第132話 【銀翼の獅子】
ヘスターを喫茶店に残し、俺とラルフは依頼達成報告のため冒険者ギルドに向かった。
ついでに明日以降の依頼も吟味しようと思っていたのだが……。
冒険者ギルドに入るなり、ラルフは指をさして驚いたような声を上げた。
ラルフが指をさした人物は、風格のある見慣れない四人組の冒険者達。
全員が実力者であることが分かり、特に真ん中の――獣人は圧倒的なプレッシャーを放っている。
一瞬は誰だか分からなかったが、ラルフの反応、四人パーティ、リーダーである獅子の獣人。
これらを考えると、ラルフとヘスターがノーファストで仲良くしてもらったといっていた、ミスリル冒険者パーティ【銀翼の獅子】だろう。
「おうおうおう! ラルフじゃねぇか!! やっぱり冒険者ギルドに来りゃ、会えると思ったぜ!」
「レオンさん! こんなに早く遊びに来てくれたんですね!」
「別にお前達に会いに来たわけじゃねぇよ! 近々、オックスター周辺で用事があるっつったろ? その用事がてら顔を見せに来ただけだ!」
ラルフと豪快に話す、レオンと呼ばれた獅子の獣人。
こんな慕っているようなラルフも珍しいが、確かこのレオンって人に指導を受けたって言ってたもんな。
「でも、また会えて嬉しいです! どれくらい滞在するんですか?」
「どれくらいだろうな……。既に用事は済ませてきたから暇だしなぁ。まだ正確な日時は決めてねぇや! それより、ヘスターが見えねぇな! ――それと、後ろの奴は言っていたリーダーか?」
「そうです! パーティリーダーのクリスです!」
「どうも、二人と一緒にパーティを組んでるクリスだ。ラルフとヘスターが世話になったみたいで助かった」
「――おっ! クリスは生意気なタイプか! こっちもメンバーを紹介するぜ!」
レオンの言葉と共に、後ろに控えていた三人が前へと出てきた。
確か……斥候、狩人、僧侶の三人だっけか?
「アタシは狩人をしているジャネット! アタシがヘスターに命中の極意を教えたんだぜ!」
ジャネットと名乗った女は、俺よりも短い黒髪短髪だが、顔は整っていて姉御肌と呼ぶのがしっくりくる。
右目の上に深い傷があり、服装は身を隠すためか緑一色で、担いでいる弓はシンプルながらも質の高さが覗える逸品。
かなりの実力者であることが窺える。
「私は僧侶をしています。ジョイスです。よろしくお願いします」
ジョイスと名乗った……これまた女。
レオンやジャネットとは打って変わって、淡々とした口調で抑揚のない話し方をしている。
特徴的な青髪に幸薄そうな顔をしているが、こちらも顔が整っているといえるな。
神父に似たような服装をしており、手には神秘的な装飾が施された長杖が持たれている。
「僕は斥候のアルヤジです。どうぞよろしくお願いします」
最後に名乗ったのは、斥候のアルヤジ。
俺よりも小さく、黒い服装に身を包んだ男。
目元しか見えず、どんな人なのかは分からないが……身のこなしが正しく強者のそれだ。
斥候なんて職業聞いたことないが、実力者であることは間違いない。
「さっきも名乗ったが、俺はクリスだ。よろしく頼む」
「いいねー! 俺はクリスみたいなタイプ嫌いじゃねぇぜ? どうするよ。時間があるなら、この間みたいに指導をつけてやろうか?」
「本当ですか!? 是非つけてもらいたいです! クリスも指導受けたいだろ?」
「俺は別に……」
そこまで言いかけたが、折角の仲良くなるチャンスだ。
依頼も終えたところだし、少々面倒くさいが断る場面じゃないか。
「そうだな。言葉に甘えて指導をつけてもらおうか。ミスリル冒険者の実力も気になるし」
「へーっへっへ! そうこなくなちゃな! ここら辺で丁度良い広い場所はあるか?」
「北の平原でいいんじゃないか? 魔物も少ないし、広い平原だ」
「あー、いいね! 近くにいい平原があるので、そこで稽古つけてください!」
北の平原は、インデラ湿原へと向かう際に通る平原。
この間、スキルの試し打ちにも使った場所だな。
「いいぜ! それじゃ早速向かうか!」
こうして、唐突に【銀翼の獅子】の面々に指導してもらうこととなった。
確実に俺よりも実力を持っている人たち。
いい機会だし、盗める技術は全て盗ませてもらおうか。
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