第18話 初登校、反撃

夏休みが終わり、明日から高校生としての俺の生活が始まる。


その前に静流さんから今の俺の現状について教わった。


翼は高校に入学して直ぐに虐めに会い不登校になったらしい。


俺が知らない、天城翼の顔だ。


いつも自信に満ちて、王や教皇にさえ苦言を呈していた。


俺からしたらあの男が虐められた、それがどうしても信じられなかった。


魔族の大群に1人で突っ込み、竜のブレスも恐れない。


【人類最強】【ドラゴンスレイヤー】【王国の剣】そんな彼奴が虐められる。


例え力がなくとも負ける姿が思いつかない。


だが、この世界に来てからは...評価は下がりっぱなしだ。


なら俺はどうすれば良い...簡単だ。


俺の知っている翼は勇者...そして国を救った英雄。


それで良い...俺はこの世界で、翼の名前を輝かせる。



「静流さん、もう大丈夫だよ、その為に夏休み中に体を鍛えていたんだから」


「そうね、もう昔の翼じゃないわね」


「心配しないで大丈夫だよ...だけど、《やり返さないのが悪い》か仕方ないな」


「翼?」


「心配いらないよ」



静流は体を動かすのが苦手なタイプだった。


だからこそ、今の翼を凄いと思っていなかった。


《素振りをして体を鍛えている》その程度の認識しかない。


35キロの金棒を楽々素振りする様な人間...この世界の剣道家にもまず居ないだろう。



「お母さん、大丈夫だよお兄ちゃんは、今泉茜さんと友達だし平気だと思う」


「えーと、それ本当?」


「うん」


何故か少し静流さんの顔が曇ったが駄目押しした方が良いだろう。


「大丈夫だから安心して」


そう笑いながら、答えた。



騎士にも勿論【虐め】はある。


騎士の場合は一方的に【虐められる方が悪い】


そこに抗議など許されない。


何故なら騎士は集団戦で戦わなくちゃならない。


如何に正当な理由があろうと仲間に嫌われたら終わりだ。


騎士団に居たければ、実力を示して仲間に認められて信頼を得なければならない。


仲が良く無ければ背中等、預けられない。


俺はジョブにスキル無し...認めて貰うまで何人ぶちのめしたか解らない。


だからこそ【虐めは虐められる方が悪い】


騎士の世界では揉めたら余程の理由が無ければクビになるのは1人の方だ。




今日から高校での生活が始まる。


俺の通う高校は「私立 霞山学園」別名かす高と呼ばれている。


まぁこの近辺では一番偏差値の低い高校だ。



少し余裕を見て朝の日課の素振りと掃除をしてシャワーを浴びた。


一応は、楓からコロンを借りて香りにも気をつけた。


これで良いだろう。


高校への道はちゃんと調べてあるし、下駄箱の位置やクラスの場所は記憶にある。


問題はなさそうだ。


クラスメイトは、まだまばらだ。



高校に近づくにつれ、生徒が多くなっていく。


凄いな...男女の比率は半々位だろうか?


