第9話 妹の友達と

本屋に来た。


翼は結構甘やかされていたみたいでお金を沢山持っていた。


《さてと、どの程度から始めればいいのだろうか?》


色々と本を読んだ結果..小学生の低学年から始める事にした。


参考書や問題集をてっとり早く選んだ。


此処から始めるしかない...




その頃、



「お兄さんまだ帰ってこないね..何時になったから帰ってくるのかな?」


「多分、もうそろそろだと思うけど..」


「気にしないで良いよ? 帰ってくるまで待っているからさ」


「所で、お兄さんって何時も何をしているの?」


「部屋に居るから解らないけど、アニメとか好きだよ..みての通りオタクだからさぁ」


「はぁ? 何言っているの?あれの何処がオタクに見えるの? 優雅に音楽を聴きながら読書とかしてそうにしか見えないんだけど!」


「そうだよね! そんなのとは無縁の存在にしか見えないよ!」


《そう言えば、今日の朝、全部捨てていたっけ》


「冗談だよ! これから紹介するから直接聞いて」


「うん、そうする」




「ただいま!」


「お帰りなさい、お兄ちゃん! 友達がさ、紹介して欲しいんだって!だから手が空いたら私の部屋に来てくれる?」


「解った」


せっかくの誘いだから、どうしようかな?


部屋にカバンや参考書を置いて、着替える..しかし、余りセンスの良い服が無いな..


