第20話 【勇者SIDE】女神パラダイス
此処にきてようやく、この世界の事が解った。
美醜逆転でも何でもない。
前の世界に比べて、女性の美しさが著しく劣った世界だった。
逆に男性はこれでもかと美男子、美少年しか居ないのに非常に残念な世界だ。
ラノベに異世界に転移したら【その世界には美少女】しかいないそんな物語があったな。
確か、その理屈は元の世界より【女性の美しさが数段階レベルの上の世界】に転移したからそんな落ちだったような気がする。
だったら、逆もあるそう言う事も考えなければいけなかったんだ....
もし、異世界転移する様なことがあるなら絶対に詳しく聞いた方が良いぞ。
この世界の真実の姿は
日本の美女>日本で普通の女の子>日本のブス>日本でとんでも無いブス(学校一、会社一のブスクラス)=この世界の最高の美女>日本に居たら気持ち悪くて見たくないブス=この世界の美女>>最早モンスター=この世界の普通の女の子。
こんな感じだ。
つまり、この世界は【女性の美しさが数段階どころじゃない程下の世界】だった...そう言う事だ。
確かにあって可笑しくないよな。
日本の昔話しにもラノベにも迷い込んだり、転移したら美女しか居ない、そんな話も沢山ある。
だが、その逆もあるなんて考えないよな、だが普通に考えたらかなりの確率でこんな世界に来る確立があったんだ。
実際に元の世界の数値は解らないが女性の美しさのレベルをトランプの6にしよう。それより大きい数字が今より女のレベルが高い世界。
それより下が低い世界、俺は多分1~3を引いてしまった、そんな所だな。
この世界にはブスしか居ない、そして最高の美少女でも日本ならとんでもないブスレベルなんだ...地獄だよ。
まぁ割り切って、それだけ我慢すれば...後は最高なんだけどな、飯は上手いし、勇者だから地位も金もあるから贅沢も出来る。
虚しい、虚しすぎる。
しかも、ブスしか居ないのに...俺はこの世界で10人子供を作らなくちゃならないんだ。
そこで俺は考えたんだ。
「目が悪くなる魔法ですか? 良くなる魔法でなくてですか?」
流石に盲目にはなりたくないが...目が悪くなれば解決じゃないか?
ブスも見えなければどうにかなる。
ちなみに聖女にお面付けようとしたら、ビンタされた。
「そうだ、無い物か?」
俺は今日、宮廷魔術師 師団長の所に来ている。
魔法で敵の視力を奪う魔法があると聞いたから、そんなのもあるかも知れない。
勇者という立場は要人でも簡単に会えるのでこういう時は本当に都合が良い。
「ブラインドという魔法はありますが、これは相手の視力を奪う物なので何も見えなくなりますね」
「それじゃ駄目なんだ...あくまで視力が悪くなるだけの物が欲しい」
「理由をお聞きしても宜しいですか?」
俺は嘘をつく事にした...それが一番誰も傷つかない。
勇者の力を手に入れる為に大きな代償を払う必要があった事。
そして、その代償が「女性が醜く見える」そういう物だった。
これならどうだ? これなら今迄の俺の態度の悪さからも納得するだろう。
「そうだったのですね...凄く辛かったでしょうね、だから王女様や聖女様にも辛くあたっていたのですね」
彼は涙ぐんでいる、話は嘘だが、実際の俺の境遇は同じだ、これなら【本当は綺麗だけど、俺にはブスに見える】彼女達のプライドも保たれて問題は無いよな。
「ああっ、本当に尽くしてくれる..良い奴ばかりなのに顔がモンスターに見えるんだ..正直狂いそうだ」
「そこまでだったのですか...あの美しいジョセフィーナ姫がモンスターに見えるなんて、なんと憐れな」
「隠していた事だから、気にしないでいい」
「ですが、それなら女性の居ない人里離れた場所で暮らすという事ではいけないのでしょうか?」
「俺の力は..遺伝するらしい、この世界の為に、10人以上の子供を作ると女神と約束した」
「そうですか、勇者様の為です...ならば、私がどうにかしましょう...幾つかの方法はございます...いずれも禁呪ですが勇者様に使うなら誰も咎めないでしょう!」
「そうか、一生恩にきる」
「それでこれが勇者様に対して有効かと思える対処魔法です」
1.「腐った目」
この魔法に掛けられた人間は美醜が逆転する。
この魔法は、異世界の書物を見た、偉大なるメイジが遊び半分で作ったとされる。
だれが見ても気持ち悪い女に囲まれながら「俺は最高のハーレムを手に入れた」と言いながら死んでいった。
2.「ホワイトマスク」
この魔法に掛けられた人間は全ての人間が白い仮面をつけた状態に見える。
男も女も全員。
この魔法はその昔、勇者に仕えた魔術師の大規模魔法を封ずる為に、敵味方の区別が解りにくくする様に魔王が編み出したとされる。
3.「障害フェイス」
この魔法に掛けられた人間は人の区別がつかなくなる。
