第23話 【閑話】 狙撃の王子様
おじさんは、おじさんは今最大のピンチを迎えている。
「おじさん、射撃良いすか?」
金髪に黒髪の一見チャラそうな奴が来た。
「あいよ、5発で500円ね」
何か可笑しいとは思った。
カメラの様な物で撮影しているしな。
しかも他の景品に目もくれず、ひたすらSUMOCHIだけを狙っている。
「おじさん1万円分追加..」
「あいよ」
弾を渡した、悪いが多分、SUMOCHIはとれない..この間2連ちゃんとられたから鬼のようにとれないようにしたから..
結局、1万円分の弾を打ち尽くし終わった。
「おじさん..10万円分追加..」
この頃には沢山の見物人が集まっていた。
「いや、流石にそれはやらせられないよ...いい加減に辞めた方が良いぞ」
「はぁ、こっちはお客だよ、断るのは可笑しいだろう...」
「だけど、可笑しい金額だ、その金額出すなら6階のおもちゃ売り場で買えばよいだろう」
「このSUMOCHIが欲しいんだよ..沢山しちゃいけないなんて書いてないだろう」
「そうだ、そうだ」
「インチキじゃないならやらせてやれよ じじい」
「はぁい!ピカリンの闇を暴くです...今日は射的の闇を暴くです! 果たしてSUMOCHIは幾らでとれるのかな?」
ヤバイ、此奴は有名なYANチューバ―だ...景品がとれるまでやったり、アタリが出るまでくじを引き続ける奴だ。
仕方なく、10万円分の弾を渡した。
沢山連射していたが..
「これ、可笑しいよな、もう5万円分の弾を打ち尽くしても動かねえよ..」
「これで7万円分だ、ぜっていこれ取れないだろう」
周りからも非難の声が上がってきた。
《あれじゃお金をゴミに捨てているようなもんじゃん》
《あれでとれないならインチキじゃん》
「もう10万円分、終わるよ..これおっちゃんインチキだろう..もう10万」
「もう辞めてくれ..」
この場所の商売は俺の為に昔の弟分が世話してくれたんだ。
的屋で全国回るのはじじいになったら辛いだろうって、知り合いに頼み込んでここのお祭り広場にいれてくれたんだ。
だが、こんな噂が広まったら商売にならない。
それ以前にデパートから追い出されちまう。
「辞めないよ..おっちゃんがインチキって認めるか、とれるまで..早く弾だせや..もしくはインチキって認めろや...おっちゃん」
「やらせてやれよ」
「やらせろ、やらせろ」
辞めさせられないな..
「ほらよ10万分」
終わったな...仕方ないな...
「裕子ちゃんは元から持っているし...まひるは手に入れていいなぁー、SUMOCH持って無いの私だけだよ..」
「まぁまぁ、だからお兄ちゃん連れてきたんじゃない」
「幾ら、翼お兄さんが射撃が得意でも無理だよ..」
「だけど、私のはお兄ちゃんがとってくれたんだよ」
「そうなの? じゃぁ翼お兄さんがとってくれたらキスしてあげる...何てね!」
「ふざけるな恵子ちゃん..それは可笑しいよね..」
「そんな事言うなら帰るよ、恵子ちゃん」
「ごめん、冗談だって」
《ちぇっ、旨く行ったらSUMOCHIが手に入ってキス迄できたのに..》
「笑えない冗談だよ! 恵子ちゃん」
「まぁ冗談なら良いけどさぁ」
「おじさん、僕もやらせて貰っていい?」
「兄ちゃん辞めとき、辞めとき、これ絶対にとれへんで!」
「そうですか、でもやります...はい500円..」
《此奴なら、此奴ならとれるかもな》
「はいよ 5発ね」
「おじさん、今日も悪いね..」
《必中、貫通》
「流石に三連ちゃんは無理だろう」
「三連ちゃん?」
パンっ
「流石は兄ちゃんや仕方ない、持っていきSUMOCHI...」
「はい、恵子ちゃん」
「翼お兄さんありがとう、屈んでくれる?」
「何をしているのかな? 恵子ちゃん..」
「まひるちゃん、怖いよ..」
「裕子にも何かとって下さいよ 翼お兄さん!」
「それじゃ、あれ セルランの冒険というソフトで良い!」
「はい、それでお願いします!」
《必中、貫通》
パンっ
「流石兄ちゃんだ、ほれソフトだ」
「はい裕子ちゃん」