制服の上着を脱ぐだけで良いか..何かおもてなししないと、そうだ紅茶があったから持っていこう。



僕は紅茶セット一式とリビングにあった紅茶セットを用意してまひるの部屋に向かった。


「まひる、お待たせ!」


「お邪魔してます、翼お兄さん、私まひるの友達の三津島裕子って言います!」


「わ私は、奥山恵子です!宜しくお願いします!」


《うわっ二人とも凄く可愛いな..》


「ご丁寧に、僕は今朝、紹介した通りまひるの兄の翼って言います、これからもまひるをお願いしますね!」


「「はいっ」」


「それじゃ、紅茶入れるね」


《紅茶の入れ方には自信があるんだ、何しろ前の世界では目の前で紅茶を入れる風習があったからね》


僕は茶葉をポットに入れてお湯を注いだ。


「暫く蒸した方が旨いんだ、暫く待ってね」


「そう、なんですか?」


「うん待っている」


《お兄ちゃん、何時こんな紅茶の入れ方覚えたのかな》


「そろそろいい頃だ」


僕は右手にポットを持って高い所から紅茶を入れた、こうすると何とも言えない香りが漂うのと空気が入り美味しくなる。


《お兄ちゃん、本当にどうしちゃったの?》


《やっぱり、凄く優雅...本当に絵になる..》


《どう見ても王子様にしか見えないよ、本当に綺麗》


「それじゃゆっくりして行ってね!」


《嘘、お兄ちゃんが空気を読んだ!》


「ちょっと待って下さい! 翼お兄さんはこれから忙しいんですか?」


「いや、特には用はないけど..」


「それだったら、少しお話しませんか?」


「そうですよ、せっかくだから少しだけでもお話ししましょうよ?」


「それじゃ、少しだけお邪魔させて頂きます」


《嘘、2人ともどうしちゃったの? 顔何か赤くして お兄ちゃん頼むから毒舌やオタ話は辞めてね》



本当は気の利いた話を振らなくちゃいけないんだけどな..そうだ。


「そういえば、三人ってどんな感じの友達なのかな?」


「私達は遊び仲間なんです!」


「何時も一緒に居るんです」


「そうなんだ、まひるにこんなに可愛い友達が居たなんて知らなかったよ」


「そんな可愛いだなんて! 困ってしまいます」


「可愛いだなんて、ありがとうございます!」


《何、何なの! キモイお兄ちゃんに可愛いって言われるだけで何でそんな顔になるの?》


「所で翼お兄さんには彼女とか居ますか?」


「居ないよ! 見ての通り僕はモテないからね!」


「そんな本当かな怪しいなー」


「本当だって、逆に聞くけど二人ともこんなに可愛いんだから彼氏がいるんじゃない?」


「裕子は居ません、フリーですよ、フリー」


「恵子も居ません」


「本当? 怪しいな、こんなに可愛いくて綺麗なのに...」


「そうですか..」


「本当に居ませんってば、信じて下さい」


「うん、解かった信じるよ..それでいい?」


「「はい」」


《その二人はお兄ちゃんとは違うんだからね、モテるけど面食いだから相手が居ないだけなんだからね》


「所でお兄さんの趣味は何ですか?」


「趣味ね...何だろう?」


《父上の恥にならないように何でも習ったからな..》


「あの、焦らさないで教えて下さい!」


「そうだね、剣術と読書かな」


《狩りや馬術は翼の記憶だと余りしないようだし..こんな物かな》


「剣術、剣道じゃなくて?」


《お兄ちゃん、また悪い癖が出た》


「お兄ちゃん、冗談は辞めて!」


「いや、冗談じゃないんだけど」


「それじゃ、翼お兄さん、何か見せて下さいよ」


「そう、ここじゃ狭いから庭で良い?」


「「はい」」


「じゃぁ、僕は用意してくるから先に待ってて」


確か部屋にこちらの世界の父さんのお土産の木刀があったな、後は台所からリンゴでも持っていくか。


《お兄ちゃん...やっぱり中二病が出てきた、せっかく真面に見えていたのに..おしまいだよ、どうせアニメのキャラクターの真似でもすんでしょう..》



「お待たせ!」


「お兄ちゃん、カッコ悪いから辞めよう!」


「まひる、何止めてんの? せっかく翼お兄さんが剣術見せてくれるっていうのに」


「二人ともみたい?」


「「見たいです」」



「それじゃ、まずは軽く型からね」


体の力を抜いて軽く素振りをする、木刀が唸りをあげて音を出す。


誰が見ても素人のチャンバラには見えない、今の翼がセレナだった頃、貴族の義務として討伐があった。


その為、子供の頃から学んだものだ。


《嘘だ..ナニコレ、いつもの中二病のアニメの真似じゃないよ》


《何て優雅なの、思わず見惚れちゃった》


《恵子は剣なんて知らないけど、これが凄いのは解るよ》


「これじゃ退屈だよね..だから此処から..そうだ、まひるこのリンゴを投げてくれる」


「何考えているのお兄ちゃん」


「あっだったら私が投げて良いですか?」


「うん、裕子ちゃんでも大丈夫」


「それじゃ投げますね..はい」


飛んできたリンゴを軽く木刀で上に弾きあげる。


そして落ちて来たリンゴを刀身で受けとめバランスを保ちピタリと止めてみせた。


「嘘っ、それって時代劇で見た事があるよ..凄い」


「本当に出来るんだ..凄い翼お兄さん..凄いです」


「どうしちゃったのお兄ちゃん」



「まだ、これからだよ」


僕はリンゴをそのまま上に弾くと体を回転させ同じくピタリと刀身をブラさずに受け止める。


そして、今度は更に高くリンゴをはじき、飛び上がり回転して着地して、同じように刀身で受けた。


勿論、ピタリとリンゴは動かない。


《あれってまるで、映画の主人公がやるような奴だよね》


《昔、見たドラマの騎士がやっていたような気がします..本当に出来るんだね》


《何が起きているの? お兄ちゃんどうしたの?》


「はい、これで終わり、それじゃ邪魔しちゃいけないからこれで部屋に戻るね..そろそろ勉強しないと」


「はい、有難うございました」


「また、遊びに来ますので宜しくお願い致します」


「こちらこそ、宜しくね!」


「「はい」」





しかし、凄く可愛かったな..この世界の女の子は美少女が多いけど、その中でもかなり可愛い方だと思う。


何とか誤魔化したけど、心臓がバクバクしていた。


《あれは妹の友達、友達、うん大丈夫だ》


さてと勉強しなくちゃ...僕は小学三年生の参考書とドリルを取り出した。







「ねぇ、お兄ちゃん可笑しいでしょう? 余り関わらない方が良いよ」


《そのうちボロが出るから..》



「まひるちゃん、あれの何処がオタクでキモイのかな? 凄くカッコ良かった..うん胸がときめいちゃうよ」


「まひる...あれはオタクじゃなくてリア充の方がまだ近いんじゃない? 確かに剣術とかいうと中二っぽいよ?」


「ほらね?」


「だけど、あそこまで出来るなら、本当に剣術だと思うよ、アニメのキャラじゃなくちゃ出来ないような事が出来るんだからさぁ 何かの流派を極めましたって言われても、本当なんだと思う位凄いんだけど」


「そう、だったら知君に告白するのは手伝わなくて良いんだね、裕子ちゃん」


「それ取りやめたから良いよ! 知君より100倍位翼お兄さんの方がカッコ良いもん!」


「嘘でしょう? 恵子ちゃんも何か言ってよ!」


「そうね、まひる、私の義理の妹にならない?」


「何を言っているのか解らないよ、恵子ちゃん!」



お兄ちゃん魔法でも使ったの?


二人が可笑しくなっちゃったんだけど..






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