見れば見る程...綺麗か可愛い女の子しかいないな、嫌われている自分が辛い。



【学生目線】


「オークマン引き籠っていたんじゃないのかよ...マジキメーよ、もう来るなよ」


「あのさぁ、あんた目が腐ってんじゃないの? 噂で聞いてたけど、何かの虐めなのかな? あんな王子様みたいな人がオークマン?」


「何いっているの?ちずる、だったらあんた彼奴と付き合えるの?」


「彼女居ないなら、普通に付き合いたいよ、当たり前じゃない」


「あんたの方が目が腐っているよ」



「彼奴また通うの、最悪~」


「あれ、誰、転校生かな? あんな人ゼニーズにだって居ないよね? 本当に素敵」


「恵子ちゃん、頭がおかしいの? あれ豚みたいじゃない?」


「はぁ~何言っているのかな? 精悍な顔立ちであんな超イケメンが豚...もしかしてあの人虐められているの? そう言うのカッコ悪いよ」


「だって豚みたいじゃん、あだ名だってオークマンなんだよ!」


「あのさぁ...もしかして沢口さん、告白して玉砕でもして振られてたりして...止めなよ見苦しいから」


「誰が、あんな奴に...」


「あだ名をつけるなら、麗しのロミオとかじゃない、そうだ沢口さん、あの人と知り合い?」


「有名人じゃん、天城翼、オークマン、豚野郎」


「なら紹介して」


「知らないよ...あんなキモイの」


「な~んだ、沢口さんが、あんなイケメンと知り合いの訳無いよね」


「だから、あんたデブ専?...彼奴それだけじゃなくて性格も悪いらしいよ」


「あの外見なら、大概の事は許せるよ、頭からジュース掛けられても、ごめんねって謝れる自信があるよ」


「馬鹿じゃ無いの」




「オークマンだ」


「あれがオークマン? マジっすか?」


「凄く気持ち悪いだろう?」


「いやむしろ、あれはイケメンでしょ」


「はぁ~」



天城翼を見たことある人間には【豚男】見た事ない人間には【細マッチョの凄いイケメン】にしか見えない。


こうなるのは当たり前かもしれない。



クラスについた。



教室からは【クスクス声】と【ヒソヒソ声】が聞こえる。


今迄とは違い完全に悪意のある目つきに敵意しか感じられない。


「良くこれたわね、彼奴」


「また虐めてやればすぐに来なくなるっしょ」


「辞めるか転校すれば良いのに...」


確実にクラス全員が敵だ。



「多分、また鶴橋くんに殴られてこなくなるって」


《成程な、そいつが原因か》



机をみてみた...何だよこれ。


豚野郎 死ね!



キモイ!


ご丁寧にただ書いてあるだけでなく、彫ってある。


しかも瓶も置いてある。


此奴を恐らくやった奴は解る、鶴橋って奴だろう。


まだ来てないな。


俺は机を持っていき鶴橋の机と交換した。


これで良し...


周りはざわついているが、気にしない。



「あれ、不味いんじゃないか?」


「オークマン殺されるんじゃないか?」


「鶴橋キレそうだからな、まきぞいは嫌だな」




暫くして、問題の鶴橋がやってきた。


「何だよこれーーーっ、オークマンお前」


「よう、その机に傷つけたのはお前だろう? でこぼこして書きにくそうだから交換したぞ、お前がやったんだからいいだろう」


「お前、俺に殴られたの忘れたのか?」


「ああっ思い出した、ボクシングダンスって言うお遊びやっているんだっけ? 拳闘モドキの奴」


「お前、殺す」


何だこの動き、挑発の為にワザと馬鹿にしたけど...素人も良い所だな。


「あのさぁ、そんなんじゃ女子供にも敵わないんじゃねーか?」


俺はさらっとかわしてやった。


殴ってもいいが此処は敵だらけだ、ルールのある所でやった方が良いだろう。


「貴様ーーーっ」


「あのさぁ、こんな所でやらないで、お前が遊びでやっている、お遊びボクシングダンス部だっけ? そこで試合形式でやらない? おれが怖く無いなら受けろよ...あっ俺が怖いなら逃げてもいいぞ、さらに言うなら先輩に泣きついても良いからな」



