第14話 剣道小町

体育の終わった後は特に何も無かった。


いつものように、解らない授業を受けて一日が終わろうとしていた。


変わった事と言えばボールをぶつけた相原が、


「お前も熱くなる時があるんだな! 少し見直したよ!」と肩を叩いた事だ。


このクラスの女の子はと言うと..


「相原くんってやっぱり男らしいね..怪我させた天空院に声かけてさぁ..」


「本当..幾らやる気を出して来たからってあれは無いわ..」


相原の株が上がり、僕の株は逆に下がったみたいだ..


そんな中、氷崎さんだけが


「まぁ、最初は仕方ないわよ...だけど、スポーツだけでなく勉強も頑張ってね!」


氷崎さんは頭が凄く良い事が解った。


そしてクラス平均を凄く落としている翼に凄く腹を立てて居るらしい。


僕なりに頑張っているよ...まだ小学生位の物しか解らないけど...


「うん、期待に応えるように頑張るよ..」


「そう..解ったわ」


氷崎さんは背が低いけどクールビューティーという感じの子だ。


冷たそうな美人、そんな感じ..


勿論、こんな子に嫌われたく無いから頑張るしかない。



授業が終わり、放課後になった。


僕は気になっていた剣道部を見に行く事にした。


僕の趣味や得意な物は、乗馬や狩りなのだが、こちらでそれをやるのは結構難しそうだ。


冒険者ギルドも無いから討伐も出来ない...


本当に平和なんだなこの世界は、いつも誰かが傷つき泣いているあの世界とは大違いだ。


結局、よく考えた末、剣術位しか日常出来ない事が解った。


せっかくなので、この世界の剣術である、剣道を見に行く事にした..


剣道場についた、部活は普通沢山の人が居る筈なのだが、1人しか居なかった。


まるで、戦女神 アテス様にしか見えない、今までに見た事が無い...嫌、想像も出来ない位の美少女が竹刀を振っていた。


《綺麗な人だな...本当に凄く綺麗だ..この世界の女性はたしかに物凄く綺麗だけど、此処までの人はテレビや写真集でしか見た事が無い》



「そこの男子..覗きは最低よ出ていきなさい!」


「ごめんなさい! 覗く気は無かったんです..ただ剣道部の見学をしたかっただけなんです」


「そう、残念ながらこの学園に男子剣道部は無いわ..女子の剣道部員もわたし1人だけ、それでも見たいの!」


「はい、宜しければ!」


「そう、解ったわ..見たければ邪魔にならない様にその辺で見てなさい、所でキミ剣道の経験は?」


「ありません」


《はぁーまた私目当てのクズが来た..だけど一応部だから断れないんだよね..仕方ない》


私は私、自分の練習をするだけ。




女の子にしては凄いな、冒険者や騎士には到底敵わないけど..うんさまになっている。


見た目も凄く綺麗だ...だけど残念これだと実戦には使えない。


《何よ、彼奴、食い入るように見ているわね...最低ね..幾ら私が美少女だからって破廉恥な目で見ないでよ..》



上半身はまずまずだけど下半身がなってないな..鍛錬不足だ。


それにああも直線的な動きじゃ相手から攻撃が悟られやすい..しかも攻撃が軽すぎる。


ゆえに実戦では役に立たない。


魔獣はともかく、この分じゃ人も殺した事もないんだろうな...