顔にモザイクが掛かったように見え区別がつかない。 男女全員。
この魔法はその昔し、勇者に仕えた 優秀な斥候の動きを封ずる為に 報告が出来ない様に魔神が作ったとされる。
4.「女神パラダイス」
全ての女性が女神ラクーアに見える。
この魔法は、その昔、女神の美貌に対して暴言を吐いた美少年に女神が用いたとされる。
女神ラクーアを愛する者には至高の魔法と言われるがつかわれたことは歴史上2人しかいない。
ちなみに、用いられた1人は先の美少年...暫くしてから狂い自殺した。
もう一人は、女神教徒。 女神を心から愛してやまない彼は勇者でもないのに、命を賭して先の魔王と戦い続けた、そして、自分の命と引き換えに魔王を倒した。
その事に感銘を受けた女神はその教徒に二度目の命を与え、褒美をとらせようとした。
だが、その教徒の望みは「女神その物であった」その使徒の美しさと自分を思う心に答えたい反面、自分が女神である以上答えられない。
その時に過去に使った魔法を思い出した女神は「私は貴方の気持ちに答えられない..その代り貴方の世界を私で満たしてあげましょう」そう伝えこの魔法を用いた。
その教徒が亡くなった時は何とも言えない幸せそうな顔をしていたという。
1番は良さそうだが、実は意味は無い、この世界で美醜が逆転するだけだ...まぁ少しは和らぐがそれだけだ。
2番は駄目だ、幾らマスクをしているとは言え、元の顔が思い出されるだろう..
3番はこれを選んだら破滅だ、誰が誰だか解らなくなったら生活が真面に出来なくなる。
そう考えたら4番しかない。
この世界の女の醜さは顔だけだ..体に関しては普通に色々なタイプがいる。
幸い、女神は凄く美人だ..そう考えたら、これしか無いのかも知れない。
ただ、全ての女性が女神の顔に見える事に若不安を感じるが、今よりはずうっと良い..良くてブス、本当に不細工だとゴリラ以下..正直オークやゴブリンと変わらない位不細工な女もいる..これの方が遙かに良い筈だ。
「それでは女神パラダイスで」
「やはり、そうですよね、美しい女神様に全ての人間が見える..私は怖くて(げほん)出来ませんが最高の筈です では神託を使って魔法を行使する必要がありますので 神官を呼んできますね」
宮廷魔術師 師団長が 10人程の神官をつれて来た...皆不細工な女だ。
「それじゃ行いますよ..」
「頼む」
目を瞑り、そのまま居ると目に何か熱い物が入ってきた。
「終わりました、どうですか?」
俺は静かに目をあけて、不細工だった神官をみた。
エロイ、美しい女神の顔ではぁはぁ言いながら床に倒れている。
この世界に来てはじめて下半身がうずいた。
「成功だ..師団長どの..一生恩に着ます..これ使って下さい..」
「この様な物は頂けません..」
「良いんだ..」
俺は金貨の大量に入った袋を師団長に渡した。
今迄の苦労に比べたら遙かに良い、世の中の女性の顔は1つになってしまったが、ブスやモンスターに囲まれる様な生活とは比べ物にならない。
「解りました、これは今後の魔法研究資金と教会への寄付に致します」
「おう、じゃあな..困った事があったらいつでも相談してくれ、大抵の事はしてやる」
《勇者様は今迄さぞ辛かったんでしょうな...私が同じ状態だったら考えただけで、ぞっとします。勇者様が笑顔になったのを初めて見ましたよ...早く相談してくれれば良いのに、そうしたらもっと早くに対処して上げれた》
俺は走った..街の女が全部、女神の顔に見える..だが、やはり、最初に相手するのはあの5人だ。
あの5人は、本当に俺を愛してくれていた。
「どうしたのですか 翼様」
「皆んな、俺が悪かった...愛している!」
顔だけだったんだ..顔が真面ならそれぞれが独特の良いスタイルをしているし、性格も良い。
最高の女達だ。
「本当ですか? あの永遠の愛は、誓って頂けるのですか?」
「ああ、勿論だ..」
その日の翼は今迄の事が嘘だったように5人相手に愛し合った。
月日は流れ、子供も生まれた...だが生まれた子供のうち、女の子は全員母親と全く同じ顔だった。
30歳になって女性たちの体つきが変わっても顔は若くて美しい女神の顔だった。
美しき女神の顔に囲まれながら...翼は生きていく..
翼が死ぬ時には笑っているのだろうか? 悲しんでいるだろうか?
その答えは 勇者 翼しか知らない...
※もう一話先にする予定でしたが、此処で謎解きをしました。
セレスの場合はこの逆になります。ジョセフィーナ姫が元の世界で究極の美少女でしたが、日本にいたら〈とんでもないブスレベル〉 つまりセレスの方が美女しかいない世界に転移した事になります。
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