第97話

 ミカの指示する場所に到着すると──


 男達が股間を押さえて地面でのたうち回っていた。


 女性は2人いる。1人はおそらく被害者だろう。服装的に教会のシスターかな?


 もう1人は俺の知ってる人──


 だ。


 その姿は凛としていた。


 状況的に女性を助けたのだろうが……他に方法はなかったのだろうか?



『手遅れか』


 男の方がな……。



 マイは俺の存在に気付き、こちらを見据える。


 凄い殺気なんだが?


「マ──?!」


 ──うおッ!?


 マイに声をかけようとした瞬間──


 一切躊躇のない無慈悲な金的蹴りが来た。


 マイは『雷魔術』を付与しているせいかめちゃくちゃ速い上に、足から紫電を放っている。


 ピコンッ


しろ』


 え? あ、仮面してたんだった!?


 ミカに言われるまで気付かなかった。


 仲間だと思って油断していた。回避は間に合わない。仮面を股間に移動させてる暇も無い。


 これは──潰される!?


 こんな所で男の娘になるわけにはいかんッ!


『身体強化(極)』からの──あそこの部分強化ッ!


 更に『血相術』で股間に血流を集中ッ!



 今の股間なら耐え切れるはずだッ!



「──潰れろッ!」


 マイの蹴りが俺の股間に直撃する瞬間にバックステップで飛んで衝撃を少しでも減らす──


「痛ッ────ガハッ……」


 多少痛い程度で済んだッ!


 だが、そのまま吹き飛ばされて壁にめり込んだッ!


 背中に激痛が走っているッ!


 これでマイは奴隷紋の痛みで動けなくなるはず──



『前に模擬戦の為に?』


 そうだったァァァァッ!!!!


 でも、これは息子の命の危機だろ?!


「──潰れろッ」


 壁にめり込んだ状態で無慈悲な金的蹴りが再度迫る──


 さっきからマイさん潰す気満々だ!


「ちょ…、待…て……──?!」


 あ、これマジでやべぇわ。


 スローモーションに見える。


『はぁ……貸し一つな?』


 ミカの表示と同時に目の前に分身体が現れる──


「ぐあぁぁぁぁぁァァァァ────」


 必殺の金的蹴りが股間に当たると分身体は叫び声を上げる。最後は声にすらなっていなかった。


 仮面から涙っぽい物が流れている。


 1号か2号のどちらかはわからんが助かったッ!


 ミカ様、ありがとうございますッ!


『……一応、あそこを強化してるし、『魔力具現化操作』で守ったはずなんだがな…………マイ恐ろしい子……』


 確かにッ!


 あそこに俺が倒れてると思うと血の気が引きまくりだッ!


 って、そんな事考えてる場合じゃねぇッ!


『身体強化(極)』と『血相術』を使って壁から抜け出す。


「──『雷化』────」


 マイさん……それ初めて見る技なんだけど?


 マイは一瞬で目の前に移動して拳を乱打してくる。


 俺はかろうじて回避と防御をして捌き続ける。



 ──マジか、ティナ並の速さ?!


 ミカとの特訓で未だにティナの速さについていけてないんだぞ?!


 エロ覚醒してなかったら詰んでるんですけど?!


 おっぱいが拳を振り抜く度にバルンバルン揺れて眼福ですがねッ!!!!


 ガン見だよ、ガン見ッ!



『遊んでると死ぬぞ。息子が』


 遊んでねぇよッ!


 おっぱいに目が行くのは本能だッ!


 それより、文字が邪魔だってッ! 前が見えないからッ!


『次の覚醒はよ』


 そんなもんねぇよッ!!!!


? 本能を解き放て、其方は絶倫王だろう?』


 偉いさんの言い方すんなッ!


 しかし、このままではいずれ息子が殺されてしまう。


 今もギリギリの状態だ。


 こんなとこで終われねぇッ!


 俺、いつか──田舎で綺麗な嫁さんとラブラブしながらエッチするんだ。


『息子の死亡フラグだな。というかお前のスキル的に普通の女は抱けないからな?』


 うっさいッ!


 じゃあ、誰が俺と甘々ラブラブしてくれるんだよ?!