「翼、てめー」


だから、あたらないよ、そんなの。


「受けないなら、お前の負け、此処で土下座して謝れ」


「解った受けてやんよ、お前、俺だけじゃ無くてボクシングを馬鹿にしたんだ、先輩もキレるからどうなっても知らないからな」


「解った、それまで暫定的にこの机は俺が使うわ」


「覚えていろよ」




「という訳でこれから俺はお前達にやり返す事にしたからな、俺は女には優しいから手は出すつもりは無い、だが男には容赦しない」


そう大きな声で叫んだ。



「天城くん、学校に来たんですか?」


担任は戸惑っている...まぁこの担任も《やり返さないお前が悪い、星人だ》


「はい、休んでいる間に先生が言っていた事が解りました、確かにやり返さない俺が間違っていました、これからはちゃんとやり返す様にしようと思います」


「そうですよ、男なんだから女々しく親に言いつけたりしないで、シャキッとしなさい、それで良いんですよ」


言質とったからな、逃がさないよ。



やり返す宣言が効いたせいか、誰も絡んで来ない。



だが、無視されるのも地味にきつい。


鶴橋と一緒に男子は遠巻きに睨みつけてくるし...女子も話し掛けて来ない。


まぁ、何かされないだけ良い。


授業には普通についていけた。


静流さんや楓に感謝だ。


そして無視はされるが、何も問題が起きない状態で放課後になった。


「翼、逃げるなよ」


鶴橋が脅してきたが気にならなかった。


「逃げる訳ないだろう」


そのまま、一緒にボクシング部についていった。


鶴橋はクラスを牛耳っているのかクラスの奴らも全員がついて来る。


このクラスも可愛い子ばかりだ...女子全員から嫌われるのはやっぱり辛いな。



ボクシング部についていくと何やら、鶴橋がボクシング部の先輩と話している。


このボクシング部の顧問は本橋...五所川原と同じ《やり返さないのが悪いんだ星人》だ。



「なんだ、お前、天城か? また文句言いに来たのか?」


「違います、休みの期間に考えたんですよ、先生が正しいと、だからボクシングで鶴橋にリベンジです」


「そうか、親の背中でコソコソしているんじゃなくて男なら、そうしなくちゃな、良し認めよう」


「はい、ついでにボクシングダンス部の先輩たちや顧問の本橋先生ともやってみたいですね」


「お前、ボクシングを馬鹿にしているのか?」


「いえ、別に、本橋先生の話なら《やり返さない》のが悪いんでしょう? なら鶴橋にボクシングを教えたこの部も俺には敵、しっかりやり返させて貰います」



「そうか、なら鶴橋に勝ったら、好きなだけやれば良いさ、リングの上でな」


「それは良いですね」


《馬鹿な奴だ、この部はインターハイの常連だぞ、更に言うなら俺は元国体の選手だプロには成らなかったが元オリンピック銅メダリストだ、その俺が手塩に育てた、今の部長の葛西はインターハイのライト級の優勝者、今はオリンピックが無いが、もし種目に有れば金メダル候補者は間違いない、もうジムに入っていてプロのライセンスを持っている、まぁ将来は世界を狙える器だ、馬鹿な奴...リングの上でルールに乗っ取ってなら親にも校長にも文句は言わせない》



えーと、拳闘なのにベアナックルじゃないのか?


あんな綿の入った物つけて殴るならまぁ、大怪我はしないな。



結局俺はグローブをつけてリングに上がった


持って無いから、上は裸で下は体育着の短パンだ。


まぁ鶴橋はしっかりと着替えていたが...



「ちょっと、良いか天城」


「何ですか? 先輩」


「お前、ボクシング部を馬鹿にしたって本当か?」


「確かに馬鹿にしましたよ、だけど、鶴橋はボクシングを知らない俺を殴って、虐めて金迄とっていたんだぜ、知らないとは言わせない...そんな奴に格闘技を教えるなんてクズだろう...そうだ、俺サイフに2万持っているからさぁ、負けたらやるから、買ったら俺に負けた奴の金くれない」



「貴様、クズだな」


「あのさぁ、俺は格闘技経験がない素人だった、それを殴って虐めて登校拒否になるまでやった...鶴橋が脅迫して金をとった証拠もあった、だがそこの先生は《やり返さない方が悪い》そう言って終わらせたんだぜ、何が違うんだ? 多分大事にしたらインターハイの出場資格がなくなるからとか、鶴橋が有望だったから握り潰したかったんじゃない?」



「それは...」


「知らなかったなんて言わせない...そんな事実を誤魔化して、インターハイに行ったんだから先輩も同罪じゃねーの...まぁ良いや、本橋先生このルールを受けてくれたら、もうこの話は蒸し返さない、それでどうです?」


