第98話

「そんでマイは何でこんなとこにいたんだ?」


「…………通りすがりに、この方が襲われてたので助けました……」


 最初の間は何だ?! しかも歯切れ悪いな?!


「そ、そうか……この街は冒険者も多くて治安が悪いからな……」


「忠告通りでした。他にも襲われてる現場があったので全て


 ナニを? とは聞かない。


「ご、ご苦労だったな……もう躊躇いはなさそうだな」


 マイはもう大丈夫だろう。俺の手から巣立った。


 しかし、前に来た時はそんなに治安は悪くなかったんだがな……。


「はい! これも全てエルク様の指導の賜物です!」


 俺は必ず玉を潰せとは言ってないが、自信がついたのは良い事だな。


 それに俺のが潰されたわけじゃねぇし。



 それより、このアヘ顔で気絶している女性だ……教会の関係者であれば関わり合いたくない。


 エレナさんに情報が行くと厄介だからな……。


 シスターなのだろうか? それにしては服装が豪華なような気もする。


 顔は──


 涎を垂らしてるし、ニヤけてるしで色々と台無しだが、銀髪のかなりの美人さんだな……アヘ顔だが……。


 体はビクンッビクンッ、と動いているな……。


 ちなみにスラッとしている。


 おっぱいは──


 ──?! これはまさか隠れ巨乳?!


 俺の目は誤魔化せんぞッ!


 着痩せするタイプかッ!?


 マイを先に冒険者ギルドに向かわせて、俺がおんぶで教会まで運べば──


 密着して正確な大きさがわかるかもしれんな!


 ピコンッ


『おい、そこの変態』


 変態言うなッ!



『そいつだぞ?』


 その言葉を見て一気に俺の頭は冷える。


 マジかよ……俺ってば、聖女にアヘ顔させてたのか……。


 それより、噂話にあった聖女と遭遇するとか勘弁してくれよ。


 正体は絶対にバレたくないな。


 しかし、聖女を無防備な状態でこんなとこに置いておくわけにもいかんな……。


「この人どうしましょうか?」


が教会まで運んでやってくれるか? 運んだら冒険者ギルドに来てくれ。それとこれ大事な事だから念の為に言っておくが、俺が仮面を被っていたのは内緒だ。俺はここには来ていない。OK?」


 そう、俺はここには来ていない。そして、アヘ顔の聖女なんか見ていない。


「わかりました! 秘密の組織ですもんねッ!」


「あ、あぁ……そうだ。頼んだぞ!」


 秘密の組織にしなければなるなくなったのは今だがな……聖女に粗相を働いたと知られれば、必然的にエレナさんに報告が行くだろうしな。



 俺は1人先に冒険者ギルドに向かう──



 とりあえず、関わらないようにしないとなッ!


 ピコンッ


『どうせまた会う事になる』


 最後にミカに予言まがいの事を言われた──


 大体今までミカの言う通りになってきたからな……なんとか再会は回避したいものだ……。



 ◆──マイ視点──



 まさか、こんな場所でエルク様と出会う事になるとは……。


 私はへの道を調べ上げる為に移動をしていました。


 エルク様の言う通り、とても治安が悪いです。


 中には犯される寸前の人もいました。


 力の無い人は有る人に搾取される──


 それは転生して生活していく上で認識していました。


 ですが、私には力が有ります。


 女性の尊厳を己の欲を満たすために踏み躙る輩に神様が天誅を与えてくれないなら──


 私が人誅をッ!


 私は怒りに任せて潰しまくりました。20人を超えた辺りからは数えていません。


 最後に仮面の男──まぁ、エルク様なのですが……。


 血が上りすぎてエルク様と気付かずに攻撃してしまいました。


 エルク様は不思議な方です。


 普通であれば強者であれば、覇気があります。


 それを感じられないのです。


 でも、それが恐ろしくも感じます。


 先程の戦いでは本気を出しました。


『雷化』は私が新しく作った奥の手の魔術です。


 体は脳からの電気信号を使って命令をして動かします。


 その電気信号に出来るだけ近付けて、無理矢理に体を活性化させて動かす魔術です。その効果はティナちゃんの速度に達します。


 その攻撃でさえ、エルク様には通用しませんでした。


 搦手でなんとか捕まえてトドメを刺そうとするも、最後の最後にエルク様はされます。



 この時、悟りました。


 これがこの方の覇気だと。


 まさか腰が抜けそうになるぐらい立つのが困難になる力をお持ちだとは思いもしませんでした。


 しかも、とてもエッチな気分にさせてくれました。


 エルク様は女性を惹きつける力があります。その為、そういう覇気になってしまったのかもしれません。


 異世界ですから、そんな事もあるでしょう。


 しかし、危うく気絶するか、自我が飛ぶかと思うぐらいでしたが……。


 それと同時に思います──


 このエルク様でも『慈愛の誓い』に勝てないとは、どんな化け物なのかと。


 私もまだまだ強くならなければなりませんね。


 とりあえずはエルク様の威圧に耐えられるぐらいにならないといけませんね。今度お願いしてみましょう。


 そうすれば更なる高みに行けそうですッ!



 それと──


漆黒の守護者ブラックガーディアン】ですか……なんとも厨二心をくすぐる名前です。


 裏の番人であり、裏の守護者──


 秩序のない裏世界──そこから守る、ダークヒーローのような組織なのでしょう。


 エルク様は元々、スラム育ちです。力の無い者の為に行動しておられるのは知っています。


 実際に【絆】という裏組織も、その為に作られたはずです。


 日陰者でも構わない──


 それでも出来る限り救いたいというエルク様の気持ちが汲み取れました。


 なにより、私の今回の行動の心意気と力はエルク様に認められました。とても嬉しいです。


 これで本当の仲間として見られたという事なのだと思います。


 そういえば、この件は皆に話したらダメなのでしょうか?


 皆、同じ心意気を持っているし、強いです。


 きっと話しても大丈夫ですよね?


 口止めされたのは今おんぶして教会に運んでる人だけですもんねッ!


 しかし、この方は胸が大きいですね……。


 そんな事を考えながら歩いていると──


「ん、あ…おんぶされてる? 貴女は助けてくれた方ですよね?? 仮面の人は??」


 振動で起きたようでした。


 仮面の人ですか……これは絶対に話してはいけないと念押しされていますからね。


「気が付かれましたか? 仮面の人は私が追い払っておきましたよ?」


 そう言った方が無難でしょうね。


「本当なのですか? ……あの方──強いがあったので、私も手助けしようと思っていたのですが──まさかである私が威圧だけで気絶するなんて未だに信じられません……」


「まさか、聖女様とは……ご無礼を……」


 私は聖女様を下ろして跪く。


 それよりも魔の気配? エルク様に?


 エルク様は人族と聞いているからなぁ……エルク様って基本的にスケベだからその事を言われてるのかもしれませんね。


 実際に聖女様はあので気絶されてましたしね……エルク様のお力はやはり凄まじいですね。


「顔を上げて下さい。貴女は窮地に陥った方を救おうとする素晴らしいお方です。私は貴女に救われたのです」


「そ、そんな大層な──」


「いえ、これはきっと神様からのお導きでしょうッ! 私はフローラと言います。お友達になりましょうッ!」


「へ? あ、はい。私はマイです」


 もう少し立場を気にした方が良いとは思いますが……気さくな方だなと思いました。


 しばらく雑談した後、聖女様を教会に送り届けてから私は冒険者ギルドに向かいました──

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