。
「魔王よ、礼を言う、この戦いを最後の戦いとして、俺の人生の締めくくりとしよう」
「ほう、それは勝っても【死ぬ】そう取れるのだが」
「ああっ約束しても良い、俺が勝利を収めても...守る者も物も無い、終わりで良い」
「...行くぞ」
俺は、走りだし魔王に抱き着いた。
「ほう...そこから何をするのだ?」
多分、簡単に勝てる、そう思って余裕なんだろう...
だが、今の俺なら恐らく勝てる。
勝った後は?
多分嬲り殺しになる。
ならばこれだ....
「自爆スキル【自己犠牲】」
「貴様、最初から死ぬつもりで...」
「これで終わりで良い...そういった筈だ」
「離せ、離せーーーーっ」
「もう遅い」
まるで小型の原爆が落ちた...そう思わせる程の爆発が起きた。
泰章が破裂し、それに巻き込まれゾーディアックは霧散するように肉片になった。
傍に居た四天王のうち1人も巻き込まれて死んだ。
たった1人の勇者によって 魔王が討伐され、四天王の1人も死に...魔族は2万人の死傷者をだした。
だが、これは...魔族にとっては勝利だった。
最早、この世界に人間は殆ど居ない。
犠牲はだしたが...世界は魔族の物になった。
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