第29話 【閑話】 交際
「お父様、今日、天空院翼さんに会いましたわ」
「それでどうだった? あの親父が國本が薦める男は!」
「本当に宜しいのですね? 私としてはこの話は棚ぼたですわ! てっきり野蛮なタイプだとばかり思っていたら..王子様みたいな方でした」
「本当なのかそれは?」
「はい、確実に関東地獄煉獄組とは正反対の存在ですわ..あの方と付き合うという事は私は堅気の世界で生きて良い、そういう事でしょうか?」
よっぽど気に入ったのか? ここまで饒舌な麗美は初めてだ。
「そういう事ではない..そう聞いているが、親父からはあの男なら組も孫も任せられる..そう言っていたが..」
《どういう事なのかしら? まさかあの容姿で強いというの? ありえないわ》
「それは、翼さんが、國本やおじい様の言う、男の中の男、そういう事なのかしら?」
「そうみたいだな、ただ、父さんはその翼という少年を知らないんだ...どんな男なんだ!」
どんなもこんなも、王子様以外ありえませんわ、産まれながらの高貴な身分そう言われても信じますわ。
それの何処にこんな男臭い、任侠なんかがありますの?
「王子様、貴族、そういう感じの方ですわね..一目見ただけで気持ちの全てを持っていかれる、引き込まれるそんな素晴らしい方ですわ」
「それは麗美は気に入った..そういう事で良いのか?」
「ええっ勿論ですわ...あの方で良いのであればお話を進めて頂いても構いませんわ、そうですわね、婚約位までなら直ぐにでも..」
あの気難しい麗美が此処まで気に入るなんてな、しかもよく見るとほんのりと顔が赤いじゃないか?
「それがな、力関係でそこ迄でなく、友達になって欲しいと親父が頼んだようなんだ」
《あのおじい様が頼む..そんなの信じられませんわ!》
「何だ竜星に麗美、ここに居たのか?」
「おじい様に國本..」
「どうした麗美、そう言えばもう天空院には遭ったのか?」
「はい、早速本日挨拶して参りましたわ!」
我が孫ながら解りやすい..顔にでているわい
「そうか、そうか、それでお眼鏡には叶ったか?」
「はい、おじい様、麗美は物凄く気に入りましたわ!」
「そうか、だったら頑張って口説く事だ、あの少年に限り、全てを許す」
「親父、それはどういう事だ?」
《可笑しすぎるぞ、麗美に関しては俺以上に煩い親父が..何故だ》
「言葉の通りだ、相手が 翼に限り何をしても構わぬ、普通に付き合うも良し、何だったら体を使って既成事実を作っても良いぞ」
「あの、おじい様..本当なのですね? いままでデートすら許さないと言っていたのがどういう事ですの?」
「正直、気に入った、どうせいつか孫娘を任せるならああいう男に任せたい..そう思っただけだ」
「親父、ちょっと待ってくれ、麗美から聞いた感じだと組なんて入れられそうもない子じゃないかと思うのですが」
「そんなたまでは無いな..もし入れるなら見習いはおろか組員飛び越して幹部、お前が継がないなら飛び越して組長でも構わんな」
「あれは良い..もし入ってくれるなら安心して引退できる、俺の後釜、若頭からスタートって所ですかね」
「あの、親父、どうしても信じられねー..國本以上じゃ無ければ交際は認めない、そういうはずじゃ無かったんじゃないか?」
「何を言っておる! そんなの当然満たしておるわ」
「じゃぁ、一回、國本とやらせてその結果次第という事にさせて下さい」
「そんな事は出来ないな..」
「やはり満たして無いんじゃないですか?」
「そんな事したら國本が殺されるわ..」
「國本?」
「絶対に勝てやしません..マシンガン使っても勝てる気がしませんぜ」
「「冗談だよな(ですよね)」」
その後、話が進みこれでもかという位上機嫌な麗美が居た。
その笑顔は今まで見た事無い位晴れやかな顔だった。
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