「蒸し返さないんだな、なら良い、そのルール受けてやる」



とはいえ大怪我させる、つもりは無い。


此処で俺がボクシング部より強いと言う事が解ればもう俺に絡む奴はいないだろう。



「おい、鶴橋、お前がまいた種だ、自分で型をつけろ」


「解っていますよ、直ぐ終わらせてきますよ...翼、恥かかせやがって覚えていろよ」


「良いから始めないか?」



「それじゃもう良いんだな」


ゴングが鳴った。


先手必勝だ..防御しているようだが関係ないそのまま殴り掛かった。


こんな綿が詰まった物つけているんだ、大怪我にはならないだろう。


防御の上からただ、殴りつけたら案外脆くそのまま顎に当たった。




ミキッグシャバキバキバキ


「ぎゃぁぁぁぁぁっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ」


周りは青ざめている。



「おい、カウント」


「おい、鶴橋大丈夫か?...カウントは要らない、お前の勝ちだ」


「なら、此奴の財布を持って来いよ」



「鶴橋をさげて休ませろ」


「まぁ手加減したから大丈夫だろう?」


そのまま鶴橋は部室の隅っこに転がらされた。


「お前、ふざけんなよ! 負けるにしてもこれは無いぞ」


鶴橋は怒鳴られていた、いい気味だな。


「うぐぅうががががががッ」


「静かにしとけ、これが終わったら病院に連れていってやるから」


約束は守るようだった。


「ほら、鶴橋のサイフだ、鞄から持ってきた、これで良いんだな」


俺はサイフから金をとってサイフを返した。


「まぁな、だが足りないな? 俺が鶴橋から脅し取られた金額は10万を越えているんだ、たったの8千円、ぜんぜん足りない、そうか? 明日から鶴橋にATMになって貰えば良いのか?」



俺は大きな声で言った。


「お前等、鶴橋はこの程度のゴミだったんだぜ? それでどうする? 今度から俺が鶴橋がしたように俺がお前等を引き籠るまで虐めてもいいんだぜ?」



周りは静かだった。



「俺は格闘技をやっている、こんなちんけなボクシング部と違って本格的な物だ、だが今迄は手を出さなかった、弱い奴に手を出すのは卑怯だと思っていたからだ、だがこの学校は教師を含めて《やりかえさない奴が悪い》そういったんだぜ、だから今度から鶴橋がやった事と同じ事をお前らにもするつもりだ、良いんだよな?」


随分表情が暗くなったな。


「あの..」


可愛らしい女の子が手を挙げた。


「何だ」


「あの、天城くん、女の子には手を出さないって言っていたよね? もう無視したり、悪口言わないって約束したらもう終わりで良いのかな?」


正直こんな可愛い女の子に手をだせないな。


「ああっそれで良いよ、もしそう言うならこのまま立ち去ってくれ、男もサービスで、今ならそれで良いや」


「解った、悪かったな」


「僕は揉め事が嫌いなだけなんだ、だから今迄ごめんよ」


「私は暴力が嫌いだったけど、鶴橋くんが怖くて仕方なく加わっただけだから...ごめん」


結局、クラスの皆はそのまま立ち去った。



今、此処にはボクシング部の人間しか居ない。


「なぁ、もう少し平和的に解決できないのか?」


「あんた誰?」


「俺はこの部の部長で葛西、卑怯だと思わないか? 話を聞いていたら格闘技経験者なんだろう」


「だから、何だ、今迄使わなかったんだよ...だが金を脅し取られ《やり返さない奴が悪い》なんて言われたらやり返さない訳にはいかないだろう」


「ああ、それは謝る、そんな人間にボクシングを教えたのは俺だ、だが部活なんだ教えない訳にいかないんだ、解るだろう」


「それで俺が死んでいても、同じ事が言えるのか? 俺は引き籠った後自殺も考えたんだぜ!」


「....そうだな、言えないな。その件は謝る、だがボクシングは遊びじゃない、オリンピックの種目に無いからアマチュアで無く、ジムに所属した、俺はプロテストを受けて受かったプロだ、その前でお前はこれが遊びだと言うのか?」



「それで? 腹がたったら《やり返せばいい》それだけだろう? 顧問の本橋先生が言っているじゃん? それに俺が鶴橋から脅し取られた金額は10万を超えている、お前らがボクシングを鶴橋に教えたから出た損害なんだぜ」


