第6話 敵は身内の中にも居た

体の痛みで目が覚めた。


私はそのまま裸のまま教練場に倒れていた。


恐らく、後遺症が残らない位の簡単な手当はされていたのだろう..四肢はちゃんと動く。


顔は晴れているが..さっき程じゃない..よく見ると私の歯が数本落ちている。


体中が痣だらけだ..


《うっ痛い..》


私は自分の下半身を見た...股の所から出血している..


《私の女としての人生は...終わった...少なくとも貴族としての人生は..》


私の処女は...木の棒に奪われた。


「うわわわわわわわわわわわわーん、オエエググエーァぁぁぁぁぁ」


《こんなのって無い...シャルロット姉さん....》


「うえぁぁぁぁぁぁ」


《貴方もグルだったのね..》


一しきり泣いた。


少しは気が納まった。



時は少し遡る。



決闘を受けたあと、私は教練場にむかった。


そこには沢山の生徒が集まっていた。


全ての生徒はロザリオの味方だ。


「「「「「「「「「ロザリオ、ロザリオ、ロザリオ」」」」」」」」」


ロザリオの応援しか聞こえて来ない。


《正直、煩い...シャルロット姉さん..ロザリオの近くに...逃げないように人質か..汚い》


「さぁ..きたわよ! はじめましょうか!」


《姉さんの敵..とってやる》


「そうね、観客も集まったしはじめましょう..私は侯爵令嬢なので..野蛮な事は好みません」


「それならなんで...」


「だから、こちらの方に代理を頼みましたの」


「卑怯な..それどう見ても騎士じゃないの? 騎士を使うのは反則じゃないの」


「私は騎士では無い..元騎士だ..今は銀級の冒険者だ..問題はないだろう」


《へ理屈だ》


「逃げても良いのよ..」 


姉さんの肩をロザリオが抱いた。


そう、人質なのね...逃げられない


多少は田舎暮らしで体力があるものの、戦いのプロに敵う訳もなく..


捕まってからはただの嬲り者にされただけだった。


私は痛む体を引きずりながらシャルロット姉さんの部屋へ向かった。


「あら、豚が歩いているわ」


「私が同じ目に会ったら生きていけないわ..良く生きているわね」


「棒切れが最初の相手なんて..女としておしまいね」


誹謗中傷が山ほど聞こえてきた。


私は睨む気力もなく..ただ歩いた。


普通なら直ぐにたどり着く場所なのに幾ら歩いてもたどり着く気がしなかった。


「シャルロット姉さん...私を騙したの..」


「私は、嘘はいってないわ..虐められていたのは本当よ..」


「それは解っているわ...そこから逃げるために私を利用したの?」


「ええ、そうよ..私はランディウスの跡とり..貴方は妾腹で四女..私の為に犠牲になるのは当たり前でしょう」


「ええ、そうね..だけど、それはランディウス家の人は知っていたのかしら?」


「そうよ..侯爵家には敵わないわ..だから、私は虐めから逃げるためには新しい生贄が必要なのよ..私のお母さまが考えてくれたの」


「そう..ランディウス家が...だったらもう、ここに居る必要はないわ..辞めるわこんな所」


「辞めても行く場所がないでしょう..」


「煩いわ..何処に行こうが私の勝手だわ..ここまでされたんだからランディウス家の為に働く必要はないわ」


「ちょっと待って...貴方が居なくなったら..また私が虐められてしまうわ..」


「貴方は私の敵よ..姉さん..いえシャルロット..あんたの事なんて考える必要はないわ」


「待って.待って」


「待たない!」


私は速足で部屋を出た。


そのまま部屋に向かう...そしてカバンに荷物を積み込みそのまま部屋を飛び出した。


部屋から飛び出し外に出るまで沢山の罵倒が飛んできたが気にしない..少しでも早くここを出たかったから。


シャルロットが追いかけてきて掴んだが関係ない。


「煩いわ..もう貴方には関係ないでしょう..」


「待って、貴方にいかれたら私はまた虐められてしまう」


「そう..死ねば良いんじゃない? 楽になるからさ..もう私は貴方の事で心配する事も悲しむ事も無い..そうね赤の他人..いや憎むべき相手だわ..知らないわよ..あんたなんか」


「.....解かったわ..だけど、貴方が此処を出て行ったら貴方のお母さん困るんじゃない!」


一瞬、母親の事が頭をよぎったが、今はどうしてもここから逃げたかった。


「貴方、そこまで腐っていたのね..私は出て行く..だけど、母さんに何かしたら..貴方は絶対に殺す..殺すわ」


「待って、言い過ぎた..待って」


「死ねばいい」


要約、門にたどり着いた..私は後ろを振り返らず..立ち去った。







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