第41話 王子なんている訳が無い

「王子様がいる、何を言っているの?」


「最近、街で王子様みたいな男性が居るんです..あの方なら絵里香様とつり合いがとれるかも..」


やはりこの子もその程度..私の何を見ているのでしょうか?


少しばかり外見が整っていようがそれだけじゃ意味ありません...


ただ、見栄えだけで良いなら、お父様にお願いすればデートのエスコート位なら芸能人にやらせられます。


「外見だけじゃ意味は無いのです!」


「ですが、あの天上心美がご執心のようなのでもしかしたら中身も優れた殿方かも知れませんよ?」


天上心美さんですって、あの方は確かに素晴らしいですね。


残念ながら日本一はいつも逃していますが、恐らく日本で2番目の女剣士でしょう。


一心不乱の剣に打ち込む姿は本当に美しかった。


もし、彼女が男なら、私の心を捕らえたかも知れません。


「そう、天上心美さんが...それは興味ありますね..」


「でしょう? 天上心美の好みは強い男、ならばかなりの凄腕かも知れませんよ?」


噂では剣道の達人以外眼中には無いって言っているらしいわね..なら一点豪華主義の素晴らしい殿方なのかも知れませんね。


「それなら見てみたいですね」


「隠し撮りですが..」


「あら、スマホの写真があるのね..」


何なのよこれ..人間なの? 合成じゃないのよね..見た目は完璧に王子のようにしか見えない。


しかも、それがお化粧とかで作られたものじゃない..ナチュラルで綺麗..まるで少女漫画のキャラクターが飛び出した。


そんな感じだ。


「どうですか?」


「外見は..良いじゃない!」


良いなんて物じゃないわ..凄すぎよ、凄すぎ..私が普通の女の子ならこれだけで告白してしまうわ...


だけど、だけど、私は二条院なの..それだけじゃ駄目なのよ..


「そうでしょうね...それで良かったら生で見に行きませんか?」


「そうね..」




連れられてきた。


遠くから隠れて見ている..なんで私がこんな事しなくちゃいけないのかしら?


「きました..絵里香様」


流石に、綺麗だわ..あれっ何であの方までがいるの?


「絵里香様 どうかしました?」


「何であの人がいるの..」


「天上心美..」


「違うわ、後藤田麗美様、麗美様が何で..」


「絵里香様?」


「もう帰って良いわよ..」


「どうしたのですか?」


「良いから帰りなさい..」





何でこんな所にいるのでしょうか?



「麗美様..お久しぶりです!」


「貴方は絵里香じゃない..本当に久しぶりですわね、こんな所でどうかしましたの?」


「いえ、近くまで来る用事がありましたので」


「そう、そうだ、翼様、心美さん、お願いがありますの!」


「嫌よ! 練習を無くして、その子も含んでどっか行こうって言うんでしょう?」


「ええ、そうですわ」


「だったら、貴方だけ行けば良いじゃない? 私は翼様と練習するわ」


「友達でしょう? お願いしますわ..」


あーあ..これズルいわ...また友達持ち出して。


「解ったわ、友達だもの仕方ないわ」


「翼様も宜しいでしょうか?」


「僕は別に構わないよ」



麗美様のこの顔..私は知らない、いつも狼のようで孤高が似合う麗美様。


それがこんなに優しそうな顔をするなんて..天空院翼...何者なんでしょうか?


しかも、天上心美も満更で無さそう..まさか二股なの?



私は観察するように見ます..目が合ってしまった..これは魔性の目..気が付くと吸い込まれそうになる。


今迄、同世代で自分より上、そう思えるのは麗美様だけでしたが..この方も同じ..


いや、間違いよね..




「ここで良いかしら」


「ええっ構いません」



せっかく時間があるんだから..見極めてあげる。




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