第25話 【閑話】女神の罰
私は女神イシュタリア..これは私の罰だ、甘んじて受ける事にします。
5人の人生を狂わしてしまったのだから仕方ありません。
1番の被害者は「ジョセフィーナ姫」
勇者、翼やセレナじゃ無いのかですって?
違いますよ? ジョセフィーナです。
だって、彼女は「この国、いやこの世界で一番美しい人」なのですから。
婚約者のセレナは、恐らくこの世界でも有数の美男子...
それなのに、そんな幸せが壊されて、「凄く不細工な 勇者 翼」の物になったんだから..
確かに 勇者翼の基準では「不細工なブス」でしょうね? でもこの世界では最高の美女なの..そしてお相手は美男子しかいない世界の男がよりどりみどりだったのよ..
彼女に起きた事を私が代弁するなら
「王子様のように綺麗な男性と別れさせられて...オーク並みに不細工な男と結婚させられた挙句..ブス呼ばわり」
そういう事なのよ? 今迄、世界一の美少女と扱われていた彼女が...悲しくて仕方ないと思うわよ..
しかも、そんな美しいと言われた彼女が気持ち悪そうに見られながら 抱かれる訳..地獄よね。
2番 3番の被害者は 聖女と女魔導士だと思うの。
間違いなく彼女達も美少女なのにね
国を救って貰ったから「凄く不細工な 勇者 翼」の物になったんだから..
間違いなく美少年がよりどりみどりなのにね...
まぁ、勇者翼やセレナも確かに被害者ね..この辺は皆さんご存知でしょう?
さて、私の償い罰は... 「物凄ーく不細工な 翼みたいな男とイチャイチャしている自分の姿を見なければいけない事よ」
前の2人は良かったわ..最初の一人はまぁ気に入らないけど..狂ったような顔をして面白かったの。
二人目は、私の事が本当に好きだったのね..女神じゃなければ添い遂げたい位良い人だった。
だから普通に見てて楽しいのよ。
私にそっくりな女性に告白して、愛を囁き、子供も作って、うん幸せな自分の一生をみた感じ..多分人間だったらこんな人生なんだと幸せな気分になったわ...
今回は、不細工な男と暮らしている自分を見させられる訳ね...
でも仕方ないわね..私の持つ一つの世界を救って貰ったんだから...
不細工な男と愛し合い、子供を作って一緒に人生を歩んでいく..汚された私をみていく事..多分これが私の償いだわ..
屈辱のテスト返還..そして彼女が見た物は..
僕にとっての辛い時間が来た。
そう、テストの返却だ。
空いた時間をフルに使い、勉強しているが今現在は、中学一年生位の実力しかないだろう。
そして今日は幾つかの教科で先日行われた抜き打ちの小テストが帰ってくる。
そして、何時もの屈辱がはじまるんだ。
「天空院くん、テストどうだった?」
怖い笑顔で氷崎さんがくるんだ。
正直、凄く恥ずかしい..こんな馬鹿な自分のテストを見られたくはない。
トリスタン公爵家の人間は文武両道、何事においても頂点を目指さなくてはならない..まぁ僕は兄程ではなく完璧じゃない。
だが、それでも落ちこぼれるような事は無かった。
それが、自分で考えても...馬鹿にしか思えない..
最近、僕は勇者、翼を見直すようになったが...
それでも、それでもだ...もう少しは勉強していて欲しかった。
「頑張ったけど、まだ努力が足りなかったみたいだ..まだ基礎から勉強し直している最中だから許してね!」
つくり、笑顔で答えるしかない。
「そう、良くなかったのね..で点数は?」
僕は、手にしてテストをそのまま氷崎さんに渡した。
「38点なのね..」
「ごめんとしか言えない..」
「いいわよ勉強は自分が、頑張る物だから..他のテストはどうだったの?」
「言わないと駄目?」
「無理にとは言わないけど..知りたいわ!」
これは絶対に教えろという事だ。
騎士団の団長並みに気が出て見えるのは、僕の見間違いだと思う..
