第26話 小さな敵 を大きく倒す
今日僕は 健司という先輩に呼び出しを受けた。
横で他に2人居てニヤニヤしている。
この手の事は後を引くと面倒くさいのでちゃんとしなくちゃいけない。
「お前さぁ調子に乗りやがってムカつくんだよ..この前も邪魔しやがってよぉー」
この前、女の子を助けた事を根に持っているのはありありだ。
「お前がちょっとばかし強くてもよ..俺の後ろにはマッドドッグがついているんだぜ..」
《マットドッグって何だろう?》
「マットドッグって何でしょうか?」
「お前、舐めてんの? 県下最強の喧嘩チームを知らねぇ筈が無えだろうが!」
《成程...有名な半グレ集団だ..しかも裏ではヤクザと繋がっているとかいう奴らで100人以上いるという奴らだ》
「それで、僕にどうしろと?」
「とりあえず、土下座しろ!土下座だ」
「断ったら?」
「お前、最近、女にモテるみたいじゃん? あの中の誰かが攫われたり、不幸な目に遭う..それだけだ」
《汚いな、女の子の名前を明かさない事で守れないようにしている...仕方ない..》
僕は土下座をした。
これは別に辛くない...貴族って生き物は腹芸の一つも出来なくてはならない、都合の悪い時は靴だって舐める。
但し、この借りは安くないぞ。
「これで良いか?」
「ああっとりあえずはな、明日から毎日 2万持ってこい、それで勘弁してやるよ!」
「健司、俺たちの事忘れているぞ!」
「じゃぁ、負けてやって明日から3万な! 持ってこなかったら知らねーぞ!」
「解りました..」
「健司、お前どうしたのよ? ただのオタク締めるのにさぁー態々俺たち迄呼んでよー」
「健司くん、何か弱くなっちゃった? ボクシングで一発だろうに..」
《やっぱり気のせいか? 翼みたいなオタクが強い訳ねえよな》
「俺がどうにかしてたみたいだな..まぁ、金も入るし良いんじゃね!」
「持ってこなければ、智子か彼奴の親しい女に不幸になって貰えばいいさ!」
「それで、翼がわりーぃんだって言ってボコるか、輪そうぜ!」
「良いなそれ、3万なんてどうせ1日2日しか無理だろう? そうなるの確定じゃん」
「ははははっ 健司くんはそうじゃなくちゃな..」
さて、どうするかな?
答えは簡単だ、上を潰せば良い..下から叩いても無駄なのは解かっている。
昔、領内に巣を食っていた 盗賊ギルドを潰した時に父上がしたのと同じ事をすれば良い。
一番、頭って誰だ..マッドドッグの頭か? いや、それをどうかしてもヤクザが出てくるんだよな? この街を仕切るヤクザ? いやそれだって下部組織だな....
スマホで調べた..一番の頭って考えるなら此処だ。
広域暴力団 関東地獄煉獄組に仕掛けなければいけないのか?
構成員が8千人...全部でこれだけだとして本家には何人居るのか?
まぁ、やるしかない...
人数が多いな..武器位は必要かな..刀や剣は殺してしまうから駄目だろうな..
仕方なく、僕はホームセンターで短い物干しざお(ステンレス)1本と鉄の無垢の棒1本を買った。
そして1時間後、僕は組事務所前に居た。
「天空院 翼ですが、組長さんにお話しをしに来ました」
「はぁーガキがくる所じゃねぇーぞ..あっちに行きやがれ..」
「そういう訳には行かないんですよ!」
「うるせーな、あっちに行かないんなら痛い目に遭わすぞ、このガキが..」
「そうですか? ならば仕方ありません!」
「はぁ?」
《ギア2》
僕は体に気を回すと、そのまま男の後頭部に手刀を叩き込んだ。
「うげっ」
男は一言だけ声をあげるとそのまま気を失った。
だが、流石は暴力団..すぐにそれに気が付いた..
「お前、何しているんだ..」
流石はプロ..懐に手をいれている...手には多分ドスを持っているのだろう。
だが、残念だ、前の世界の男ならもう攻撃に入っている..甘いな。
僕は手に持った、物干し竿で横殴りした..男は簡単に飛んで行った。
正直、死なないように手加減する方が難しい。
「ヒットマンだ..組長をお守りしろ」
奥から声が聞こえた..
