第2話 しかし、僕は女々しい人間なんだ。

暫くたって、どうしてもジョセフィーナに逢いたくて、こっそりと勇者の屋敷に忍び込んだ。


そこで僕が見た物は...


「ブス、俺に触るんじゃねぇよ」


「そんな、私は貴方の妻なのですよ..それなのに..」


「うるせーな、お前とは体だけの関係だ..それ以上でもそれ以下でもない」


「私を望んだのは貴方じゃないですか? 私には婚約者も居たのに..酷い...」


「そうだな、子供を産んだら、婚約者に返してやろうか? そうだ、子供が出来るまでやりまくって妊娠したら婚約者の元に返してやるよ」


「そんな、傷物にして..そんな事を..そんな..」


「うるせーな、どっちにしろ妊娠したら解放してやるから、それまで頑張れよ」


「そんな、貴方は私を愛していないのですか?」


「愛してないな、ただ面が良かったから選んだだけだ..」


「そんな、貴方が好きなのはやはり聖女様..女魔導士様なのですね..最低です」


「あいつ等か? あいつ等も。同じだぞ、妊娠したらお払い箱だ..お前と同じで愛してない」


「貴方は最低の人ですね...」



見てられなかった。



「翼...貴様幾が勇者でも許せない..僕は、僕は..」


「何だ、お前、そうかお前がジョセフィーナの婚約者か..終わったらこんな女返してやるから、そう怖い顔するなよ..なぁ」


「翼..」


「だから、やるだけやって妊娠したら返してやるって言ってんだろうが..」


「許せない」


「セレナ..」


ジョセフィーナの声が聞こえた気がした、そして僕は気を失った。





水が落ちる音がする。


ここは何処だろうか..暗いしジメジメしている。


「目を覚まされましたな」


うん、目の前に王家の専属の騎士がいる。


「ここは何処でしょうか?」


「バスチーナ牢獄です」


「どうして僕はここに..」


「セレナ様は勇者 翼様の屋敷に忍び込んで居たのを捕縛されました」


《そうか、多分後ろから衛兵にでも殴られたのか、頭がずきずきする》



「それで僕はこれからどうなるのかな?」


「本来であれば死罪になります、何しろセレナ様は帯剣をしていましたから勇者様を暗殺しようとしたとも取れます」


「そうか」


「ですが、そうなりません」


「何故?」


「今回の事は王家も同情的でした、そして他ならぬ勇者様からも穏便に済ませて欲しいといういう口添えがありました」


「そうなのか...」


「はい、だから貴方は貴族籍を失い、国から追放それだけです」


「国を追放されたら..結局は野垂れ死にじゃないのかな..」


「違います、貴方はこの国からのみの追放なので他の国で普通に生活出来ます、ご実家から持たせて欲しいとお金も預かっています」


騎士からお金と手紙を受け取った。


貰った袋には、贅沢しなければ一生暮らせる金額が入っていた。


そして手紙には...


父や兄弟からのお詫びが書かれていた。



「お気持ちは同じ男として解るつもりです..ですが相手は勇者様ですから」


「うん、頭では解っているんだ」


「お気の毒ですが..馬車で国境までお送りします..ここだけの話ですが、今回の裁決採決は 貴方がこの国に居ては辛いだろうというお考えもあります」



「そう..この裁決採決に関わった方にお礼を伝えて下さい」


「必ずお伝えします」



こうして僕は全てを失い国から追い出された。


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