《しかし、天空院も可哀想だな..あそこまで壊滅的だった成績が数日で変わる事はないだろうに》
《氷崎さん、眼鏡ブスとか言われてたからその八つ当たりもあるんじゃない?》
《そうかもね、反省したのかな、結構酷い事言っても最近は言い返してこないよね?》
《昔のつもりできつい事言ったのにさぁ..ゴメン悪かったって..こっちが虐めているみたいになるよね》
「うん、現代文が48点 英語が24点 科学が37点 数学は今見たから良いよね」
「そう、だったら私はもう文句は言わないわ..後は自分でどうにかしなさい」
「頑張るよ..いつかは氷崎さんに文句言われない位にはなってみせるよ」
「解ったわ...だけど、勉強は私の為じゃなく自分の為..良いわね!」
《文句を言わないって..呆れられたんだな..仕方ないか》
「あのさぁ、氷崎さん、もう少し優しくしてあげても良いんじゃないかな? 直ぐに成績何て上がるわけ無いよ?」
「そうだよ、最近は..凄く優しくなったよ! 天空院くん」
「あのきつい剣道部にも入ったらしいよ」
「私がきついのは元の性格だから変わらないわ...だけど、怒ってなんてないわ、寧ろ感心しているのよ!」
「何を?」
「宇崎ちゃんに言って置くけど..天空院くんの方が貴方より成績は上よ!」
「嘘...本当?」
「ええっ、 現代文が48点 英語が24点 科学が37点 数学は38点、まだクラス平均より下だけど、少なくとももうビリじゃないわ..」
「本当に..凄いね、それ」
「ええっ だからもう、私が天空院くんに文句をいう事は無いわね」
「そうか、誤解していたみたい悪かったわ」
「良いのよ」
正直、私はさっきわざと天空院くんに辛くあたっていた。
だって、さっきの私の頭に何が浮かんでいたと思う?
《天空院くん、頑張ったね!見直したわ 凄いわね!》
これよ! これ...
本当に怖いのよ...そのまま思わず抱きしめそうになったわ..
気持ち悪くて嫌いだった天空院くんが最近カッコよく見えたりするし、さっき見た横顔なんて一瞬見惚れてしまったわ。
それは、他の女の子も同じ、見直したという子から..凄い子だと《天空院って良くない》何ていう子もいる。
そして最近は、あれよ、あれ、教室の窓に貼り付いている女の子。
最初はこのクラスの新井くん目当てだと思っていたけど、天空院くん目あてみたいだわ...ちなみに新井くんは野球部のエースこっちの方が普通じゃない?
流石にこれは無いわと思っていたけど..本当にそうみたいなのよね...だけど、幾ら良くなったとはいえ、あの外見なのによ...
だけど..私も可笑しいのよ..最近、何だか、天空院くんがね..凄く綺麗に見えちゃうのよ..
天空院って...解らない..本当に解らないわよ。
剣道家としての最後 天上心美
私は今隣の学園に来ている。
その理由は雌雄を決する為..
宿敵、東条楓と戦う為に..此処に来た。
「東条さん、お久しぶり..」
「何だ、天上じゃないか?大会以外で会うのは初めてだね..」
「そうね、貴方と私は会う時はいつも竹刀を交える時でしたわ」
「それでどうした? 何か用があるのかな?」
「ええっ、少しお話がありますの?」
「そうか、まあ、いいや取り合えず道場に行こうか?」
「はい」
「知っていると思うが此処には私しかいない..まぁ同じ状態のあんたなら解るだろう?」
「一心不乱に竹刀を振り続けると何故かいなくなってしまうのよね..不思議な事に!」
「まったく同感だな..」
「私のお母さんは「鬼百合」、貴方のお母さまは「鬼姫」お互いがライバルで私達の師匠、本当に似た物同士ね..」
「本当だな。だが私はお前のように華がない..幾ら剣道が旨くても..」
「あらっ 貴方の応援に凄い美少年がきてましたが?」
「まだ、付き合ってないんだ..」
「そうでしたの? 思わず貴方に彼氏が出来たのかと思いましたわ」
「この顔だぞ..告白するのが怖いんだ..」
「残念でしたわね...貴方が男でしたら凄く綺麗な彼女が出来たかも知れないのに.。まぁそれも手遅れですが」
「あははは、それどんな美少女だよ..」
「私よ。私貴方の剣道には惚れていましたのよ。貴方が男性ならこっちから告白してましたわ」
「へぇ 剣道小町が彼女か……私は運が無かったな..男だったら幸せだったのか?」
「そうですね」
「それで今日は何しにきたのかな? まさか話をしに来た訳じゃないでしょう?」
「ええっ、今日は真剣に戦って貰おうと思いまして」
「おい、勝負って事なら、残念ながらお前は私に勝った事はないだろう」
「ええっ! だからこそ、貴方が相応しいのよ。天上心美の最後の試合相手に。貴方との戦いで心美の剣道の締めくくりにするの」
《あの心美が剣道を捨てるのか。凄い気迫だ。これは剣道家として断る事は出来ないな》
「解った、その勝負受けよう..」
「ええっお願いするわ」
もう会話は要らない。目の前の最強の敵──いえ、最強のライバル、東条楓を倒すだけだわ..
