第7話:初めてのインタビュー

 店長に電話をしたら、即答で取材OKだった。店の場所を店名を入れることが条件だったけど。



「桜庭くん、テレビの取材が来るなんてすごいね!」


「あ、ども……俺も一体なにが起こっているのか……」


「あ、もう、仕事は大丈夫だから、テレビの人の対応したら」



 バイトの他の二人の女の子は大学生。仕事にも慣れているので快く仕事を引き受けてくれていた。ああ、今度なにか奢らないといけないなぁ。



「神庭くん、頑張って! お店宣伝してね♪ 『彼女いますか?』ってきかれたら私って答えといていいよ!」


「姪浜さん、勘弁してください」


「そうよ! 彼女は私ってことで!」


「藤崎さんも乗っからないでください」


「ちえー」



 大学生の女の人に揶揄われる高校生……相手は高校生なので手加減してほしい。そんな揶揄いに耐えられる耐性はないのだから。



 ***



 普段ならばこの時間ならば店の電気は落とされている。今日は取材のために、女性2人、カメラマン1人の三人の人と、俺が店に残っている。


「一緒に働いている人」ということで、姪浜めいのはまさんも藤崎ふじさきさんもちょっとだけ取材されていた。


 彼女たちは悪い乗りして、「仕事中もずっとカッコいいと思ってます」とか「口説いているんですけど、中々落ちてくれません」とか、あることないこと言って散々かき回して先に帰って行った。


 どうすんだこの雰囲気。



「では、インタビュー始めさせていただきますね」



 女性レポーターがにこやかに始める。場所は店のテーブルを使われてもらっている。



「年齢は?」


「17歳、高校2年です」


「お名前は?」


「神庭……神庭紀一郎です」


「あ、お名前はテレビに出しても大丈夫ですか?」


「あ、はい」



 この時 俺は、完全にテンパっていた。緊張のあまり、なんでもYESと答えていたのだ。このあとなにが起こるとも考えもせずに。



「アルバイトは長いんですか?」


「1年ちょいです」


「女性のお客さんも多いと聞きます」


「かわいいお店ですからね」


「神庭くん目当てのお客さんも多いじゃないですか?」


「ははは、まさか」



 そんな訳がない。皆さんパンとコーヒーを楽しみに来ているに違いない。料理もケーキもあるし、明らかに女性客が多くて当たり前のお店だ。



「なんでアルバイトをしているんですか? 欲しい物があるとか?」



 別のことを考えていたのと、緊張からか普段なら絶対言わないようなことを言ってしまった。



「母が入院中なので、家計の足しにしたいと思ってます。妹も今度高校にあがるので」


「え? だからアルバイトを!?」


「はい、事情を話して担任の先生からも許可を取っています」



 しまった。言わなくていいことだった。


 うちは母子家庭なので、母さんが入院しているというのは家計に直撃する大事件だった。一応、健康保険の制度が使えるのと医療保険に入っていたので、すぐにどうこうなる程ではないけど、美沙姫みさきも心配するだろう。


 俺がある程度 現金を持っていたら、いざというときに助けになると思ってバイトを始めたのだ。母さんもずっと入院している訳じゃないけど、1年で2度も入院したので、ちょっと心配ではあった。


 そして、このインタビューが原因で数日後、教室で事件が起きてしまう。

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