第55話 脱出..そして死(残酷な描写あり 注意)

私は今地下室に閉じ込められています。


「うーうーうっ」


猿轡をされ床に転がされています。


「そんな目で俺を睨むんじゃねーよ」


足で頭を踏まれているが縛りあげられているので何も出来ませんわ。


横には絵里香も居るが...メソメソしているだけなので凄く鬱陶しいですわ。


あの時、私は判断を見誤りましたわ。


私が一緒に捕まっても人質が二人に増えるだけでマイナスでしたわね。


そう考えたら逃げ出すべきでしたわ。



「何だ、その目はよー、そんな顔してられるのも今のうちだけだぜ? お前の実家が条件を蹴ったら、お前達は俺たちが自由にして良い事になっているんだ...まぁ到底飲める条件じゃねーからな..犯し放題にされるのも時間の問題だぜ..そして犯し終わって用済みになったら残酷に殺して首でも送りつけるかなぁ..」



馬鹿らしいですわ..そんな事は覚悟済みでしてよ..そうなる前に速やかに死にますから関係ありませんわね..精々私の死体でも犯して喜ぶ事ですわ...


ただ、気になるのは横の絵里香ですわね..多分この子は汚れてしまう前には死ねませんわね..今の話を聞いてますます泣いてますわ..


まぁ、今の私は自分が死ぬことで精一杯ですわね..



「兄貴、そいつらの安否確認に人が来たみたいです..兄貴を呼んできてくれって四宮の兄貴が..」


「そうか、今行く」



誰が来たのかしら、國本辺りですわね..ですが..救出は無理ですわ。


死ぬとしたら見張りが居なくなった今がチャンスですわ...



私は唯一自由になる頭を床や壁に打ち付けた..猿轡を噛ませられているし足も手も縛りあげられていてはこれしか方法はありません。



がつーん、がつーん、がつっ..


頭は頑丈ですわ..血が出てきていますし、痛いのに..なかなか死ねません..


私を見て絵里香が騒いでいますが、無視するしかありませんわ...どうせ死ぬなら綺麗な体で死にたいですわ..私の体に触れて良いのは翼様だけ...


がつがつがつ...



頭は朦朧としてますのに..まだ死ねません..


暫くして無理な様なら「顔を潰す」方に切り替えた方が良いかも知れません..顔が潰れた醜い女なら抱きたく無くなるかも知れませんわ。



横で絵里香が震えてますが構う余裕はありません..早く死なないとなりませんから...


私が死ねば、おじい様が必ず、皆殺しにして下さいます...地獄に落ちるが良い..ですわ...


しかし、詰まらない人生でしたわ...ヤクザの娘に産まれて碌に友達も出来ませんでした....


折角、好きな人が出来て、楽しいって思いましたのに..もう終わり..はぁはぁ..会いたいですわ..翼様..


がつがつがつがつ...がんがんがん..


まだ死ねませんの...翼様、翼様..翼様..死ぬ前に会いたいですわ...だけど..


「面会だ、3分時間をやる..お前何しているんだ..」


《嘘、翼様ですわ..最後に会えましたわ..これでもう思い残す事はありませんわ》


「約束が違います..無傷なハズではありませんか?」



麗華さん、流石..足手まといにならない為に死のうとしたんだ..


それに比べて、絵里香さんは泣いているだけか..



「これは、その女が勝手にやっていた事だ俺は知らねー」


頭はそうだ、だけど、それ以外にも明らかに怪我をしている..暴力を振るっていた証拠だ。


「嘘つきは嫌いですよ」


僕は手早く口を押えた、そのまま、反対側の手でチョキを作るとそのまま下から目に押し込んだ..これでこの男はもう生涯目が見えない。


そして胸にさしていたボールペンを飛び出している目の下から頭に届く様に押し込んだ..脳にボールペンが届いたのだろうか?


男は静かになった。



幸い、男はナイフを持っていた..これで麗美さん達の縄をほどける。



「大丈夫? では無いですね、その頭..ごめんなさい..遅くなりました」





「翼様、来てくれるなんて思いませんでしたわ...これだけでもう思い残す事はありませんわ..さぁ」



この人数相手では翼様でも無理ですわね..それなのに此処に来てくれた..そして此奴を殺したという事は..


私と死ぬために来てくれたのですわね..やはり翼様は他の男とは違う..



「麗美さん、まだ死ぬのは早いよ..命がけで僕頑張るからさ..でもそれが届かない時は..」


「解かっていますわ」



最後まで希望を捨てませんのね..ですが、それでも無理だった時は一緒に死んで欲しい、そういう事ですわね..ええっ喜んで死にますわ。




「ほら絵里香さんも行くよ」


「ひっひっ..ひっ人」


「どうでも良い..だけど此処で叫んだりしたら死ぬことになる..そんな事したら放っておくよ」


「いいいや....」



《ぱーん》 麗美さんが絵里香さんを引っ叩いた。


「いい加減にしてくれますか? さっきからピーピー煩いですわ! それに命がけで助けに来てくれた翼様に対してその目、許せませんわ」


「ひっ..ごめんなさい..」



ざっと見た感じ、この屋敷には物凄い人数が居る..一点突破それ以外に方法はないだろう..


《二人とも僕に静かについてきて》


《解りましたわ》


《はい》



幸い僕は「武器を持っていないガキ」そう思って油断している。


だから、まだ警戒されていない..