「うわぁありがとう、これ一生大切にします!」
「私も、私も..お兄ちゃん、まひるもソフト欲しい」
「なんだ、ちゃんととれるじゃないか?」
「ピカリンが下手糞なんじゃないのかな?」
「寧ろ、受け狙ってわざととらなかったんじゃね?」
「それじゃピカリンがやらせだって事じゃないか..ひでぇな」
「そう言えば、私デディの人形とった事あるよ」
「私も昔MP3プレイヤーとったよ..」
「こんなのやらせだ! そいつと親父がグルなんや..違うというなら、この銃でやってみろや!」
「良いですよ!」
《必中 貫通》
「これで良い? まひるとれたよ!」
「兄ちゃんほんとうにかなわんな、ほれっ」
「うん、これ欲しかったの...ありがとうお兄ちゃん」
「だけど、あの人凄いね..三発で ゲーム機にソフト2本なんて..」
「しかもカッコ良いよね、まるで射撃の王子様みたい...」
「絵になるね」
「お母さん、私もSUMOCHI欲しい..」
「駄目よ、うちはお父さんが失業してお金が無いんだから..」
「おじさん、前みたいにもう一度置いて貰えるかな」
《しゃぁねぇ、今日は助かったからな..礼だ》
「悪いね」
「ここまで来たら、とれよ」
《必中、貫通》
パンっ
「凄い、あの人またとったよ!」
パンっ
ソフトを狙った..マルコシスターズを落とした。
「あいよ..だけど兄ちゃん、これで出禁で良いか? 流石に赤字だ..」
「あのゲーム狙い無しで手を打ちませんか?」
「解った...今度からはゲーム機狙いは無しって事ならいいや」
「そら行った、行った」
「はい、これ!」
「お兄ちゃん、このSUMOCHI...くれるの?」
「これもね」
「わーい、マルコシスターズだ」
「あの、こんな高額な物貰う訳にはいきません」
《どうしようかな?..そうだ》
「その飴くれる?」
「うん、はい」
僕は急いで口に入れた。
「ありがとう、じゃぁゲームと交換だね」
「あの、貰う訳には...」
「交換したんですよ..もう飴は食べちゃったから、これはその子の物ですよ」
「すみません..有難うございます、本当に有難うございます!」
「お兄ちゃん、ありがとう..お礼に大きくなったらお嫁さんになってあげる! ちょっと屈んでくれる?」
「これで良い?」
「チュッ..直ぐに大きくなるから待っててね、お兄ちゃん!」
「うん、待っているよ、じゃぁね」
「バイバイお兄ちゃん」
「バイバイ」
《あっ、あれ、私が、私がしたかったのにー》
《お兄ちゃんフラグばらまきまくりだよ》
《あれは子供、あれは子供、あれは子供》
「あれっどうしたの? 子供って可愛いよね? 結婚してくれるって、案外子供でも嬉しいものだね」
《あれ、絶対あの子本気だと思わない?》
《同じ事、私が子供の時に翼お兄さんにされたら..忘れないと思うな..一生》
「あの..翼お兄さんが良いなら裕子を..」
「何を言い出そうとしているのかな? 裕子ちゃん!」
「私、翼お兄さんが良いなら将来..」
「恵子ちゃん..何を言おうとしているのかな? 」
「あははは、嘘ばっかり、ゲームのお礼ならもう良いよ! だけどそういう事は本当に好きな人にとって置いた方が良いよ」
《お兄ちゃん、鈍感なのもライトノベル並みなんだね》
《冗談じゃ無いのに..》
《本気なのに》
「そうかも..本当に好きな人(翼お兄さん)にちゃんと今度伝えます」
「私も、そうします(相手は勿論 翼お兄さんですよ)」
「それじゃ、そろそろ帰ろうか?」
「もう少し、お喋りしませんか?」
「じゃぁ、少しだけファミレスにでも寄っていこうか?」
「「「うん」」」
「ピカリンだか何だか知らないけどよ..お前が下手糞なだけじゃ無いのか?」
《嘘だ、周りが僕を変な目で見ている..まずい》
「はい、今回は白、紛らわしいけど白でした...だけど、難易度は高いから余りお勧めではありません..それじゃおっちゃんさらばや」
慌ててピカリンは走り去った。
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