第4話『社長15階 殺し屋15階 警察・ヘリ到着まで20分』
防火シャッターを下ろし、逃走までの時間的猶予ができた。
しかし、三つ問題点がある。
一つ目、シャッターが暗殺者の手によって、力づくで開けられそうだということ。
二つ目、暗殺者の足の速さが尋常ではないこと。
三つ目、社長に逃げる体力がほとんど残っていないこと。
このまま素直に一階まで駆け下りようとしても途中で追い付かれるのが関の山だ。しかし、このビルで隠れられそうな場所はどこだ。社長といえど、どこにでも入れるわけではない。カードキーの登録が終わっていない部屋がほとんどだ。だから、一人で満喫するという我儘を言ったのに社長室でくるくると踊るしかなかったのだ。
ビルの中で隠れられそうな場所を探す。
社長が入れる場所は、社長室、エレベーター、非常階段、あとはトイレぐらいのものだろう。その中ならばトイレが最有力だが。トイレは逃げ場がない。空間を作るという意味では防火シャッターを全階下げるという荒業もあるが、エレベーターの主導権は殺し屋が握っているため、それもままならない。
他になにかないのか。
防火シャッターが開かれる。
俺はあるものを見つける。
ダンボールだ。機材搬入用で大きく、中身は空。加えて中身がまだ取り出されていないダンボールも山ほどある。その中に上手く紛れることができるのならば、社長の体力回復までやり過ごすことができるだろう。
「社長。次の階で降りてください。そしたら空のダンボールが一つあるのでその中に隠れてやり過ごしてください」
「だ、ダンボール? 僕はそんなに身体柔らかくないよ」
「安心してください。社長の体もすっぽり入るサイズです」
「わ、わかったよ。次の階だね」
社長が上を向く。どうやら非常階段の扉が開かれたようだった。
「うわ、早く逃げなきゃ」
社長がヨレヨレの足を回して、十四階まで急ぐ。
到着した社長に「その先のダンボールです」と指示を出す。
ダンボールの中に入り、蓋を閉める社長。外からテープとかで塞ぐことができればよかったのだろうが、それは叶わない。外からは見えないようにしたとはいえ、封をされていないのに閉じられているダンボールというのは違和感がある。
バレないことを祈ろう。
暗殺者が十四階フロアに足を踏み入れる。
他の階と違い機材搬入途中でダンボールが多く並んでいることに暗殺者も気になったようだ。手始めにといわんばかりに一番近くのダンボールの封を解いて開ける。そこには中身が詰まった機材が入っているだけ。その次、その次と開けていく。同じく封を切って開けるものもあれば、もうすでに封が切られて空のものもある。
まるでカウントダウンのような開封であった。
一つ、また一つと社長の命に近づいていく。
途中、開封する手が止まる。
半分ほど乱雑に開封したあとのことであった。
もうここにはいないと考えたのか開封を止め、反対側の非常階段へと進み、階段を降りていった。
俺は安堵した。
殺し屋が次に開封するダンボールが社長のものであったからだ。
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