第7話 【勇者SIDE】 転移した、その先に

俺の名前は 天城翼、まぁ気弱な何処にでもいる引き籠りだ。


俺だって最初から引き籠りだった訳では無い。


子供の頃は、リア充に近かったかも知れない。


俺の親父は小さい会社を経営していた。


それなりにお金があり、将来はその会社の跡取りの筈だった。


外見も美形とまではいかないが、中の上位だったと思う。


サッカークラブに入っていて、それなりに活躍していたと思う。


少なくとも、レモンの輪切りのハチミツ漬けやスポーツドリンクをくれる様な女の子が居たのだから、そこそこ人気はあった筈だ。



中学に入る頃に親父は事業に失敗していきなり家は貧乏になった。


その後、親父はそのせいかどうか解らないが自殺してしまった。


親父は生命保険に入っていた為に、減額された物のお金が貰えた為に借金を返してもお金は余った。


この頃から俺の人生は破綻し始めたのかも知れない。


小学校で頑張っていたサッカーも中学では練習量が多く、辛く感じ辞めてしまった。


運命を分けてしまったのは..【新造時代 エランバリアン】というアニメだった。


今迄はアニメや漫画に嵌った事は無かった。


だが、このアニメは嵌ってしまった...赤髪の人を小馬鹿にするヒロイン【アイカ】と白髪の無口な少女【マミナミ】が壺に嵌ってしまった。


当時社会現象になったのだからこれ位なら仕方ないで済んだかもしれない。


だが、俺はアニメと漫画に嵌ってしまった。



アニメに嵌った俺はそれに時間を費やした為に、学力が落ちた。


その結果、かなりレベルの低い高校に入った。


そこで、アニメや漫画が好きな仲間とつるんでいたのだが...


俺や仲間を、鶴橋という気に入らない奴が馬鹿にしてきた。


「やれキモイ」


「豚野郎だ」


「臭い」


そんな風に事ある事に罵ってきた。


ここで今思えば、キレなければ良かった。


「いい加減にしろ」掴みかかってしまった。


その瞬間、凄いパンチが飛んできた...


「おまえさぁ...俺に勝てると思っているの? 俺ボクシング経験者だよ? なぁ豚に豚って言ってなんで怒るのかな...お前100キロ越えているじゃん? そうだな、豚じゃ豚が可哀想だから今日からお前は【オークマン】な...」


鼻血を出して転がっている俺に此奴は言った。


俺の人生が落ちた瞬間だった。


「鶴橋くんの言っている事間違ってないよね? 何時もフケだらけ、体はデブ、豚と言われても仕方ないんじゃない!」


「真面に喋れない、運動も勉強も真面に出来ない、知っている?女子はみ~んなお前が嫌いなの」



「本当、生きていけないよ...あたしがあんな外見だったら自殺するよ」



そうか...俺は嫌われていたんだ。


この日はこれで終わった。


だが次の日から俺の地獄が始まった。


「あのさぁ、翼って名前辞めてくれない...私の好きなアイドルと同じなんだよね」


「言われても」


「うざっ...まぁ良いや、オークマンっていう名前があるんだよね..オークマン」


「...」



最早、俺の事を翼って呼ぶ人間は居ない...


俺は【オークマン】オークの様に醜い男...そう呼ばれた...


アニメや漫画が好きな奴は割と弱者が多い。


だから巻き込まれるのが嫌で俺と話さなくなった。


更に虐めは酷くなり、給食にゴミが必ず入って居るのは日常茶飯事、廊下を歩くているだけで蹴りを入れられる。


教師に相談しても「こども同士の冗談だろう?」「やり返さないお前が悪い」そんな事しか言わない。


俺の担任は女教師でお婆ちゃんみたいな奴だが「男の癖に女々しいわ、男ならガツンとやり返しなさい」と言いやがる。


この学校はいわゆる底辺高で頭は良くない、その反面スポーツでは部がそこそこの成績を出している。


だから、教師も脳筋が多い...