階段を上に上がるが見張りは2人しかいない...しかも片方はスマホで何やら遊んでいる。



《ギヤ2》



静かに後ろから近づき口を押えそのまま持っていたナイフで首を掻き切った。


もう一人がこちらに気が付いたがもう遅い..そのままナイフを胸に突き刺した。


運良く二人とも銃を持っていた。


一つを麗美さんに渡し、一つを自分で持った。


「キャーっ」



ただでさえ逃げ出せる確率が少ないのにこんな爆弾抱えていちゃ危なくて仕方ない..


「ごめんね」


僕は絵里香さんに当身を食らわせて気絶させた。


放って置けないので肩に担いだ。



「次に出くわす前に入口に急ごう?」


「はい..」



凄いですわ..惚れ惚れしちゃうわ..躊躇なく殺す姿..素敵ですわ。


しかも、あれは私を傷つけた事に凄く怒っていますわ..その証拠に最初の男は残酷に殺しましたわ..こんなに思われているなんて凄く幸せですわ。




ここからは時間の勝負だ、小走りで入口を目指した。



「人質が逃げ出したぞ」


気づかれた..パン...額に一発で当て殺した。


銃声が響いたから、もう隠れながらは無理だ..


「麗美さん、全速力で走るよ!」


「はい」



麗美さんがついてこれるギリギリの速度で走った。


そして、顔を合わせる度に敵を殺して殺して殺しまくった。


パン、パン、パン、パンパン、パン6発の弾で6人殺した。



麗美さんから予備の拳銃を受取り更に殺す..


麗美さんは..うん、凄いと思う..前の世界で僕は初めて人を殺した時は震えていた。


だが、震えもせずについてくる。


相手は銃を持っている者もいるが怖くない..麗美さんは殺す訳にいかないから避けて撃って来るし僕に対しても絵里香さんを避けようとしているからよけやすい..


パン、パン、パン、パン、パン、パン 同じく6発の弾で6人殺した。


だが、殺した相手の一人が銃を持っていたのでさらに追加。



パン、パン、パン、パン これで弾は打ち止め、ここからはナイフで戦わないといけない。



「居たぞ、貴様殺してやる..」


《そんな事言う位ならさっさと殺さないと..だから死ぬんだ》


喉から首にかけてナイフで切り裂いた..


「男は殺して構わない」


《今更か、遅い》



「はぁはぁはぁはぁ」


不味いな麗美さんがもう限界だ..だけど入口はすぐそこだ..



もうナイフも血糊で斬れない..



「入口が見えて来た..」


「ええっですが..」



十人以上が待ち構えている..


僕は絵里香さんを叩いて起こした..



そのまま、絵里香を下におろして突っ込んだ、


オーガを倒すつもりで殴りつけた、オーガのこん棒を避けるように避け殴りつける、後ろ側に二人を庇いながら入口に近づく。


倒しても倒しても追加で人が出てくる。


ようやく入口にたどり着いた。


外には見張りは居ない可能性が高い...


ドアのカギは掛かっていなかった..ここから二人を逃せば良い..


「ついたね、麗美さん、絵里香さんを宜しく..」


「待って、翼様は、翼様はどうなさりますの?」


「ここで食い止めるから早く逃げて..」


「そんな、それでは翼様は..」


「バイバイ..僕がした事が無駄になるから..早く.早く行って」




ここで私が戸惑っていたら、翼様がしてくれた事が無駄になる..



「必ず、生きて帰って来て下さい!」


「うん」



僕は2人を出すと内側から扉をしめた。


これで、此処を僕が守っていれば二人を追いかける事は出来ない。


逆に僕は此処から動けない。



さぁ掛かって来い..


少しでも時間を稼がないと..




ドガガガガガガガガガがガガガガッ...



「最初からこうすれば良かったんだ..チクショウ..」



《マシンガン..まだ終われない、今此処で倒れたら..追いつかれる..倒れる訳にいかない》



「何だ此奴、化け物か? たった1人で何十人も殺しやがって..しかも人質まで逃がしやがった..」



「まだ...終われない...」


「何だ、此奴」


ガガガがガガガがガガガ


「まだ倒れないぞ、此奴、だけどもう反撃して来ないぞ..」


「だったら、誰が倒せるか勝負だ..」



パン、パン、パン、パン..



ズガガガガガガガ



「まだ、倒れねーーぜ、だけど此奴もう肉片みたいじゃん」


耳は千切れて手足も千切れていた。


王子様と言われた美しい顔は、穴が空いて、目が飛び出し、下に落ち、口の半分は裂けて歯がむき出しで見える。



「此処は..とお..さない..」



ガガがガガガガガガッ  パンパンパン..



頭の半分が吹き飛び..脳みそが下に落ちた。



「とお、さ..ない..」



「化け物..こっちにくるな..」



死んでいる筈だ、頭を吹き飛ばして死なない人間なんていない..だが此奴は喋っている..



怖さで入口に近づく気になれない..


「これ...で..大丈夫..」



翼だった物はそのまま倒れた..








勇者翼...僕は駄目だ...君は僕の世界を救ってくれたのに..僕は..救いきってない...


だけど、僕なりに頑張ったんだ..これで許して欲しい..この世界で、天空院翼の名前を輝かせてあげれなくてごめん..




そこには、ただ、ただ、天空院翼と呼ばれたセレナトリスタンの肉塊が横たわっていた。


人にすら見えない程に壊されて。




「人質は失った、だがこれで戦争の口実は出来た..そう考えたら僥倖だ..ここまで殺されたんだ、口実は出来た、もう人質は必要ない..後は攻めるだけだ」



そして、守る事も出来ずに...



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