残念ながら一度も勝った事が無い。
だから、私は万年、全国2位。
顔だけで貰った「剣道小町」 そう陰口を言われ続けた。
だけど、仕方ない...東条楓は本当に強いんだから。
天上心美、私以外で全てを剣道に捧げていると思える数少ない女。
いつも後ろに此奴が居たから私は更に強くなれた..
私と違い全てを持っている女..だが此奴が居たからこそ私は孤独ではなかった。
同じような奴がいる。
それだけが孤独を癒してくれた。
「さぁ準備が出来ましたよ楓さん」
「こっちも出来たぞ」
「では始めますわよ」
「あぁいくぞ」
流石は楓さん、王道の上段の構えですね..下手に踏み込もう物なら確実に打ち込まれる。
相変わらず心美は突き狙いか。天上流の突きは厄介だが──それだけだ。
「そりゃぁ」
「そりゃぁーっ」
こんな小手調べじゃ無理ですね..だったら..今私が出せる最強の技をだすしかない..
「行きますわ楓さん..」
「さっさと来い」
「天上流、奥義 五月雨突き」
お母さまの必殺技..これなら!
「だが、甘い」
私が繰り出した連続の突きを楓は難なく躱した。
ここからですわ.. 私が憧れたお母さまの技..幼き日に見た綺麗な月。
「奥義──古月」
「何っ!? これ!」
決まりましたわ──.えっ!?
パーン。
「今のは危なかったな。今までで一番突きも速かったし、最後の技、躱せたのは運だよ」
「悔しいけど、貴方は私より高みにいますわね」
「私のは実戦剣道、天上流は綺麗だからね.その分の差だと思う」
「私の剣道はお遊び、そう言いたいのかしら?」
「少し思う所はあるよ、だけど、華が無いと商売にならない、ゆえにうちの道場は貧乏道場、天上流は大きな道場でお金がある、世知辛いよね」
「そうね..私より強い貴方が記事にならないで、2位の私が記事になる...私が美少女だから!」
「全く、自分で美少女なんて言うのお前位だよ? まぁ本当に綺麗ではあるけどね」
「貴方も、剣を振る姿は美しいわ!」
「それ限定か……まぁこの通りカマキリ女とか言われるブスだから仕方ない」
「あははは、そうね」
「酷いな何気に……ははは」
「私、剣道を止めます!」
「おい、私達から剣道をとったら何が残るって言うんだ..止めてどうするんだ!」
「貴方に勝てない剣道は捨てて、剣術に転向しますのよ!」
「何だ!それなら剣を捨てた事にならないじゃないか?」
「そうですね……ですが剣術ではもう大会には出れませんから、貴方とは戦えませんわ!」
「だったら、大会以外でやれば良いじゃないか! 今日みたいにな」
「そうですわね」
「それにさ……」
「それに何ですか?」
「ほらっ私って天才じゃない? そんな私が本気になれる相手なんて万年2位とはいえ天上位しかいないからね」
「言ってくれますわね! 剣術の腕を磨いて直ぐに追い越して差し上げます」
「それでこそ、天上心美だ。剣術を磨いて納得したらまたやろう」
「ええっ」
これで剣道には未練はありませんわ..剣道家の心美は今死にました。
これからは剣術家の心美を目指します...
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