結局家のくそ婆が文句を言っても、同じような回答しか無かった。


学校での生活が辛い俺は...そのまま引き籠りになった。



親父が居ないからそこからはやりたい放題だった。


最初は文句言っていたくそ婆も、横面を引っ叩いて髪の毛を持って、引っ張りまわしたら文句を言わなくなった。


クソガキも俺をゴミを見る様な目で見たから《馬乗りになってビンタしまくったら》怖がって寄り付きもしなくなった。


本当についてね~、もしくそ婆やクソガキがアニメや漫画にでてくるキャラ位可愛ければ、童貞捨てて、性処理に使えるのに...



最近では俺が家に居るから、くそ婆は夜遅くまで帰って来ない、クソガキも友達や親類んお家に遊びに行って同じく夜まで帰ってこない。


「何だよチクショウ...俺が買いに行かなくちゃならないじゃないか?」


俺が愛読している、エロ漫画の発売日なんだよ..コンビニまで行かなくちゃならねー


まぁ...クソガキが居ても嫌がって買いにいかねーけどな。


仕方なく、俺はコンビニまで買いに出かけた。


普通なら10分も掛からないで行けるコンビニに30分以上かけて行かないといけない。


チクショウ、俺は鬱なんだよ、労われよな...


コンビニ行く途中のビルのガラスに俺の姿が映った。


本当に醜い姿だった...あははっ本当にオークマンだ。



何処で間違ってしまったのかな?


小学生の時の俺は輝いていた...サッカー少年の成れの果てがこれだ。


俺は何をしているんだ...


学校から逃げて、母親や妹に暴力振るって..これじゃ心までオークマンじゃないか。



「ハァハァ...心が苦しくなる」



疲れて石で出来たベンチに座った。


車道近くで遊んでいる少女がいた。


家のクソガキもあの位可愛ければなぁ..


そう思い見ていたら、後ろからトラックが来ていた。


《あれは、不味いんじゃないか...やばいぞ、チクショウ》


俺は走った、少女を助けるために、何とか間に合い少女を突き飛ばしたが俺はもろにトラックに轢かれた。


【ドガッ】凄い音が聞こえた。


「お兄ちゃん...」


これで良かった、ゴミみたいな俺の命で美少女の命が救えた..これで」


「怖いよーーーーっ内臓が」


馬鹿野郎...そこは《お兄ちゃん...ありがとう》だろうが。



そのまま俺は意識を失った。



人生が終わった...そう思っていたら..なんでだろうか? 意識がある。


体からは血も流れていないし、服も破れていない。あれっ何故か生きているぞ..


「お目ざめですか?」


このシュチエ―ションはもしかしてあれなのか?


「ああああ貴方はもしかして?」


どう見ても女神にしか見えない...これは正にあれだ..


「そう、女神です..多分、貴方が思った通りです」



「異世界転移ですよね..俺が勇者に成れるんですか?」



「成れますよ、ええっ成れますとも!」



こんなチャンス二度とない..絶対に逃してなるものか。



「だったら、お願い致します!」



「ただ、その前に説明を聞いて下さい..良いですか?」



「解りました」



「あの、言いにくいのですが、私は貴方の思っている通り、異世界転移の女神ですが、貴方が思っているほどの能力はありません」


「そうなのか?」


「はい、よく魔王を倒したら元の世界に帰してあげるという話がありますが..それが出来ません、片道切符です」


別に構わない、こんなクソみたいな世界二度と帰るかってーの


「そうですか、別に構いません(勇者に成れるなら要らないよな) ですが、そのチートは貰えるんですよね?」


「はい、魔王と戦う勇者の召喚が今回の趣旨ですから充分に差し上げます..」


「なら充分です..女神様、それであの..ですね」


「言わなくても解ります、勿論、強いだけでなく、容姿も端麗にしますよ..間違いなくモテモテです..心配ならモテるチートも更にあげましょう、勇者の力は子供にも一部伝わるので子作りもお願いしたいですからね...うふふ、その代り制限として、最低でもあちらの世界で10人の子供を作って下さい..どうでしょうか?あっ!出来なかったその場で死にますよ」


「お願いします..有難うございます」


やりまくれば良いだけじゃん...楽勝だ。


「それではお行きなさい..勇者 翼!」



此処までは良かったんだ、奇跡が起きた、俺が主人公だって小躍りしたよ。


だが、着いてから可笑しいんだ、男は美男子しか居ないのに..女はブスしか居ないんだ..


