第58話 最強の援軍と事態の収束

時は少し遡る..



可笑しい、勇者は死んだ筈なのに何故か勇者の助けが聞こえてくる...


魔王は死んだ、勇者も歳をとって死んだ..だから我々に声が届くはずがない..


勇者、天空院翼は..我々と共に此処にいる..なのに声が聞こえてくる。


我らを求める声が..


誰が求めているのか、静かに聞いてみた..何故だ!


何故、そこに翼が居るんだ..しかも死に掛けているではないか!


天空院翼がいる...ならば、守るのが我らの宿命だ。






「しかし、此奴は化け物か? 死ぬまでにこんなに殺しやがってよ..」


「薬中か何かじゃねぇ..確か麻薬をやるとなかなか死ななくなるって聞いたぜ」


「だが、此奴は馬鹿だな、銃ぐらいならともかく、マシンガンに人間が敵うかってーの 脳みそぶちまけて死んで、気持ちわりぃ」


「本当なら、今夜あたり、あの女達が犯し放題だったのによ、此奴のせいで死体処理じゃねぇか..マジムカつく」


「本当、ついてね」


「それで、これどうするよ? ほぼ肉片だぜ、俺は触るのは嫌だぞ」


「そうはいってもかたずけないと..兄貴たちが怖いぞ」


「本当に最後までムカつく奴だ」




指揮が下がるから言えない..だが此奴は..凄い奴じゃないか..俺達みたいに汚れ仕事じゃない..


純粋にあの二人のうち1人が多分恋人だったんじゃないか...


そして、命と引き換えに救い出しやがった..無駄死にじゃねえよ..此奴は勝ったんだ..千人相手にな..


目的を果たしたんだ..此奴の勝ちだ..俺たちは負けたんだ。




ドスン、ドガ-ン、屋根を突き破り二つの物体が現れた。


一つは朽ち果てたマンホールの様に見える。


そして、もう一つは錆びた棒切れの様に見える..


その二つの物体が、翼の肉片を庇うように落ちた。


そのうちの一つ、マンホールの様な物体が翼の肉片の上に覆いかぶさるように倒れた..


そして、光り輝き始める..千切れていた肉片が這うように集まってくる。


崩れ落ちた脳みそまでが、まるで生き物のようにマンホールの様な物体の下に入り込んでいった。



何が起きたか解らない..だが不味い事が起きる、その事を本能で悟った組員が銃で撃った、だがその弾は手前で弾かれた。


何か見えない壁が攻撃を拒んでいた。



「誰かマシンガンを持って来い」


直ぐに2丁のマシンガンが持ってこられて弾が撃ち込まれた


ガガガガガガガガガガガガ


がガガガガガガガガガガガガッ


だが無数の弾丸が撃ち込まれるも全て見えない壁に阻まれ一発とも届かない。


光が収まり、マンホールの様な物体の下から傷一つない翼が現れる。




可笑しい、僕は死んだ筈だ..


確実に死んだ筈だ...体中が千切れて..死んだ記憶が僕にはある。



錆びてボロボロの丸い物体から光がでて僕を守っていた...知っている..これは、聖なる盾..ありとあらゆる攻撃から守り死に掛けの勇者を蘇生させた。 ドラゴンのブレスすら効かない最強の防具だ


そして、目の前にある錆びた棒...これは聖剣だ、ありとあらゆる物を切り裂き、ドラゴンの強靭な鱗さえバターの様に切り裂く。


どちらも、朽ち果て、錆びついているが僕が見誤る訳が無い..


僕が生きている、それがこの二つが本物である証拠だ。


「さぁ、第二ラウンド開始だ..」


周りの人間は恐ろしい者を見るような目で見ている..そりゃそうだ、肉片になった人間が再生して生き返ったんだ..そりゃ恐ろしいだろう。



「お前は何者なんだ..化け物..」


僕は何者なのだろうか? ここに聖剣と聖なる盾がある、そして僕の名は 天空院翼だ、なら名乗る名前は一つ。


「僕は、天空院翼、勇者だ! 」


僕は手加減などしない...さっき一回死んだ..前にも一度死んだ..特に今回のは、自分だけでなく大切な人すら死ぬ可能性があった。



「勇者? 中二病かお前?」



僕は軽く剣を振るった..


