第52話 生徒会長と妹

「ごきげんよう! これはちょっとしたものですが家族でお召し上がりください!」


やっぱり、この人も来るんだ...


「有難うございます、所で二条院会長がなんで私の家にくるんですか?」


「それは、生徒との親交を深めようと思いまして..」



嘘に決まっている、だって今迄個人的な付き合いが一切ない。


それなのに、こんな高級チョコを持ってくる意味が解からない。


これ一粒3800円の高級チョコ、それが24個入っている..まぁ麗美さんには全然敵いません..



「そうですか? だったらこれからどうしましょうか?」


わざわざ家にくるなんて、お兄ちゃん目当てに決まっている..


それ以外の理由で「麗しの生徒会長」が家にくる訳が無い。



「せっかくですから、ご家族にご挨拶でもしようかと思います」


「そうですか? お兄ちゃんなら居ませんよ..お母さん、生徒会長がきたよー」


「えっ翼さんは居ないんですか?」


「はい、お兄ちゃんは早朝から天上家に剣の稽古にいっています」



ほら顔色が変わった、やっぱりお兄ちゃん目当てだよね。


「そうですか? それは残念です」


「あらっ、その方も翼のお友達? お時間があるならコーヒーでも飲んでいきませんか?」


「せっかくだから頂きます」



《ねぇ、まひる、最近の翼って凄くモテるのかしら? 可愛い子ばかり来るわね!》


お兄ちゃんは勇者なんだ、だから当たり前だよ...とは言えないよね..


《うん、凄くカッコ良くなったからね、お兄ちゃん》


《そうよね》



「あの、どうかされましたか?」



「どうぞ、上がって下さい」





「それで、二条院会長はどうして私の家に来たんですか?」


「それは、さっきも言いましたように生徒との親睦を深めようと..」



「本当の事を教えて下さい..お兄ちゃん目当てでしょう?」



「それは..」


「麗美さんも天上心美さんも、心に正直でしたよ? 会長は違うんですか?」


「私も..そうです」


「そうですか! 頑張って下さい」



「あの...ですね」


「会長、コーヒー冷めちゃいますよ..どうぞ」


「頂きます..」



「お兄ちゃんカッコ良いでしょう?」


「はい、凄くカッコ良い...と思います」



そりゃ、そうだよね、お兄ちゃんは勇者なんだから、当たり前だよ。



「それじゃ..会長そろそろ学校に行きましょうか?」


「まひるさん、一緒に行きましょう? 車の方が楽ですよ!」


「それじゃ、お願いします」



「お母さん行ってきます」


「お邪魔しました」




最近まで、絵里香様の事を凄いと思って居たけど..もうどうでも良いと思う。


だって、絵里香様の家から帰ってきたお兄ちゃんは、凄く疲れた顔をしていた。


お兄ちゃんにとって誰かと仲良くなるのは..多分、凄く楽しい事なんだと思う。


麗美さんの家に行っても、朝から迷惑な位、天上家に連れて行かれても楽しそうに話す。


実際に裕子ちゃんや恵子ちゃんと一緒に居ても笑顔だ。


だけど、二条家から帰ってきた時は、凄く疲れた顔をしていた。


だから可哀想だけど..絵里香様は無いと思う..ご愁傷様..


まだ、裕子ちゃんや恵子ちゃんの方が望みがあると思うな..


それに、あんなに疲れたお兄ちゃんは余り見たくない...だって王子様の様な笑顔だけど少し曇るんだから..



「絵里香会長、お兄ちゃん何かあったんですか?」


「どうかされたのですか?」


「いえ、絵里香会長の家から帰ってきたお兄ちゃん、何だか疲れていたから気になりました」


「ごめんなさい、家は家族が特殊なので..本当にすみません」



《はぁ..ただでさえ、私は出遅れているのに、おじい様に、お父様に、空お兄さまに陸子お姉さま..ハンデがあり過ぎます》


「何があったのか気になります..」



絵里香からまひるはおおよその事を聞いた。



はぁ..これは駄目だと思うな..


お兄ちゃんは勇者だったから、多分、貴族に嫌がらせされた経験もあると思う(まひるの妄想です)



「それでね、まひるさん、私の味方になってくれませんか?」


「なんでですか?」


「何でって、それは...そうだ、もし味方になってくれたら、姉妹の誓いをしても宜しくてよ!」


姉妹の誓いか..以前の私なら喜んだんだろうな、


気に入った上級生と姉妹のように付き合う..うちの学校に古くからある風習..


生徒会長は女の子にもモテるから、かなりこの申し込みもあるらしい..全部撃墜だけど..


「すみません、お断りします!」


「何ででしょうか?」


「会長はお兄ちゃんの為に二条家を捨てる覚悟はありますか?」


「そこまでの事なのでしょうか?」


「普通はそこまでじゃないと思います、だけど!お兄ちゃんの事を好きな女の子は、その位の事をあっさりする位好きだと思います!」



普通は此処まで考える事じゃない...だけど、麗美さんも、天上心美も、裕子ちゃんも恵子ちゃんもお兄ちゃんを確実に1番に考えている。


それは見ていて解かる。


それに、お兄ちゃんの居場所がちゃんとある。


麗美さんの家族がヤクザだと知った時はショックだったけど、お兄ちゃんに聞いたら凄く楽しそうだった..ちゃんと居場所がある。


天上心美の家族は剣道ばかりで頭が可笑しいけど..お兄ちゃんはいつも楽しそうに話している..だから居場所があるんだ。


裕子ちゃんや恵子ちゃんの家族は解らないけど...多分、あの二人なら家族と揉めたら、あっさり家族を捨てると思う。



《確かにそうかもしれない..》



「確かにそうなのかも知れませんね」


「はい、だから、お兄ちゃんに真剣になれない会長にはお力になれません!」



二条って何なのでしょうか?


今迄、二条の名前に誇りを持っていましたけど、足を引っ張るばかりです。



「解りました..覚悟を決めます..二条よりも何よりも翼さまを優先する事を約束します」


「そうですね、頑張って下さい」


「何でしょうか? その反応は! 一代決心したのに...」


「恋愛に真剣になるのは当たり前だと思います..会長は今ようやく同じ土俵に立ったそれだけです」


「そうですね」



《何だか、現実を思い知らされた気がします...ですが私は諦めません》



絵里香様...ご愁傷様..お兄ちゃんは勇者なんだよ?


妹の私からみても最高のお兄ちゃんなんだから..居場所一つ作れない、疲れた顔をさせる..貴方をお姉ちゃんと呼ぶ事は無いとおもう。



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