本当に視界に入る範囲で見て、男は不細工が一人も居ないのに..女はブスしか居ないんだよ。


この世界で1番美しく、ルビーと呼ばれている美姫、ジョセフィーナ姫を紹介されたが...それでもとんでもない不細工だった。


周りの女が化け物クラスだとすると..ジョセフィーナ姫は学校の全校生徒の中で群を抜いて1番のブス..だけど、人に見えるだけマシなレベルだ。


よく、少年漫画で凄いブスキャラが出て来るよな《ゴリ子》とか《ブス代》とかああいうレベル何だ..


きっと此処は美醜が逆転しているんだよな...多分そうに違いない。


さっさと魔王討伐に行こう...そして、「俺から見て美少女を探すんだ..」そう息まいた。


美醜逆転って本当に怖い世界だ、王家から聖女と女魔導士がパーティとして加わったんだが、これがまた恐ろしい位のブスなんだ。


「いやぁ流石に美男美女絵になりますな..」


いやぁ、これ何の冗談..気持ち悪いんですが...正直言って..これが美少女なら元の世界の女でブスなんて居ないんじゃないの?


仕方ないなここは美醜逆転...お金も貰えるようだから奴隷でも買おう。



二人と一緒に魔王討伐旅に出た



「勇者様は照屋さんなんですね..目を併せないなんて」


「本当にそうだね..シャイなんだから」



気持ち悪い...耐えられない、王に頼んで一人にして貰った。


「私にはこんなに可憐な女性を争いに巻き込むなんて出来ない、俺が一人で戦い魔王を倒します...聖女と賢者は国で待っててください」


これで良い筈だ。


だが、このブスたちは俺に抱き着いてきた。


「そんな、そんなに大事に思ってくれるなんて」


「そんなに愛してくれるなんて、僕幸せだよ」


我慢だ、今だけ我慢すれば俺は自由だ。



俺は、自由だーーーーーっ


直ぐに街に行き、奴隷商に向った。



「ハァハァ...一番醜い女奴隷を見せてくれ」


「一番醜い、女奴隷ですか? 変わった注文ですな?」



確か、これで俺が好きな美醜逆転の小説なら とびっきりの美少女が出てくる筈だ。


一緒に見て回った。


最初は化け物エルフ...物凄くキモイ..だが...可笑しい、可笑しいぞ、人には見える。


物凄く不細工だけど、一番酷くは無い、これはもしかしたら。



「此処が廃棄奴隷...この店で一番価値の無い奴隷のある場所です。


恐る恐るカーテンを潜った。


「ああああああああーーーーーっ、何だよこれは...美醜逆転じゃなったんだーーーっハァハァ」



何だよこれ..化け物にしか見えない、それも飛び切りの化け物だ。



全部見せて貰ったけど..気持ち悪い奴しか居ない..仕方なく俺は..声だけ可愛い背の低いゴブリンみたいな女を買った。


銅貨5枚なら良いや...


目を瞑って声だけ聴けば..少しは癒されるさ..声だけは美少女だからな...



旅を続けて..ようやく諦めがついた。


この世界は美醜逆転でも何でもなく...女の美しさのレベルが恐ろしく低いんだ。


多分、この世界にはグラビアアイドルクラスなんて居ない..何しろサキュバスまでが凄くキモイ綺麗な感じだ。


「私は幻術を使い、ありとあらゆる美女の夢を見せて誘惑する」


ワザと術に掛かった...只のブスの悪夢が見れただけだ...速攻起きたよ。


女冒険者が「美しさに惑わされないで」なんて言っていたが..化け物女に、誰が心奪われるんだよ。ちなみに女冒険者は更にキモイ。


そして...気がついてしまった、あの時にあった美姫と言われたブスがこの世界では本当に凄い美少女なんだと..あんまりだ、前の世界なら確実に全校で1番のブスなのに、それがこの世界で最高の美少女。


あの、聖女や女魔導士もこの世界じゃ屈指の美少女なんだ...