「僕はプロだ、それでもそれを言うのかい?」


「戦っても良いけど、先輩幾ら持っているの?」


どうせ学生だから数千円だろうな。



「お前等、悪いがお金を貸してくれないか?」


「葛西、良い10万なら俺が持っている...それを出してやる、こんな茶番は終わりにしたい、葛西が勝ったらもう終わり《仕返しももう無しだ》お前はボクシング部と鶴橋に謝れ...」


「ならば、俺が勝ったらボクシング部は解散でどうですか?」


「おい、冗談は止めろ」


「いや、それで良い...先生僕が負けると思いますか?」


「そうだな、天城約束は守れよ」


「解りました、約束しますよ? そちらも守って下さいね!それで終わりにしましょう」


《まさか此処まで大事になるなんて思わなかった、いつの間にか賭け試合じゃないか? こんなのがバレたら活動停止だ。 しかもそれが部員が起こした虐めで金迄脅しとっていたなんてばれたら不味い...早く終わらせないと不味いな》



「最初に謝っておく、鶴橋が虐めをしていた事は後で知った」


「認めるんだな」


「ああっ、だが僕にはどうしても、仲間の夢を捨てさせることが出来なかった、それにあんな馬鹿でも可愛い後輩なんだ」


「なら、何故俺に謝りに来なかった」


「謝ったら罪を認めてしまったら」


「もう言い訳は良いよ...過ちも認めない、謝罪もしない、弁償もしないで《やり返さない奴が悪い》ですませたその事実はもう消えない、俺からしたらお前達は犯罪者予備軍に凶器を与えた..それだけだな、さぁやろうぜお遊びボクシング」


「貴様っ」


「負けたら、謝るよ土下座でも何でもしてやるよ」


「最早これで決着を付けるしかないな」


「ああっ」



二人で向き合い...コングがなった。



これでも一応はプロなんだよな。


葛西は警戒して防御していた。


防御して居るから大丈夫なんだと俺は殴った。


その防御を突き抜けて顎にパンチがヒットした。


ただ、それだけだ。


ミキッグバキバキ


「ぎゃぁぁぁぁぁっ」


葛西は蹲ってただ叫ぶだけだった。


「カウント」


「慌てて本橋がリングに上がった」


「おい」


「ああっ負けで良い...10万は渡す..おいっ葛西、葛西大丈夫か?おい、おーい」



《今、病院にいる生徒から連絡があった。鶴橋の両腕は折れ、顎も割れていた。粉砕骨折だった...手術も必要だし、リハビリも入れたら半年~1年治療に掛かる。しかも治っても後遺症が残る可能性があるとの事だった。だったら葛西も...見た感じから解る、顎が割れているのが解る。》



「先生、もう一つの約束も守ってくださいね」


「待ってくれ」


「先生、子供って可愛いですよね」


「なっ何を言っているんだ...天城」


「いや、あんな可愛い子が虐めにあって死んだら可哀想だなと...」



「解った...約束は守る」






あれっ何で此処まで怪我するんだ。


普通に子供を殴る程度の力で殴っただけなのに。





翼は考え違いしていた。


翼は騎士だった。


騎士であったセレスが殴っていた子供は異世界人だ。


そして日本と違い...ジョブやスキルがある。


それらを持たない人間は、セレスを除けば商人等安全な生活を送っている。


それじゃ異世界の子供はどの位なのか。


ジョブや肉体強化を持っていれば、今回位のセレスの攻撃は充分耐えられる。


皆さんも色々な物語で見ている筈だ。


ゴブリンを狩る子供冒険者。


酒場で馬鹿にされベテラン冒険者に胸を掴まれ思いっきり殴られ酒樽に突っ込む少年。


次の瞬間に立ち上がりトボトボ去っていく。


大剣やグレートソードを振るう様な冒険者に殴られても、軽症ですんでいる。


だが、普通の人間がその様な攻撃を受けたら...


大怪我をするのは当たり前だ。


この国では、一流の格闘家ですらオークどころか、熊にすら勝てない位なのだから...


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