第7話 廃墟にて...運命は動き出す。

学園を飛び出したが..私には行くあても無い。


ここは王都とはいえ郊外だからこれから宿屋に行っても城下町はしまっているだろう。


そしてたどり着いても...肝心のお金が無い。


《どうする事も出来ないわ...今日はこれから野宿出来る所を探すとして明日からはどうしよう...》


私は野宿できそうな場所を探した。


運が良いんだか悪いんだか解らないが...朽ち果てた廃墟を見つけた。


《流石にこれなら人はいないだろうな...屋根がある分..ここの方がましだろう》


廃墟の中に入っていく....不思議と怖いとは思わない。


それは多分、本当の意味で怖いのは人間だと解かったからかも知れない。


《あの学園の奴らに比べたら幽霊の方がましね...》


廃墟の割にはしっかりしていてちゃんと鍵が閉まっている。


「中には入れないか..仕方ない」


暫く歩くと、黒薔薇が沢山生えている場所があった。


その近くにはテラスがあり、ベンチがあった。


「月が綺麗ね...薔薇も綺麗だわ...」


私はそこで寝る事にした。


学園をでてほっとしたからなのか..急に今日あった事を思い出した。


「うっうっうっうわわわわわわわわわわわわひぐっ」


泣いても喚いても仕方ない事は解る..だが考えれば考える程悲しさが止まらなくなった。


一しきり泣くと不安が襲ってきた。


《もう疲れた...帰る所も無い..これからやれる事も無い...下手すれば体を売らなければ生活ができないかも知れない..だけど..それさえ..傷ついたこれじゃできない...生きてても、私を見たあいつ等はきっと笑い者にするんでしょうね...だったら死んだ方がまし..かな》


「死のうかな...だけど..今は休みたい」


私は瞼を閉じた。



《おやおや、久しぶりに客人が来たかと思えば散々喚くだけ喚いて寝てしまった...このままじゃ風邪ひくぞ...つれ帰るか?》



埃っぽさで目が覚めた。


可笑しい...私は外で寝ていたのにベットで寝ている。


《暖かいのは良いのだけど...この毛布、埃まみれだわ..ゲヘゴホ》


あれっだけど私は何でここで寝ているの?


外で寝ていた筈...


その前にここは何処だろう...嘘、ここは牢屋...何でこんな所にいるの?



「ようやく目を覚ましたようだな」


目の前に黒いドレスを着た、綺麗な少女がいた。


「もしかして、貴方がここに運んでくれたのですか?」


「まぁな..あのままじゃ風邪ひくし、場合によっては凍死する..ここの方がまだまし..そう思わない?」


「そうですね、有難うございました..私は..ジュディと申します」


「お主、恰好からしたら貴族だろう..何故苗字を名乗らないのかしら」


「これから、捨てる気ですから..」


「訳ありって事ね?」


「まぁそうですけど..」


「話しなさい」


可笑しい、この子に見つめられると...体が寒くなる..話したく無いのに話さずいられなかった。


「きゃははははははは...面白い....何なのそれ..受けるわ」


「人の不幸がそんなに面白いの?...最低ね、出て行きます」


「まぁ、待て笑ったのは、何故、勝てる決闘を捨てるのかなって、思ってさ..馬鹿だわジュディ、それはあんたが悪い!」


「何故そうなるの!」


「まずは獲物を用意してなかった..決闘を舐めすぎだろう?」


「......」


「だんまりか? まがいなりにも決闘、剣は無理でもナイフ位は忍ばせなきゃだわ」


「....だけど」


「人は殺せないか..か」


「そうです...」


「だから駄目なんだわ...相手は貴方を追い込む為に手を打っていた...お前はただ、行っただけ、どっちが真剣に決闘を考えていたか...相手の方が真剣だった」


「だけど」


「だけどじゃないわよ...現状が物語っているわ..相手は勝って楽しい学園生活...貴方は惨めに廃墟で寝てる...結果は出てるじゃない」


「そうですね...」


「それでこれからどうするの?」


「決めてません」


「まぁそうよね..敢えて聞くわ..泣き寝入りするわけ?」


「仕返ししたくても私にはできなない.....」


「じゃぁ出来たらしたいのね?」


「当たり前じゃないですか..殺してやりたい..全員」


「そう...だったら殺しちゃおうか? 全員」


「出来るわけ無いでしょう...」


「じゃぁ...やれるようにしてあげるって言ったら...貴方は逃げないって約束できるかしら?」


「本当に殺せる力が手に入るなら、絶対に逃げません」


「そう..だったら、これは何かの縁...貴方に憑りついて鍛えてあげるわ」


「えっ憑りつくって..何」


「このフルール.ルーラン最後の黒薔薇が貴方を一本の剣のように鋭く強くしてあげる...対価は訓練期間の私への絶対服従..そして逃げない事」


「本当に強くなれるなら..逃げだしません」


「よく言いましたね...なら弱弱しい少女から、私は..一本の黒薔薇を作る約束をしましょう」


体中に痛みが走った..そして私の右胸に黒薔薇の入れ墨が浮かんだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る