2クマ
僕がクマの着ぐるみを着た日からはや2か月。あの日は後から「クマの日」と呼ばれるようにり、学校はしばらくその話題で持ちきりだった。だけど、今では何事もなかった(?)かのように静かなものだ。組のみんなも最初は不思議がったりからかったりしていたが、いまでは着替えを手伝ってくれたりクリーニングに行ってくれたりしてくれる。
そんな僕の朝のルーティーンは着ぐるみを着始めてから増えた。
1.起きる
2.組のみんなに挨拶
3.朝ご飯を食べる
4.歯を磨く&顔を洗う
5.制服を着る
6.着ぐるみを着る
7.行ってきます
と、ほとんど毎日この繰り返しだ。
なぜ着ぐるみを着ているのに制服を着るのかだって? それはね……気分……。
まぁ、それはそれとして、みんなが怖がらなくなってくれたのは良いことだ。でも、大変なこともある。それは着ぐるみが重くて蒸し暑いということだ。
僕の着ている着ぐるみはクマというシンプルなものだが10kgもの重さがある。それを毎日、登下校で1時間。学校で7時間。計8時間も着続けている。授業中は座れるとはいえ、空気が逃げないので中がすごく蒸れる。こんな生活を2か月も続けているからか体重はごっそり減り、体中に筋肉が付いた。(それは嬉しい)もうすぐ初夏。このままでは倒れかねない。
これは早急にどうにかしないと……。
そんなことを思いながらその日は眠りに落ちた。
~ ~ ~
次の日。僕は今日も変わらない一日を過ごすものだと、そう思っていた。だけど違った。なんと転校生が来るというのだ。それも女の子! しかもそれだけではない。隣の県から親の転勤の都合できたといっていた。ということはつまり……僕のことを知らないはず! たぶん……。
ガラガラ。
先生の軽い説明があったあと、教室の扉が開いた。
「かわ!!」
「かわいい~!」
「おっふ」
入って来た女の子の風貌にクラス中が黄色い声に包まれるが、僕と翔くんだけは顔を見合わせ血の気が引いた。入って来たのが知っている顔だったからだ。だけど知り合いではない。最初に彼女を見たのは組の若頭に見せてもらった写真だった。
高橋組の組長の娘。高橋
「初めまして。高橋 夢です。皆さんとなれ合うつもりはありません」
彼女はそれだけ言うと軽くお辞儀をした。
クラスはドン引き。先生も顔が引きつっているが、
「た、高橋さん? みんなとはなかよくしよーね」
先生は彼女の家のことを知っているだろうからか、強くは言えないのだろう。
「席はあそこのクマの着ぐるみ着てる子の右後ろね」
「分かりました」
僕の……右後ろ……だと!?
おそらく僕の名前はもう知ってるはず。こんな近い席になったら何をされるか……。
それに気のせいかもしれないが、強い視線を感じる。彼女が教室に入って来てからずっと。この見た目からなのか、それとも中身が僕だからなのか……(たぶん両方だよなぁ)
はぁ、また厄介の種が増えてしまった……。
クマな弟 琥珀 忘私 @kohaku_kun
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