「さっきから何をブツブツ言っているのかしら? 剣道に興味がないなら出ていってくれない?」


《きっと、綺麗な足がとか胸がとか考えていたんでしょう..不謹慎だわ》


「そんな事は無いよ、えーと..」


「心美、天上心美よ! 貴方は?」


《本当にしらじらしいわね、知らない訳ないでしょうが!》


「天空院 翼」


《なに、此奴が翼、友達が言っていた根暗でオタクで毒舌の?..最低な奴じゃない》


「それで! 何を言っていたのかしら?」


《どうせ、変な事でしょう..》


《本当の事をいうべきだよな》


「いや、まだまだ甘いなと思ってさ」


《オブラートに包んで言ってあげよう、うん》


「私の剣の何処が甘いっていうのよ! 聞き捨てならないわ、天上家の剣にケチをつける気!」


「気に障ったのなら謝りますごめんなさい」


「謝らなくて良いわ、嘘じゃないなら指摘してみなさい!」


「剣道に当てはまるか解りませんが..まず第一に下半身の強化不足に攻撃の軽さ、ただ見ただけでその二つが浮かびますね」


《此奴はオタクなのよね...幾らでも嘘がいえるわ》


「本当にそうなのかしら? だったらどこが悪いか答えてみなさい!」


「そうですか、だったらさっきの素振りをしてくれませんか?」


「こうかしら?」


「そうです..ここの重心が」


《やっぱり最低、私の体を触りたいだけじゃない! それならいいわ..」


私は竹刀を翼に向けて振り下ろした。


「危ないな、当たったら痛いじゃないですか?」


「当てようとしたのよ!..だけど、なんで嘘躱せるの?」


「この位なら..」


《嘘..少し位痛い目にあわそうとして打ち込んだのよ 完全に死角を突いた筈なのに》


《まぐれなのかな? だけど、まぐれじゃ躱せないはず..》


「あのさぁ、貴方から見て私は未熟なのよね、だったら貴方の剣を見せてくれる!」


「いいですよ」



さてどうしようかな?


僕は竹刀を受取り軽く構えてみせた。


「何、その構え! マンガか何かの真似? そんな変な構え剣道に無いわよ!」


「僕のは剣術ですから..」


「そう、剣術ねはいはい..じゃぁどうぞ!」


「それじゃ..」


《えっ?》


《嘘、凄いわこれ、まるで何処かの流派の演舞みたい..綺麗..こんな事が出来る人が言うなら嘘じゃないのかも..》


「凄いわね...貴方、ごめんなさい謝るわ、私の甘い所教えてくれる!」



翼が私をペタペタ触ってきたけど..悪いと思わない..だって真剣に教えてくれているのが解るから。


決して嫌らしい考えからじゃないのが解る..だけどさ、私だって女の子だよ胸やお尻を触られるのは少し恥ずかしいわ。


翼と目があってしまった。


《ななななな..なにこれ、凄い美少年じゃない!どこがキモイ男なのかしら? 》


剣道している時は集中しているから周りが見えてないのだけど..何故気が付かなかったのよ私!


まるで、佐々木小次郎じゃない! 剣が強くて二枚目で...凄いわよ..


正直私と並んだら見劣るのは私じゃないかな..


見れば見る程、綺麗、こんな男の人居るんだ、男なんてと思っていたけど..この人はまるで別の生き物のように違うわ。


「あのね、それで教えて欲しんだけど!それが全部出来るようになるとどうなるの?」


「そうだね、試しにやってみようか?」


「お願い!」


「最初は今迄の心美さんの形」


「そうね!」


《嘘、今日見ただけで天上流の型が出来るなんて..》


「それで、これが課題を全部クリアした型」


「凄いわ、全然違うわ..明らかに速いわ」


「まぁ、こんな感じですかね..」



「ありがとう、それで良かったら、一緒に素振りしない? 1000回位!」


「そうですね体を動かしたいから良いですよ!」


「ありがとう、それじゃしようか?」


「はぁはぁはぁ、凄く気持ち良いわね、今度は私が打ち込むから受けてくれる?」


「良いですよ! どうぞ!」


凄く打ち込みやすいわ...私にあわせてくれているのよね...


「はぁはぁはぁ、凄く良いよ..本当に凄く..私の全てを受け止めてくれる? くれるよね? 」


「ちょっと待って下さい、何をするんですか?」


「本気で攻撃するから全部受け止めて頂戴..」


「解りました」


「凄い!凄い! はぁはぁ..本当に凄いわ、これもあれも、全部受けてくれるのね..はぁはぁはぁだったらこれはどう..」


「凄いですね技が多彩なんだ」


「凄く気持ちい...いいわ..本当に、この時間が終わってしまうのが勿体ない位..本当に気持ち良いわ!」


「そうですか..全部受け止めるから思う存分打ち込んで来てください!」


「ずるいわ..私ばかり本気になって翼はすましていて、はぁはぁはぁ本当にずるい!」




「凄かったわ、本当に私の全てを受けきっちゃうなんて、翼...いえ翼くん..今日私の家に遊びに来ない!」


「良いんですか?」


「良いに決まっているわ..それじゃ着替えてくるから一緒に帰ろう..」



こうして僕は「翼」になって初めて女の子の家に行く事になった。



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