第141話 怪鳥のオンガニール


 翌日。

 俺はスノーと共に、カーライルの森へとやってきていた。


 ヘスターはもちろん魔法の特訓で、ラルフは俺がカーライルの森へ行くということで一人で自主トレ。

 ラルフには悪いが、スノーを連れてオンガニールの実を見に来たという訳だ。


 怪鳥のオンガニールの様子はもちろん、グリースのオンガニールの実もそろそろ生えていていてもおかしくない。

 スキルはもう手に入らないだろうが、グリースの実は身体能力も大幅に上昇するからな。

 実は食べたくないけれど……体力が6、筋力が9、耐久力が12も上がるとなれば、食べないという選択はない。


 複雑な心境の中、一歩一歩拠点を目指して歩いているのだが――スノーは本当に強くなってくれたな。

 道中、襲ってくるゴブリンやコボルトは全てスノーが討伐してくれている。


 俺も雑魚狩りを手伝おうかと思ってはいるのだが、索敵能力が圧倒的にスノーの方が高いため、俺が気づいた時には狩ってしまっているのだ。

 特に風属性の攻撃が便利で……ゴブリンに向かって爪を振るうだけで、遠距離にいるゴブリンも一撃で狩ってしまう。


 もしかしたらというか、もう既にスノーの親よりも確実に強い。

 戦闘を見る限りでは、推奨討伐ランクがシルバーの魔物だとは到底思えないが、スノーは本当にスノーパンサーなのか?

 未だに体毛が真っ白のままだし、ワンチャン別の魔物である可能性もあるのではと思い始めているのだが……。


 ゴブリンとコボルトをひたすら狩りまくるスノーを見つつ、そんな感想を抱いていると、あっという間に拠点へと辿り着いた。

 スノーには拠点で待っててもらい、俺はさっさとオンガニールの様子を見に行くとしようか。


「スノー、中で大人しく待っててくれ」

「アウッ!」

「それじゃ、すぐ戻ってくるから」


 スノーの頭をワシワシと撫でてから、スノーを拠点に置いてオンガニールの場所へ向かう。

 スノーには悪いが、いつかスノーパンサーもオンガニールの宿主にしたいと考えているんだよなぁ。

 

 風と水、それから複合である氷の属性攻撃を扱えるし、スノーを見てて気づいたが動きを加速させるスキルも持っている。

 まだまだ未知のスキルを持っている可能性もあるし、宿主として最適ではありそうなのだが……生息地が北の山なのがネック。


 運ぶのには相当な距離を運ばないといけないし、運ぶのを誰かに見られるのはあまりいいとは言えない。

 行動自体が、サイコパスと間違えられてもおかしくない行動だからな。


 怪鳥の次の宿主について、色々と思考を伸ばしながら歩いていくと――。

 前方から重苦しい空気が漂い始めた。前回から更に嫌な空気を発していているのを感じ、少し期待が高まってくる。


「見えた。グリースの死体と怪鳥の死体も残ってる。……それと、オンガニールも生えているな」


 俺はそう大きめの独り言を呟いた。

 グリースはもちろん、怪鳥からもしっかりとオンガニールが生えているのが見え、テンションが一気に上がる。


 前回は芽が出ていたかどうか怪しいぐらいの感じだったが、グリースに続き怪鳥もオンガニールの作付に成功してひとまず安心だ。

 しかも、既に実も生えているし……怪鳥の持っているスキルによっては身につけることができる。


 ゆっくりと怪鳥の死体へと近づき、生えている実の採取を行う。

 大きさはグリースのよりも若干小さいぐらいのサイズ。

 色はゴブリンやグリースと比べると、かなり濃い緑色をしている。


 実をもぎ取り回収し、しっかりと生えていたグリースのオンガニールの実も回収した。

 手元には二つのオンガニールの実。

 この場で食ってしまいたい気分になるが、しっかりと能力判別したいし、味を考えると準備せずに食したら吐き出す可能性もある。


 袋に入れてキチンと密封させ、二つのオンガニールを持って拠点へと戻ることに決めた。

 道中も考えていたが、早めにオンガニールの新しい宿主を見つけないといけない。

 

 まだ枯れそうな感じはなかったが、ゴブリンのオンガニールが枯れたことから、オンガニールが枯れるのは確定している。

 一週間の捜索で見つからなかったことからも、新たなオンガニールを見つけるのは困難なため、途絶えさせないように新たな宿主を見つけ続けなくてはいけない。


 しばらくの間は、宿主としてよさそうな魔物の討伐依頼を狙ってもいいかもしれないな。

 こなす依頼についてを考えつつ、俺はオンガニールの実を持って拠点へと戻ったのだった。

 

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