第39話 白熊倒したのち

今、僕は凄く困っている..


「翼くんは凄いな...あんな技何処で身に着けたんだ! 白熊に勝てるならゾウやサイにも勝てるのかな?」


竜星さん..そう言う目で見ないで欲しいな..これ勇者や聖女を見る子供の目に近いよ..


「そうですね、やって見ないと解りませんがゾウやサイとも戦ってはみたいですね..」


《身に着けた方法は誤魔化さないと》


「だったら、今度..」


「駄目ですよ...動物園は..あの白熊可哀想でしたよ! 戦うなら野生じゃないと意味無いですから」


「そうだね、確かにそうだ..そうだ、だったら今度俺と一緒に海外に行かないか? どうだろうか?」


「あの、僕は学生ですから、そんな海外に行くお金なんてありませんよ」


「何を言っているのかな? そんなのは俺が出すから気に何てしなくて良いんだよ..」



《何でしょうか..あの態度、わが父ながら何て言う変わり身なのかしら?》


《まぁ気に入ったみたいだから良いんじゃないか?》


《お嬢、反対より良いじゃありませんか?》




「翼様、ですがあの体術は一体なんですの? 私も剣術以外は知りませんわ」


「俺も知りたいな..あれまるで格闘マンガの主人公みたいだった」


《これは誤魔化すしかない..どうしようか? そうだ....あれだ..あれ》



「光纏という鉄心さんが使う技の応用です」



「本当にあったんだ..光纏、あれは嘘じゃ無かったんだ..凄いぞ翼君」


「お父様、それって何ですの?」


「竜星、それは一体何なんだ!」



「究極の武..光纏、気を体に纏わせ神の様な力を振るう...正に人でありながら神に等しい力を引き出す、剣聖、鉄心の技」


「冗談ですわよね..流石に..気とか神とかありえませんわ」


「本当ですよ、あんな物そこまで大したものじゃありません」



「あのさぁ..剣聖である鉄心が生涯をかけて編み出した技が大した物じゃないのか?」



《どうだろうか? 僕は3年位で出来るようになったが..この世界じゃ気そのものを扱う人が居ないからな》


「そうですね、才ある物が2年修行すれば出来ると思います」



《それって鉄心をして才能がない、そういう事なのか? 》



「そうか、君は凄いよ..」


《正に武蔵..いやそれ以上の天才としか思えない...よく考えたら素手で白熊倒したんだからそれ以上か?》



「お父様、いい加減に独占しようとするのは辞めて下さらない?」


「別に良いじゃないか? 翼君、卒業したら俺の所に来いよ、一応ちゃんとした企業だから」


「竜星、それは喧嘩を売っているのか?」


「いや、親父違う...だけどヤクザよりうちの方が良いかなと思って、裏では企業舎弟だけど、名前が通った会社だから両親も安心じゃないかな..」


「ほう、それは組よりお前の会社に入った方が幸せ、そう言いたいのか?」


「そりゃそうでしょう? 一応うちは上場会社だから」


「うちだって代々続く組じゃないか?」




「翼様、少し散歩しませんか? 三人は放って置きましょう!」


「その方が良いかも知れませんね..」




「私は何も聞きませんわ..正直知りたいですが、翼様お困りのようでしたから」


「そうしてくれると助かります」



裏家業の癖にお父様もおじい様、國本まで理性を無くしすぎですわ、訳ありの人間に根掘り葉掘り聞かないのが仁義じゃ無かったのかしら?


この歳で あのような事が出来て、此処までの考えをお持ちになるという事は、絶対にそれなりの事情がおありの筈ですわ。


だって、今迄、誰にもバレない様に隠して生きてきたんですから17年も..それをずけずけとよく聞きますわね..


「それで、この様な家族ですが..その.ね..えーとお付き合いして頂けますの...?」


「面白い家族ですね..楽しそうで良い家族だと思いますよ!」


《面白い? この状況で..そんな事言えるのは翼様だけですわよ》


「そうですか? 面白いですか、そう言って頂いたのは翼様だけですわ」


《この人は、私だけでなく、このコブのような家族も気に入ってくれたのですね》


「だって凄く居心地が良いですよ」


《よく考えたら剣術馬鹿娘の家族と普通に..いや可笑しな付き合いしていましたわ..気にする必要は無かったですわ》



「だったら何時でも遊びに来て下さいね..」


「そうさせて貰うよ」




「何をいっているのかな翼君は、今日はすき焼きを用意したんだからまだ帰らないよね?」


「宴を用意するって伝えた..まぁそこのバカ息子がやらかしたから少し遅れたが..」



「すいません、それじゃご馳走になります」



ここは凄く居心地がいいな...



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