 とりあえず──胸を揉めば動きは止まるだろう。


 情けないが、これが俺の精一杯だ。


 俺に掴めないおっぱいは無い──


「──取った────」


 ここから一気に揉みしだくッ──


「この変態がッ! ──『紫電』──」


「──マジかッ?!」


 マイは俺の行動より早く、雷魔術で細い紫電を作り出して網のようにして捕縛する。


 体が痺れて動けん……。


 金的蹴りが迫る──


 マイ……何故そこまで金的蹴りに拘るんだ……。


 せめて感じさせる事が出来ればなんとかなったのに──


 ん?


 あぁ、ミカの言った事がわかった。


 やってみる価値はあるだろう。


 俺はある程度、制御出来るようになった『』を解放する──


「──く、こ、これはいったい……」


 マイは動きを止める──


『おぉ、更なる覚醒が──キタァァァァァァァァァァァァッ! それはまさしく『絶倫王の』だな!』


 …………変な名前つけんなよ。後テンションたけぇよ……。


 ふと、マイが助けた聖職者っぽい女性が目に入る──


 アヘ顔で気絶していた。



 マイは気絶はしていないが──


 顔は真っ赤になり──


 はぁはぁ、と息が荒く──


 股間を押さえながら俺をキッ、と睨んでいる。



 どう見てもしている。



 堪えるマイさんは可愛すぎるな……。


 威圧か……俺の知ってる威圧と大分違う気がするんだが?


 ピコンッ


『威圧では無い。【絶倫王の威圧】だ』


 お前、そこ推してくるなぁ?!


 これは女性を無力化するのにかなり有効な手段だな。俺まで興奮してしまうデメリットもあるが……。



 今のマイがオークに襲われた女騎士さんのような状態になっている。今にも「クッ、殺せ」とか言われそうだ。


 ちなみに余談だが、田中太郎氏が書いた本に記載されていた。



 しかし、何とマイに声をかけたら良いのだろうか?


『決め台詞はよ』


 お前は相変わらずだなぁッ?!


 とりあえず、『絶倫』スキルを制御して仮面を外し、マイに声をかける──


「マイ、俺だ」


「エルク様?!」


「何故そんな仮面を?!」


 グハッ


 俺だって、こんな仮面を好きでつけてるわけじゃないやい!


 しかし、なんと答えたら良いんだろうか?


『こうなったら、【漆黒の守護者ブラックガーディアン】に引き込め』


 何でやねんッ!


 いや、誤魔化すには丁度良いのか?!


 どうせ組織に入ったとして、何かするわけじゃないしな!



「……マイ、俺はお前をしていたのだ」


 俺はミゼリーの時のように真剣な雰囲気にする──


「試験?」


「そうだ。俺は裏の秩序を守る── 【漆黒の守護者ブラックガーディアン】という組織を作った。その組織には力は当然ながら──弱き者を救う心意気が必要だ。マイ、お前にはそれがある。力も示した。どうだ? 入らないか?」


「──?! 裏の秩序を守る組織?! 何それ?! 凄く格好良いですッ! 入りますッ!」


 おぉ?! なんか上手くいった?!


「──わかった。お前には期待している」


「はいッ!」


 ふぅ……一件落着だ!


 後は皆と合流するだけだな、と思っているとマイから質問された。


「──その変な仮面も組織専用なんですね?! 私の分の制服と仮面もよろしくお願いしますねッ!」


「わ、わかった。ちゃんと用意しておく」


 勢いで返事したけど──


 マイの言葉で組織のメンバーは仮面必須になってしまった件について!


 使う機会が無い事を祈ろう……。



「それで何をする組織なのですか?!」


 凄く期待している眼差しだ……「何もしない組織だ」とは口が裂けても言えない。


 ミゼリーに言ったような言葉を言うしかない……。


「俺達は裏の番人であり、裏の守護者──それが【漆黒の守護者ブラックガーディアン】だッ!」


『決め台詞乙www』


「さすがエルク様ですッ! ──この命、組織のトップであるエルク様に捧げます」


 ミカは爆笑してるっぽいし、マイは重い……。



 2人の温度差が酷いッ!



 というか、アヘ顔で気絶してる聖職者っぽい女性をどうするよ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る