「何だガキじゃないか?」
ドキバキ!
「気をつけろ、此奴ただのガキじゃねえぞ!」
ドキバキ!
何だ此奴ら、鉄心さん所か巌さんより遙かに弱いじゃないか?
これで良く暴力のプロを名乗れるな...前の世界なら、恐らく銅級冒険者でも狩れるんじゃないか?
人数だけは凄く多いな..ゴブリンみたいだ..もう20人は倒したのに..まだぞろぞろ出てくる。
「はははっガキの癖にやるじゃないか? 組長に合わせろだ?ちょっと痛い目にふげっ!」
不意打ちも仕方ないだろう? だって此奴 銃を持っているんだから。
バンッ..
ようやく撃ってきたな..だけど本当の銃って紙ピストルみたいな音だ..
だけど、銃口さえ見ていれば当たらない..はっきり言ってエルフの弓やゴブリンの矢の方がまだ怖い..
「ここまでしたらお前はもう終わりだ、ガキだからって手加減はしねえ..死ね!」
死ねと言いながら優しいね..狙いが肩だ..
だから感謝の意味を込めて..思いっきり殴った...勿論、死なない様に..
「まて、お前はヒットマンなのか?」
「違う、この組ゆかりの者に大事な物に手を出すと脅されたから話しをしに来ただけだ!」
「そうか、儂はこの組の若頭をしている國本というものじゃ..話を聞こう..それからじゃ..」
「おい、國本..儂も話を聞こう..なにやら誤解があるようじゃからの..」
「組長..解りやした!」
結局、この後応接室に通して貰った。
「儂がこの組の組長の後藤田辰尾 だ」
「俺が若頭の國本英雄じゃ..」
「天空院 翼です」
《この人達は..人を殺した目をしているな..前の世界で言う盗賊並みには強い》
「ほぉーなかなかの目をしておる..」
「その齢でそんな目が出来るのか?」
「それで、うちの若い衆がお前に何をしたというんじゃ?」
僕は今朝の事を話した。
「儂は盃を躱した組員は全部名前を知っておるが、そんな奴は知らんぞ! 國本は知っておるか?」
「俺も知りません、組長..」
「間違いじゃ無いのかね?」
更に詳しく話した..
「はぁ..うちの傘下の弱小組織 目羅組の可愛がっている半グレ、マットドックの可愛がっている学生? 知らんわけじゃな」
「そんな奴、俺だって知らん..それが何でこうなるんだ」
「はぁーそんなの当たり前だろう? 健司の裏にマットドックが居て、その後ろに目羅組がいる、そしてその頂点が此処だ!」
「たしかにそうじゃな? それで手を出さない様に儂に頼みに来たのか?」
「おめえ、逆恨みしやがって、まぁ良い、此処まできたお前に免じて、マッドドックと揉めても目羅組に出ない様に言って置くそれで良いだろう..組長も」
「そうじゃな..男としてお前を建ててやろう」
《本当に甘いな..》
「そういう事じゃない...もし僕の大切な者が傷付けられたら、あんたを殺す..そう言いに来ただけだ!」
「ガキが調子にのるんじゃねぇ..組長を殺すといわれりゃ..殺るしか無くなるんだぞ..解かっているな」
「こちらも大切な者に手を出すと言われちゃ...死ぬ気でやるしかなくなる..だけど、僕はそうしたくないんだ..」
「まぁ良いじゃないか? こんな馬鹿に殺されるのは儂は嫌じゃな..その健司とやらをどうにかしたらええんじゃろ!」
「そうしてくれると助かります..本当に」
《ようやく笑いおった》
「絶対に手を出さない様にしてやるが、文句はいうなよ!」
「言わないですよ...してくれるならね..」
「それでじゃな、儂には孫娘がおるんじゃよ...良かったら友達になってくれんかの?」
「組長、正気ですかい?」
「ああっ、あ奴も友人を欲しがっていたから丁度良いじゃろう!」
「えっ..友達ですか?」
「そうじゃ.. お主派手に踊ってくれたの? まだお主は被害に遭っておらんじゃろう? こっちはどうじゃな?」
「組員が怪我をして何人かは病院送り..壁は壊れて高い花瓶も真っ二つ..組長の願い位聞いても良いんじゃないかなぁ..」
「それでチャラにしてやるぞ? どうじゃな?」
「解りました」
確かにそう言われれば断れない...
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