第6話
僕はゴブリン型の
「……絶対に、式村君をルリちゃんとデートさせません」
うーん、僕としては別に東郷とどうしてもデートをしたいわけでないんだけどな。それに関しては星嶺さんの盛大な勘違いだ。
だけど、ここまで必死になるってことは何か別の理由があったりするんだろうか?
「ねえ、星嶺さん、そんなに僕と東郷がデートするのってダメなの?」
「……そ、それは」
「当たり前っす」
星嶺さんが答える前に東郷が僕と星嶺さんの会話にはいってきてキッパリと肯定する。
「自分らみたいなかわいい女子とデートなんかして、式村先輩が自分はモテるんじゃないかなんて勘違いなんてしたら大変じゃないっすか。それに血迷った先輩が自分らに襲いかかってきても危ないっす」
「……そうですよ。こ、これは後輩を守る先輩としての行動で、式村君のことがどうたらってことじゃ全然ないんですからね」
「僕のことをどうたら?」
星嶺さんの言ってる意味はよくわからないけど、後輩を守るためにデートを潰そうという思いと覚悟だけは十分に伝わってきた。
ただ、そんなに僕って酷いのかな。
僕は自分のことを中の中あたりの普通男子だと思っていたけど、下の上あたりの不細工男子に格下げしといた方が良さそうだ。
因みに、僕の中で下の中以下というのは、親にそっと整形代の請求書を送るレベルの不細工だ。
多分、そこまでではないだろうし、この顔に愛着もあるから下の上あたりでは踏み止まっているはず。
よし、この認識でいれば、僕の精神的被害は最小限ですむはずだ。
だけど、なぜだろう。
ちょっとだけ泣きたい気分だ……って、そんな場合じゃなかった。
「……跳び膝蹴りからの旋風脚!」
星嶺さんの操る魔影の華麗な足技が発動する。
なんとか僕の魔影は避けたけど、僕は戦闘とは違うところが気になってしょうがない。
いくらファンタジー染みた格好をしていても
ということは、足技を繰り出す度に短めのローブからチラチラ覗く白い生足も星嶺さんと一緒ということ。
旋風脚なんて、連続した蹴りをだそうもんなら、だんだんとローブの裾が上がっていって際どい部分まで見えちゃいそうって……おっ!
「星嶺先輩、式村先輩が先輩の魔影の生足をゲスな目で見てるんで気を付けた方がいいっすよ」
「きゃっ!?」
かわいい悲鳴をあげて星嶺さんの魔影が短いローブの裾を押さえる。
「……あの式村君、どこまで見えました?」
「わりと手前までかな、な~んて」
どこまでを手前と定義するかは個人の自由だし、僕だってこの程度のごまかしは出来るんだ。
そんな僕を星嶺さんが追撃してくる。
「……色は?」
「水色」
僕の返事を聞いて、星嶺さんが茹でたタコみたいに真っ赤になる。
うわーん、誰か僕に嘘のつき方を教えて!
「セクハラ発言で、あーさの足技を封じるなんて、やるわね、式村君」
「会長、僕にその気はないんで、そんなイメージを植え付けないでください」
少し視線がそこに集中しただけでセクハラ男子なんて不名誉を授かることになったら、今後の僕の学校生活に支障がありすぎる。
「って、式村君、隙あり。ファイアボール×3」
「会長、わざわざ声をかけてたら奇襲にならないっすよ。
「おっと、危ない!」
会長の魔法はかわして、東郷の矢は剣で叩き落とす。
「式村君て、本当に器用に避けるよね」
「レベル2のくせにやるっす」
悪かったな、低レベルで!
東郷の矢をことごとく打ち払い、会長の魔法を避けまくる。
赤面から復活した星嶺さんも加わって3人がかりで僕を襲ってくるが、僕はなんとかかわしている。
そろそろ避けるのもしんどくなってきたけど、東郷の矢も尽きそうだし、会長の魔力も底が見えてきているはずだ。
「うーん、魔影の身体能力はレベルに準じるはずだから、これは式村君の魔影の扱いが上手過ぎるというべきかもね」
なんか会長からは褒められてるっぽいし、タイミング的には悪くない。
これはそろそろ終われるんじゃないかな。
「会長、もう満足したんじゃないですか?」
「そうね。このへんで終わってもいいんだけど、みんな楽しそうだから続けよっか」
マジですか。
「そんなぁ」
僕がそんな情けない声をあげると、同時に僕の背中にゾワワって悪寒が走る。
会長、東郷、星嶺さん、B研のみんなの魔影は僕の視界内。
悪寒は僕の背後、何もいなかったはずの空間から漂ってきていた。
えっ、何が起きるの!
よくわからないままに、とりあえず全力で回避する。
「ん、何を…きゃっ」
「うっ!」
「……!」
僕が回避行動をとると、ゴブリンを倒したときの会長の魔法の数倍はありそうなエフェクトが発生する。
見ると、3人の魔影が跡形もなく吹き飛んで、3人とも気を失って地面に倒れていた。
身体は無事だから魔影によるものだとは思うけど、なんだったんだ、今の攻撃は!
レベル2桁はある魔影をまとめて3体も一撃で始末できる攻撃なんて聞いたこともない。
僕は攻撃の出所に視線を向ける。
『……』
そこにいたのは見たこともないような豪奢な杖を持った不気味な骸骨の魔影だったけど、あれ? なんか生身の方の僕自身と目があった気がするような……。でも、魔影に人間は見えないはずだし、気のせいだよね。
そんなことを考えている間に、骸骨の魔影はどこかに消えてしまっていた。
「今のは何だったんだろ?」
気にはなりながらも脳パン状態で気を失っている会長らを放置することも出来ず、僕はその場にとどまることしかできなかった。
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