「馬鹿か? そんな所で剣を振ったって...えっ」


その場に居た、男5名は真っ二つになった。


当たり前だ、これは聖剣、人間など紙切れのように斬れる。



「ひっひっ..化け物が生き返りやがった..たたたた、たす」



「人殺しならプライド位持ちなよ? みっともない!」


人を殺す様な人間なら、自分が殺されても仕方ない...その位の覚悟が無いならやるべきじゃない



見逃すわけがない....軽く一振り..首が飛ぶ..



周りに居た者は全員奥へと逃げた。


都合が良い..僕は逆に外に向かった。


この要塞は岬に立っている..そして後ろは断崖絶壁だ。


なら、岬事叩ききれば、海に落下する...この高さから要塞事海に叩き込めば..生き残る事は無いだろう。



「聖剣よ力を貸してくれ」


凄い、剣と盾の錆が綺麗に落ち、美しい本来の姿が顔を出した。


そして、その剣を思いっきり岬に叩きつけた。


岬は簡単に罅が入り、そのまま要塞事海に落ちていった。


高さはどう見ても百メートル近くある..だれも生き残れないだろう..






「何が起きたんだ..地震か..」


「おい、要塞が落下して..逃げるぞ...」


逃げる場所も時間もない。


だが、その間もなく海に叩きつけられ..要塞は崩壊した..




これで、終わらせる訳には行かない..此奴らに命じた奴がいる..ならばそいつ等もどうにかしなければ..終わらない。




関西連合煉獄会、此処と 二つ橋家此処と話をつけなければ又同じ事が起きるかも知れない..



だからやるしか無い、だが皆殺しと言うわけには行かないだろう..そんな事をすればこの国が可笑しくなってしまうかも知れない。




そして、僕は関西に来た。



そして、関西連合煉獄会に公衆電話から電話をした。



「組長さん居ますか?」


「あん? お前誰だ?」


「関東地獄煉獄組のゆかりの 地掘腕尾って言います、アンタたちが関東に送り込んだ1000人はもう死んでいます」


関西連合煉獄会でも情報は入っていた。


連絡がつかないので調べたら岬事無くなっていた..そういう情報の報告を受けていた。



「貴様、爆薬でも使ったのかよ、極道の風上にも」


「僕はテロリストなんで極道じゃありません、報酬次第で戦争を仕掛ける戦争屋ですよ..それで組長に変わって貰えませんか?」



途中、何人かを得て組長に変わった。


「戦争屋とか言ったな? お前お金次第じゃ、こっちに着くのか?」


「着きませんよ...ただ、これから起こる事を予告しに電話しただけですから..関西サンシャインタワービルを破壊します..これで今回の戦争は終わりにして下さい..これ以上来るなら皆殺しにしますからね..」


「待て、冗談は..」



これで良い、まだ、建設途中の関西サンシャインタワービルは地上85階でショッピングモールも併設した巨大なビルだ。


ここを作る出資は二つ橋家..壊されたらかなり痛い筈だ..


幸い、今日は休日、余り人は居ないだろう...居たとしても二つ橋家や関西連合煉獄会の関係者..心は痛まない。



工事現場に入り込み、鉄骨という鉄骨を片っ端から切り裂いていった。


僕は万が一あっても聖なる盾が守ってくれるだろう。



途中、何人か人に会ったが当身を食らわせ、そとに放り出した、怪我位はしているが死にはしないだろう。


何本かの柱を斬った時にぐらつきを感じた..そろそろ良いだろう..僕はビルを後にした。




「何だ、組長が言うから見に来たが何も起きて無いじゃないか?」


「そりゃそうですよ、此処を爆破するなら、相当な爆薬必要ですよ..そんな量の爆薬はそう簡単に持ち込めません」



だが、可笑しな事にビルが揺らぎだした。


「気のせいか、ビルが揺れているような気が..」


「嘘だろう..ビルが、ビルが倒れてくる..本当に..本当に破壊されたのか」


土埃をあげて関西サンシャインタワービルは破壊された。





これで、手を引かないなら、今度は殺すしかなくなる..


聖剣と聖なる盾を「体にしまう」と僕は関西を後にした。



そして、これが元でこの争いは収束していった。





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