第30話 転がり始めた

相変わらず、俺の教室での扱いは変わらない。


挨拶はしてくれる。


嫌がらせはしてこない。


だが、それ以上でもそれ以下でもない。


《天城くん》《翼くん》男女問わず、俺にはくんをつける。


まぁ完全に腫れもの扱いだな。



上司先生も「天城くん、余り根に持つのも良くありませんよ」といい、話にならない。



最悪、クラス替えでも頼もうかと思う位だ。


まぁ、誓約書もあるから、それも可能なのだが...



だが、最近はクラスと違う所で友達が出来た。


茜さんが同じ学校だった。


それで良く、茜さんが顔を出しに来てくれる。


「翼さん、相も変わらず孤立しての? 」


こんな感じだ、それとは別の人も来る。


「このクラスの人達は頭が可笑しいのですわね」


最近遊びに来てくれる姉ケ崎麗美さん、何でも地元の実力者の娘さんらしい。


前の世界で言うなら、貴族の娘という訳でなく豪商の娘という感じかも知れない。


「あらっまた来てるの? 翼さんにようもないのに、全くもう」


この人は二条絵里香さん、大企業の娘さんらしい。


この三人が良く遊びに来てくれるから寂しく無い。



茜さんは金髪にスレンダーで何とも言えない位に綺麗だ。前の世界なら女冒険者みたいな感じ。


それに対して麗美さんは少し背が高く、目が吊り目で気が強そうな感じの悪役令嬢が似合いそうな美人。


絵里香さんは黒髪が綺麗なお姫様みたいな感じだ。


しかも、前の世界だけでなくこの世界でもここ迄の美人は余り見ない。


「いや、私は翼さんを学食に誘いにきたんだ」


「あら奇遇ですわね、私もお誘いしようと来たんですの?」


「私だって同じですわ」


こんな美女たちが誘ってくれているんだ、行かないという選択は無いな。


「それじゃご一緒させて貰おうかな」


こんな俺がただ食事に付き合うだけで笑顔になるんだから、凄く優しい人なのだろう。


しかし、なんで最近はこうも人に囲まれるんだ。


「お前等退きやがれ」


「すいません...退いてくれませんかねーーーっ」


「これだから庶民は...退きなさい」



三人が睨むと蜘蛛の子を散らすように居なくなる。


だけど、最近解った事だが、この散っていく子達も俺に興味があって来てくれているらしい。


【まさか、俺に好意を持っている】なんて事は無いな。


勘違いしちゃ不味い、あくまで同じ学生として好まれているだけだ。


それだけだ。



《しかし、何時みてもカッコ良いな、直ぐに結婚してローンで一軒家買って、エルグランド買って...良いな》


《まぁ小さな夢です事? うちなら直ぐに豪邸で一緒に暮らして貰いますわ?》


《たかが古い16LDKの家が豪邸ですって馬小屋よ、馬小屋》



「「「何ですって」」」



「急がないと席が埋まっちゃうぞ」


「そうですね」


「そうですわね」


「そうですね」



翼の姿が美しく見える者がいよいよ動き出した。




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