第4話 女神ラク―ナ
【運が悪かった】それしか言えない...
国境まで馬車で送ってくれたがそれが仇になった。
馬車に騎士がついていたからお宝でも積んでいると思ったのだろう...盗賊団に襲われた。
しかも、その盗賊団は有名な盗賊団で【魔族の息吹】だった。
魔族なんて名乗っているが、本物の魔族では無い。
自分自ら【魔族】を名乗る程の残酷な人間の集まりで、女以外は皆殺しにする。
女は..そのまま散々嬲った後に奴隷として売り払う...情け容赦ない最低、最有の盗賊だ。
騎士も強かったがこの盗賊団の人数は3000を超えると言われている。
目の前にいる人数も100を超えていた。
多勢に無勢、1人1人死んでいき、とうとう俺1人になった..しかも、今は形上は罪人なので手鎖をされていて剣は無い。
ただ金を奪われ殺される以外...何も出来なかった。
体が冷たくなり意識が朦朧としているなか声が聞こえてきた。
「セレス...セレス」
可笑しい...俺は盗賊に殺された筈だ...
「ええっ貴方は死にましたよ..」
目の前には今迄に見た事が無い美しい女性がたっていた。
俺は世の中にジョセフィーナ姫以上の女性は居ないと思っていた。
もしそんな存在が居るとしたら女神様しか考えられない。
服装に優しそうな尊顔...見間違える訳がない。
「貴方は女神ラク―ナ様ですか..」
満面の笑みを浮かべながら彼女は語り掛けてきた。
「流石はセレス、敬虔なラク―ナ信徒だけありますね」
「私はラク―ナ信徒です..生まれてから今迄毎日の祈りをかかした事はありません」
「そうですね、私は何時も貴方を見守っていました」
俺は夢を見ているのか?
確か伝承では精一杯人生を生きた者には死の際に女神様自ら会ってくれる、そう司祭様から聞いた。
今がその時なのか?
「人生の最後に貴方が迎えにきてくれた、そんな光栄な事はありません、私の人生はそれだけで報われた...有難うございますラク―ナ様」
《そうよ、これが女神たる私に会えた人間の反応だわ、会えただけで光栄なのよ! 私はこの世界の一神教の女神ラク―ナなのよ、それなのに異世界人ってきたら、やれチート寄こせの、モテる様にしろだの、女神を何て思っているのかしら? こういう人間に会えると本当に癒されるのよ...話していても感謝の気持ちがどんどん流れ込んでくるのよ」
「ですが私は信者たる、そんな貴方を傷つけました、心が痛い」
「勇者の事ですか..でも世界を救う為には仕方なかった..そうですよね」
《こんなにも純真なんだから本当に良心が痛むのよ、どこぞの異世界人みたいに文句一つ言わない..クズとは大違いだわ》
「はい、ですが結果私は貴方から全てを奪ってしまった...その償いをしようと思います」
「女神様が償う事なんてありません...最後に貴方にこうして会えた、それは俺にとって最高の栄誉です」
「ですが、それでは私の気が済みません..だから貴方にはもう一度別の人生を与えます」
「そんな事が可能なのですか...それで女神様が罰を受けたり、困った事になりませんか?」
「本当はこの世界で私が加護を与えたいのですが、それは神の禁忌になります、私に出来る事は、勇者の世界に行かせる事しか出来ません」
「勇者、天城の世界ですか..」
「はい、貴方には 天城翼の世界に行って、天城翼になるというのは如何でしょうか? 幸い天城翼がこちらに来たことで魂をあちらの世界に送る事が出来ます」
「翼になるそう言う事でしょうか?」
「はい、翼の居た世界は、此処よりも高度に進んだ世界で、安全な世界です..そこで勇者に成らなかった翼が歩む筈だった人生を生きてみては如何でしょうか?」
「死んだ俺に新しい人生を下さるんですか? 」
「はい、こんな事しか私には出来ませんが..」
「有難うございます」
「向こうの世界は異なった神が治める世界...もう私は貴方に干渉は出来ません、ですが貴方が私を信仰してくれた事は忘れませんよ...魔法やジョブ等は持たせてあげれませんが、貴方が努力で得た物で向こうにも存在する物はそのままにします...頑張って下さいね」
「有難うございます、ラク―ナ様」
女神 ラク―ナ
良かったわ..何事も無く引き受けてくれて、日本から魂一つ召喚してしまった事がバレそうになっていたから不味かったのよね...これで誤魔化せるわ!
しかし、私の信徒は良いわね...チートくれとか言わないしね、外見を良くしてとか言わない、そして何より私を本当に愛してくれている。
女神として素直に祝福しましょう..貴方に幸がある事を..
別に誰でも良かった、だけど...少し位は依怙贔屓しますわ..より私を信心してくれて、あそこまで酷い事になっても私を信じたセレス..
次こそは幸せにね...もう私は貴方に何もしてあげれない、だけど貴方が幸せな人生を送れる様に祈ってあげる...
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