第21話 特攻服

「くそっ見逃した、そういう話があるならサボるんじゃなかった」


茜はその日、少し荒れていた。


実際はサボってばかりで通っていなかった高校に天城翼が通っている事をついさっき知ったからだ。


「お前、ふざけんなよ! そういう話知っていたら、先に教えろよな!」


「お姉ちゃん、流石に同じ学校に通っている事も知らないなんて思わないよ」


「あん! 京子お前、私に口答えする気なのかよ? 姉妹の血で自分の身が守れるなんて思ってねーよな?」


「うっ ごめんなさい」


「そうそう、謝れば良いんだよ」


普段の茜は此処まで理不尽な事はしない、我儘だがそれなりに筋は通す。


だが、籍だけおいて殆ど行っていない高校に翼が居るなんて思っていなかったし、しかも同じチームの仲間から翼の話を聞くなんて思わなかった。



時は少し遡る。



「茜さん、聞きました? 茜さんの高校、凄い事になってますよ」


「あん? 私の高校がどうかしたのか?」


「ボクシング部、無くなっちゃたらしいですよ」


「ボクシングだぁ~ 鶴橋のボケが傷害罪で捕まったとか?」


「違いますよ、何でも叩き潰された様ですよ?」


「マジ?」


「マジです」


「うちのボクシング部、まぁ鶴橋はまぁチンピラみたいな物だけど、葛西っていうプロライセンス持った奴がいたはずだけど、闇うちでもしたのかな?」


「それが、ちゃんとした試合で、その葛西もぶっ倒したらしいですよ?」


「無いな...あれ多分バケモンだもん、後ろから金属バットでボコる位しなくちゃ勝てねーよ」


まぁ私が彼奴とやるなら、車でもギって来て、後ろからはねて終わりだけどな。


「いや、本当ですよ」


「誰がやったって言うんだよ...そんな根性のある奴聞いた事ねーよ」


「信じられない事にオークマン、天城翼だって言うんですよ、笑っちゃいましよね」


翼さん..だと? 凄いな、それが本当なら外見だけじゃなくて中身まで好みなんですけど...


今この馬鹿...《信じられない》とか言ったな。


「おい」


「何ですか茜さん」


「今、翼さんの事馬鹿にしたよな?」


「何ですか、いきなり」


「翼さん、馬鹿にしたら、泣かすよ?」


「冗談ですよね?」


「俺が冗談嫌いなのは知っているよな?」


「ごめん」


「まぁ良いや、だけど次は無いからな、覚えておけよ?」


「すみません」




【京子SIDE】



「お姉ちゃん、あの...ついでに言わして貰って良い?」


「いいぜ」


「殴ったりしない?」


「しねーよ、ようがあるならとっとと話しやがれ」


「お姉ちゃん、服買った方が良いよ?」


「何でだよ!」


お姉ちゃん怒るから言いたくないな。


好きな男の子に特攻服来てサラシまいて会いに行く女子高生なんて漫画しか居ないよ。


今のお姉ちゃんはこれでも随分優しい。


それは、好きな男が出来たからだ。


これでもし、振られたら..また恐怖のお姉ちゃんに戻っちゃう。


だから、言うしかない。


「あの、それはそれで良いけど、翼さん、普通の子だよね...もっと普通の服の方が良いと思う...」


「うるせーな、お前はこの特攻服の意味がわかんねーつうのか?」


知ってはいる。


私だって不良だから...


お姉ちゃんのチームは 紫の特攻服の場合は「死ぬ気の特攻」を現す。


そして、今お姉ちゃんが着ているピンクの特攻服は「純情...好きな男がいる」そういう意味だ。


「解るけど、翼さんに嫌われるかもよ?」


言わなくちゃ、普通の高校生なら嫌うから、どうして家のお姉ちゃんは馬鹿なんだろう。


相手はヤンキーじゃ無いんだよ。


「嫌わねーよ...だって翼さん、ピンクで可愛いって褒めてくれたもん」


「くれたもんって...お姉ちゃん」


そう言えばここ暫く特攻服きて出て行ったよねお姉ちゃん。


まさか、あの時もそうなの...


毎回、こんな格好のお姉ちゃんと会っていたのかな?



案外大物なのかも知れないね。

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