俺は、この世界で10人子供を作らなくちゃいけないんだな..


正直、目を潰すしかない、そう思って聖剣を目に当てた事もあった。


だが、多分それをしてももう、目にこびり付いた後だ、今更効果は無い。



何処にも美形は居なかった...美しき旋律者なんていうのが魔族の四天王にも居たが..やめてくれ、もう、吐き気がするわ。


気が重い..だが、女神との約束だ..10人と子供を作らなくては...


顔に布でも撒けば出来るか...だが、それでも..この世界で美少女と呼ばれる女が限界だ..それ以外はもう見るだけで嫌気がする。


だって、他の女は..まるで化け物なんだからな..昔、愛嬌のあるゴブリンの漫画があったが、あの方がまだましなレベルなんだ。


あのジョセフィーナ姫と聖女と女魔導士、声だけ可愛い奴隷とどうにか頑張って10人子供作って...その後は..森にでも行って隠居してくらすしかない..あんまりだ、前の世界にいれば少なくとも金さえ払えば風俗にいけたのに...最悪だ。




結局、俺はジョセフィーナ姫と聖女と女魔導士、声だけ可愛い奴隷とメイドと一緒に暮らす事にした。


このメイドは実は娼婦だった女だ更に不細工だけど前の世界の場末の風俗嬢みたいな感じでテクニックがある..仕方ない子供を作らないといけない。


俺が童貞を捨てたのはジョセフィーナ姫だ...まだ人間に見えるからな、最低の初体験だった。


なぁ...一番不細工な女で捨てた童貞って、最悪だ。


しかも、泣きながらセレスなんて言いやがった..ブスが泣くと更にブスになってキモイんだよ。


だけど、やっちまった後が最悪だ、他の男の名前を言っていたのに...《永遠の愛を誓って》とか言い出しやがる...嫌だよキモイよ..


正直、エッチだってしたく無いんだからな...一生懸命前の世界のエロ雑誌をやエロゲー思い出して、ようやく立つんだ、一生なんて絶対無理だ。


そんな中、ジョセフィーナの元婚約者が突入してきた、確かに凄い美少年だ。


そんな必死にならなくても妊娠させて子供が出来たら..返すよ..要らないんだから..本当にさ..寧ろ、引き取ってもらいたいんだ。


だけど女神との約束だから悪いな..ドブスでもこいつ等位しか抱ける女は居ないんだよ。


処分について聞かれたが、絶対に何もしないでくれと頼んだ。


良心の呵責はあるんだ、確かに此奴の女を奪って雑に扱ったからな。 ブスだけど。


俺から見たらこの凄いブスが...この世界では絶世の美少女なんだろうからさ..此奴にとっては大切な彼女だったんだろうな。


此奴をみた瞬間にブスが「セレス」と言って真っ青になった。


此奴には生きていて貰わないと困る。


凄い美少年だ...子供を作り終えたら、此奴に返せば良い。


ついでに聖女も賢者もあげれば良いさ...少しだけ待ってくれ。


多分、此奴はこの世界の本当の美青年だ。


「真実の愛は壊せない、返すよ」そう言って返せば良い...10人作ったら返すよ...聖女も賢者もあげるから、少しだけ待ってくれ。


此奴が愛してくれたら...もう永遠の愛とか言わないでくれそうだ。





前の世界が懐かしい..街を歩くだけで、ちゃんとした普通の女の子に逢えるんだから。


あの世界に居たら...少なくともこいつ等以上に可愛い女相手に童貞を捨てられた。


風俗の外れがジョセフィーナ姫の100倍位は可愛い。


この世界の女は化け物並みのブスしか居ない..全員に愛されたって、嬉しくも何ともない..


帰りたいな...帰れないけど...帰りたい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る