第42話 1番でなくとも
さすが麗美お姉さま、入る店が違います。
ファミレスでなくて純喫茶、お話しするならこういうお店かホテルじゃないと煩くてたまりません。
麗美お姉さまは入って注文をしました。
「おすすめのホット4つお願い」
「畏まりました」
先に注文して自分が払う立場になる。
さらっと出来るのがかっこ良いのです。
「そういえば翼くんって嘘つきよね」
「どういう事かしら心美さん、いきなり翼様を嘘つき呼ばわりするなんて」
何のことなのかな、だけど凄いわ今一瞬、麗美お姉さまの顔つきが変わりました。
この顔を見た人はすくみあがるのに、ここでは全員スルーですか..
「僕、何か心美さんに嘘をついていたかな?」
「ええ、ついていたわ、馬鹿みたいな事いっていたのに掲示板に名前があったわ..成績上位者として」
「当り前ですわ、翼様なのですから」
「だけど、翼くん、授業についていけないほど頭が悪いって言ってたよね? それが何で学年上位なのかなと思って」
うーん確かにそうだ。
「結構勉強頑張ったんだよ」
「だけど、翼くん、確か凄く、そのね」
「うん、確かに昔はかなり馬鹿だったかな?」
もう忘れたいんだけどね。
「それが学年で2番、変わりすぎだよ」
「ちょっと待って心美さん、翼様ってそんなに馬鹿だったの」
「うん、私以上にね」
「私は凄く頭が良い姿しか見てませんわ」
「最近、凄く頑張って勉強したから..確かに少し前の僕は後ろから数えた方が早かった位...だね」
「あの、翼さん..それって学年でビリに近い成績から2番になったという事なのでしょうか?」
「まぁね...」
《余り話したくない話なんだけどな...》
「どのように勉強されたのですか?」
「たいしたことないよ! 最初は9時間、剣道始めてからは6時間ひたすら勉強しただけだからさ」
「そんなにされたのですかね」
「この位、勉強しなくちゃ上は目指せないから..正直、今までが遊びすぎたと反省しているよ」
何なんでしょう..この人は、私が望むべき姿じゃないでしょうか?
「それで、天上さんや麗美様とお付き合いされているのですか?」
「まさか! まだまだ高嶺の花だよ...二人に愛されるにはまだまだ足りないよ..」
「何を言っているのかな...私の気持ちは伝えたはずよ、それにおじい様に勝てるのに足りないなんて可笑しいよ」
「そうですわ、うちは家族ぐるみで翼様を気に入ってますのよ? 勿論、私もですわ」
「あの、天上さん聞いても良いでしょうか?」
「何かしら?」
「天上さんは噂では、自分より強い人しか付き合わない...そう聞いた気がするんですが..」
「もしかして、翼くんの剣の腕前の事? 私はおろかおじい様でもかないません」
「冗談ですよね...天上さんのおじい様は剣聖なんて呼ばれる凄腕の剣道家ですよね、からかってますよね?」
「本当ですわ、何しろ翼様は素手で白熊を倒せるのですわ..凄いですわよ」
「あらっ 麗美さん、わ.た.し.そ.れ初耳なんですけど」
「わざわざ言いませんわよ」
嘘、いくら何でもありえません、剣聖より強く、白熊すら倒して頭も良くてかっこよい..
だが、あながち否定もできません。
あの、麗美様が凄く優しい顔をしています、さらにあのご実家が認めるという事は只者の訳もありません。
話し半分にしても凄い方なのでしょう!
そして努力家でもあります。
考えれば考えるほど欲しくなります。
今まで人なんか好きになりませんでした。
だって私はあくまで選ぶ側ですから...
だけど、この方が欲しいなら..選ばれる側にならなくてはいけません。
だって、どう見ても麗美様に心美さん、この二人は確実に愛していそうです。
そこに私が加わったら..多分1番ではない筈です。
そして二人は強力です...
それでも、それでも...私は..
この人に...惹かれます。
「翼さん...おじい様に会って下さいませんか?」
「何で?」
だって二条院以上に輝く光を見つけてしまったんですから。
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