第5話『社長14階 殺し屋5階 警察・ヘリ到着まで5分』
殺し屋が各階層を探しながら五階に到着した頃、もう安全だから出てきても大丈夫だと社長に伝えた。
「ほんと? 本当にもう大丈夫?」
「はい、殺し屋は社内にまだいますが非常階段を降りています」
「まだ危険ってことじゃあないか。いつになったら出てってくれるのさ……」
偶然だが、社長と同じことを俺も考えていた。ダンボールの開封、各階での社長を探すことで時間が大量に消費された。殺し屋は、社長がもう社内にいないと考えてもいい頃なのに一向に社内から出ていこうとしない。これは外で殺し屋の仲間が社内から誰か出てくるのか見張って、逐一情報を教えている可能性も考えられる。つまり脱出成功するまで、殺し屋は社内から出て行かないということだ。
しかし、時間の経過により、こちらにも有利なことがある。警察・ヘリが到着するまで残り五分を切ったのだ。
「ねえ、まだエレベーター使っちゃダメかな?」
ダンボールから出てきた社長に訊かれる。出てくる時に思いっきり転んだせいで、ダンボールがひしゃげてしまう。他に隠れられそうなダンボールはもうないというのに何をやっているんだという苛立ちが漏れそうになる。
「ああ、そういえばまだ教えられてなかったですね。エレベーターに棒みたいなもの挟まれてるせいで最上階から動かないですよ」
「えぇ、嘘でしょぉ」
「嘘じゃありません……あ」
扉が何回も開け閉めしていたせいだろうか。棒が外れていた。
「その反応。実はもう動くようになってたりするね?」
変なところで勘がいい。
「はい。棒が外れていました」
「なるほど……えい!」
社長がエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが最上階から十四階へ向けて動き出す。
「社長! 勝手に何やってんすか!」
「普通に走ったって追いつかれるぐらいならこっちにかけるよ!」」
社長の言う事もわからないでもない。しかし、状況が悪い。殺し屋が下の階にいて、今降りては待ち伏せされる可能性がある。
エレベーターが到着する。殺し屋は今一階に続く階段を降り始めた。
このままでは待ち伏せどころか、単に鉢合わせるだけに終わる。
社長がエレベーターに乗り込む。
「社長! 今、一階に殺し屋がいます! すぐにそこから降りてください!」
社長は閉まる扉からすり抜けるように脱出する。既にボタンは押していたらしくエレベーターは一階に下っていく。
一階に到着した殺し屋は動くエレベーターに気づいたようで、その前で待ち構えていた。
予定よりも少し早く警察が到着するのが見えた。
警察と殺し屋、互いに互いの存在を認識する。
殺し屋はエレベーターが開いた瞬間に何かを投げ込み、そのまま非常階段から上へ逃げ出す。警察もそれを追いかける。外へ逃げないところ、殺し屋も殺しを達成しなければ跡がないのだろう。
あとはフリーになったエレベーターを使って逃げればいいと考えていたら、エレベーターが突如として爆発した。先ほど殺し屋が投げた何かが爆発したらしい。おかげでエレベーターを使うという手段が使えなくなってしまった。
つまり、社長が逃げきる手段は一つ。
「今すぐ非常階段から屋上に向かって走ってください!」
「へ、ここから?」
「ヘリで脱出します! 死ぬ気で走ってください!」
「めちゃくちゃ遠いよ……?」
「つべこべ言わずさっさと走れや!」
「はいぃぃぃぃぃ!」」
最後の逃走劇が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます