第123話 自家栽培植物の効能


 翌日。

 朝食だけ食べて、手ぶらで教会へと向かう。


 まずは前回の能力判別から、どれだけ能力が上昇したのかを確認する。

 最後に能力判別を行ったのは、魔力を上昇させるエッグマッシュを発見した時だから、能力が大幅に上昇していてもおかしくない。


 シルバーランクの依頼を複数、ヴェノムパイソンの群れ、グリース、カーライルの怪鳥。

 この期間でこれだけの数の敵を倒しているからな。

 植物によるプラス値だけでなく、俺自身の能力上昇にも期待しながら、俺は教会の扉を押し開けた。


 教会の中では、神父が講壇で肘を置きながらうたた寝している。

 ……本当にこの神父は大丈夫なのか?

 毎度、一切仕事していないように見えるが――まぁ能力判別だけしてくれれば関係ないため、俺は神父に声を掛けて起こす。


「寝ているところすまないが、能力判別してくれ」

「――うぇ? あっ……ね、寝ていませんよ! 少しだけ瞑想していただけです! ど、どうぞ、どうぞ。奥の部屋にきてください!」

 

 涎も垂れていたし確実に寝ていたと思うが、俺もツッコむことはせず、大人しく奥の部屋へと案内される。

 そのまま水晶の前に座り、金貨一枚と冒険者カードを手渡した。


 ……それにしても、この人は何の疑問も感じずに能力判別を行ってくれるよな。

 客自体が少なくて、俺が異常なことに気が付いていない可能性もある。


「んがぅっ、ふぅー……。終わりました。冒険者カードをお返し致します」

「ありがとう。助かった」


 神父から冒険者カードを受け取り、早速冒険者カードの確認に移る。

 さて、どんな能力値になっているだろうか。



―――――――――――――――


【クリス】

適正職業:農民

体力  :20 (+77)

筋力  :18 (+91)

耐久力 :16 (+69)

魔法力 :4 (+10)

敏捷性 :11 (+20)


【特殊スキル】

『毒無効』


【通常スキル】

『繁殖能力上昇』


―――――――――――――――



 これは――大幅に上がってるぞ!

 全体的に10から20ほどステータスが上昇し、たくさん採取できるリザーフの実のお陰で、筋力に関しては40近くも上昇している。


 能力値だけでいえば、プラチナランク冒険者くらいの能力値をしているのだろうか。

 グリースの能力を調べておけば良かったと少し後悔しつつ、どのランクぐらい能力値があるのかどうか、後でギルド長の副ギルド長に聞いてみようか。

 

 それから……俺自身の能力値なのだが、前回に引き続きかなり上昇した。

 まぁただ、これだけの魔物を倒して、この能力上昇幅なのはどうなのかとも思わなくもないけど、それでも地道に俺自身も成長できている。


 さて、現状の能力値の確認はできたし、ここからはお待ちかねの植物の識別の時間。

 まずは一度家に帰り、天日干しにしてある五種類の自家栽培植物を食べて、また戻ってくる予定。


 俺の希望としては、天然物と同じく1上昇してくれれば満足なんだが、普通に0もありえるのが怖い。

 ここまでの努力が無に帰さないことを祈りつつ、俺は家へと戻った。



 スノーの相手をしつつ、四種の有毒植物とジンピーのポーションを一つずつ摂取してから、すぐに教会へと戻ってきた。

 神父も驚く様子もなく、淡々と能力判別を行ってくれる。


「ふっ、はっ! ふぅー。……終わりました。冒険者カードをお返し致します」


 俺は冒険者カードを受け取り、大きく深呼吸をしてから確認した。



―――――――――――――――


【クリス】

適正職業:農民

体力  :20 (+79)

筋力  :18 (+93)

耐久力 :16 (+70)

魔法力 :4 (+11)

敏捷性 :11 (+34)


【特殊スキル】

『毒無効』


【通常スキル】

『繁殖能力上昇』


―――――――――――――――



 おおっ! 全ての能力がしっかりと上昇しているし、体力と筋力は2。

 敏捷性に至っては4上昇している。


 天然物のジンピーのポーションの上昇値が2だから、単純に二倍ということだろうか。

 一方で耐久力と魔力は1しか上昇していないが、1でも十分すぎる成果。

 耐久はゲンペイ茸で魔力はエッグマッシュと、キノコ類は栽培が楽だしな。


 個体差があるのか、固定なのかはまだ分からないが、その辺りは今後調べていけばいい。

 自家栽培した植物は天日干しにいて、かなりの数保管してあるし――今後も順次育っていく。


 部屋で育てていることもあり、流石に自家栽培で全て賄えることは難しいだろうが、森に行って採取するという行為はかなり減らせると思う。

 俺としては森に行って採取するという行為自体も好きなので、これが嬉しいことかと言われると微妙だが……。

 その分の時間を別のことに使えると思えば、有意義にことを運ぶことができる。



 それから、続けて副ギルド長に採取してもらったヴェノムパイソンの毒を飲んで、三度目の能力判別を行った。

 結果は……残念ながら能力の上昇はなし。


 やはり毒自体にというよりも、毒を保有できる植物が潜在能力を秘めているということなのだろう。

 ヴェノムパイソンの毒は別の用途で使っていくとして……。


 最後はグリースから生えたオンガニールの実の識別だ。

 果たしてどんな能力が付与されるのか、楽しみと共に――あの実を食べないといけない恐怖もあるな。

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