第48話 【閑話】勇者の死

「楽しい人生だった」


異世界に来て勇者になった。


女性が醜いのには困惑したが、自分の周りの女性は全員が献身的に尽くしてくれた。


女神に見えるようになり、全員が同じに見えるようになってからは戸惑いもしたが、見分けがつかなくなるような事も最初だけだった。


誰もが憧れる勇者という名の地位。


使いきれない程の莫大な財産。


街を歩けば誰もが好意的に接してくれる。


前の人生ではどんなに頑張っても手に入らないだろうな。



全てに見送られながら...俺は死を迎えようとしている。


年齢86歳..よく生きたもんだ。


そして、妻たちは美しい女神の姿のまま近くにいる。


先に死ねて幸せだ。


この中の誰かが死んだら、俺は暫くは立ち直れない。


皆んなに囲まれて死ぬ...これは凄く幸せな事なんだ..


「皆んなありがとう..この世界全てに祝福を..」



「「「「「「勇者様」」」」」」



うん、幸せだ..



こうして異世界から来た勇者 翼は死んだ。


その後、勇者翼の遺体は 聖剣と聖なる盾と共に埋葬された。


その埋葬された場所には花が沢山置かれ。


毎日の様に誰かがお参りにきていた。




「戻って来られましたね」


「有難うございます、女神イシュタリア」


「勇者として世界を救って貰って有難うございます..心から礼を言いますよ」


「お礼何か要りません、寧ろお礼を言いたいのは私です、素晴らしい人生を有難うございました」


「そうですか..満ち足りた人生で良かったです」


「女神様にお聞きしたい事があるのですが?」


「何でしょうか?」


 「セレナという貴族の少年はその後どうしたのでしょうか?」


「気になりますか?」


「はい」


「詳しい事は伝えられませんが..それなりに償いはさせて貰いました、案外幸せになっているかも知れません」


「そうですか..それなら良かった」


「もう心残りはありませんか?」


「ありません」


「それでは天国迄私がいざないましょう」



こうして 勇者翼は天へと召された。























だが...


私がイシュタリアに見えたのですね。


私はセルガ..イシュタリア様に仕える女神の1柱..そして姿形はイシュタリア様に似ていません。


女神にはそれぞれが司る仕事があります。


私の仕事は功績のあった者を天国へいざなう事。


この仕事は上位の女神であってもする事は出来ません。


だからイシュタリア様でも導きは出来ないのです。



イシュタリア様を信仰する者が行う「女神パラダイス」 死んでもその効力は消えないのですね..


信仰の力とは本当に凄い...本当にそう思いますよ。



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