第74話 大収穫
カーライルの森に入って、一週間が経過した。
森の深い位置且つ、ゴブリンの巣を改良して拠点を作ったということもあり、人間と遭遇しなかったのはもちろんのこと、魔物にも襲われることもないまま、無事に最終日を迎えることができた。
オンガニールについてだが、特に変わった症状は出ずに今日まで元気に過ごせている。
ただ初日で見つけたあのオンガニール以降、一本も見つけることができずに一週間が終わってしまった。
成果は初日に採った一つの実と、昨日再び同じ場所から採ってきた一つの計二つだけだが、カーライルの森にオンガニールが自生しているということが分かっただけでも十分収穫だろう。
その他の有毒植物採取も順調で、リザーフの実はペイシャの森で採取できていた三倍ほど採取でき、逆にレイゼン草とゲンペイ茸は半分ほどに収まってしまったが……。
新種の有毒植物を、合計二十種類採取できている。
その二十種類の中に、シャンテルが危険な有毒植物の一つとして挙げていたトゲトゲの植物。
ジンピーも混じっているのだが、これは未だにどうしようか悩んでいる。
シャンテルが注意するべきと言っていた植物の三種類の内、二種類がリザーフの実とオンガニールだ。
となれば、このジンピーの葉も凄い効能を秘めているのではと勘繰ってしまい、思わず採取してきてしまったんだよな。
シャンテルが言っていたように、葉っぱ全体に無数の棘がついていて、どう考えても食しようがないように見える。
一応、天日干しにしてみたけど、まだ肌に刺さるくらいトゲトゲしているし……持ち帰っても邪魔になるだけなら捨ててしまうべきか?
拠点を離れるギリギリまで、そうこう悩んだのだが……結局俺は持ち帰ることに決めた。
ヘスターなら、もしかしたら良い打開策を提案してくれるかもしれないし、シャンテルも何か方法を知っているかもしれないからな。
ということで、全ての植物を大きな鞄へと詰め、俺は一週間滞在したカーライルの森を後にした。
こちらは大収穫だったが、はたしてラルフとヘスターの方はどうだろうか。
初日は問題なく依頼を受けられていたし、その後も二人が森に来ることはなかった。
……もしかしたら、俺を見つけることができなかったパターンもあるが、何事もなく過ごせていると信じたい。
二人についてを考えながら、カーライルの森からオックスターへと戻ってきた俺は、そのままの足で『木峯楼』へと戻ってきた。
カーライルの森は小川や池などの水場が多く、拠点近くにも比較的大きめの池があったため、体は毎日拭いていたのだが……それでもいち早くシャワーを浴びたい。
その一心で二〇一号室の部屋の扉を開けると、そこにはくつろいでいるラルフとヘスターの姿が見えた。
「ただいま。二人共、無事だったか」
「クリス、無事に帰ってきたか! ああ、初日以降は全く絡まれてないぞ。遠巻きにクスクスと笑われ続けてはいたけどな!」
「笑われるくらいなら好きにやらせておけばいい。俺達は今までも笑われ続けてきたしな」
「へへっ、そうだな。俺もヘスターも全然気にしちゃいないぜ!」
「それで、クリスさんの方はどうでしたか? 何か収穫はありましたか?」
「あー……。とりあえず大収穫だったとだけ伝えておく。話の前にシャワーを浴びさせてくれ。帰ってくる前に色々と念入りに洗ってきたが、危険な植物を採ってきたから二人に被害が出ると怖い」
「おいおい! 許可なんかいらないから早く入ってくれ! てか、そんな危ないもん部屋に持ち込むな!」
「仕方ないだろ。外に置く場所なんてないんだしな。実だけだし、袋に入れて密封してあるから多分大丈夫だ」
とはいっても、近づくことすら駄目というシャンテルの言葉と、ゴブリンを宿主として生えていたあの光景から鑑みても……。
とてつもなく危険な植物だということは容易に想像がつく。
このオンガニールの実は、はたして一体どんな効能を持っているのか。
早く効能を探りたい好奇心に掻き立てられながらも、ひとまず体を洗い流すためにシャワーへと向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます