第89話

 漆黒の守護者ブラックガーディアンとノリで言ってみた言葉にミゼリーさんが反応してしまった。


 これはどう答えれば良いのだろうか?


 冗談で言いました、と正直に言うか?


 ──いや、ここはこのまま話を合わせるべきかもしれない。


 そうすればミゼリーさんという強力な味方が出来る事になる。敵に回らなければ問題無いしな。


 それに【絆】を手伝って結果的に為に動いているのも事実だから嘘は言っていない。


 裏から表を守る【絆】、その裏を守る為の【漆黒の守護者ブラックガーディアン】か……うん、良いかもしれん。


 表はミゼリーさんに『慈愛の誓い』を誘導して貰って動いて貰えば敵無しではなかろうか? 最悪、俺から遠ざけて貰えれば被害は無いしな。


 妙案だなッ!


 当然、俺がこの組織のトップになる。と言ってもミゼリーさんが入っても2人だけなんだがな……。


 何をすればいいか全くわからんがな……これまで通り普通に生活すればいいだろう。


 フランからその内また依頼が来るだろうしな。


 さて、トップが今までのように威厳が無いのはダメだ。


 ここはビシッと言うべきだ。


「……ミゼリーさん──いや、ミゼリー。【漆黒の守護者ブラックガーディアン】は見過ごせない悪を滅ぼす為の組織だ(今決めた)。『慈愛の誓い』は抜けなくても構わないがバレてはいけない。それでも構わないのであれば──来るか?」


が貰えるなら」


 ご褒美? 確かに給金は必要だな……。


 しばらくは今まで貯めた金もあるし大丈夫だろう。


「俺の為に働けば──補償しよう。どれぐらいの金額を希望する?」


 ミゼリーは口元を三日月状にする。


「言質はもらった。。お金なんていらない」


 ──しまった?!


 まさか、そっちだとは!?


『相変わらず見てて飽きない。詰めが甘いwww』


 うっさいわッ!


 まぁ、今の所──抱けるのがミゼリーしかいないしな……『絶倫王』を成長させる為にも必要だろう。



 これはお互いの利害が一致しているから問題ない。


「わかった。なら俺の為に行動しろ。そうすれば──最高の快楽を与えよう」


 今度ヤる時は薬無しで逝かせてやる。


 後ろから最高の一撃を突く事を約束しよう。


「楽しみ。これからどうすれば良い?」


「とりあえず、『慈愛の誓い』に戻って動向を調べて俺に報告してくれ。邪魔をされると困るからな。それと魔契約破ったら悪魔出てくるって話だけど、ミゼリーなら倒せるか?」


 今、ふと思ったのだが──


 魔契約って『慈愛の誓い』のメンバー以外を抱いたら発動するんだよな?


 悪魔だけならミゼリーがいたら狩れるんじゃね?


「了解。1人じゃ厳しい。魔契約を破ったら──皆に知らせる術式が組み込まれてるから、皆来る」


 何だってェェェェェッ!?


 このセキュリティ半端ねぇ!?


 …………完全に詰んでる……しかもミゼリー1人で倒せないようなレベルの悪魔とか最悪だな。


 やはり、強くなるしかないな……。


「そ、そうか……」


「じゃあ、また来る」


 ミゼリーはその場から『転移魔術』で消える。



 ピコンッ


『セフレ兼ストーカーのミゼリーが仲間になった』


 属性が物騒だな……。



 とりあえず、ミゼリーが上手くやってくれれば当面の脅威は過ぎ去るはずだ。



 さて──


 王城に向かうか。



 ◇◇◇



 王城に到着し、姿を消して謁見の間まで向かうと──


 何やら揉めていた。


 ミカさん説明プリーズッ!


『既にロッテの解放の許可は得ている。揉めているのは解放後の処遇だ。王はロッテを隠し子だという事をバラし、王女として引き取ると言い、アリアはそれに対して断固拒否をしている感じだ』


 なるほど!


 険悪な雰囲気で非常に出辛い。


 だが、予想通り──王はロッテを引き取ろうととしているな。


 王女として迎え入れてくれるなら、これから先も安泰だろ。


 何でアリアはあそこまで頑なに断っているんだ? 俺はロッテの意志を尊重するように言っているはずなんだが。


 1号も黙ってないで何かフォローしろよな……。



 ロッテが仲間になったら爆乳押し付けられて、俺の理性がガリガリ削られるんだぞ?


 それはマイだけで十分だ……。



 とりあえず、話に介入するか……どうせ平行線だろうしな。


 こう、何かインパクトのある登場方法とかないかな?


『宰相の生首を投げ入れろ』


 なにそれ怖い。


『王はロッテが狙われている事を知っているからこそ我が子を引き取って自分の手で守ろうとしているわけだ。このまま引き取られたら軟禁生活は間違いない。それはお前も望むところではないだろう?』


 生首を見せる事で軟禁生活を回避出来るのか?


『ふッ、当然だ。だから早く生首を投げ入れろ。ちゃんと決め台詞も言うんだぞ!』


 お、おおぅ。だが、いきなり生首は投げ入れねぇぞ?!


 まずは姿を現す──


「エルク」

「エル兄ッ」

「「「エルク様ッ」」」


 ライクさん、ティナ、マイ、アリア、ロッテ、ギルマスが俺を見て笑顔を見せる。


 ギルマスが何故か『様』付けで呼んでいるのはこの際棚上げしよう。



「王よ──この国の脅威は去った。裏切り者の首はこれだろう?」


 ふッ、決まったな。


 俺は生首を王の前に放り投げる。



「其方は──……そうか……やはりな……ロッテを頼む……」


 へ?


 何故か頼まれた上に納得した顔をされたんだが?!


『お前が『』だと分かったからだろ』


 なるほど。


 さすがに王とは面識があるからな。バレても仕方ないな。


『勝手に『幻影魔法』を解除して髪色を元に戻しておきました(てへぺろ)』


 はあぁぁぁぁぁぁぁッ!? お前何してくれてんの?!


 ギルマスが俺の姿見ながら「許して下さい。勘弁して下さい。殺さないで下さい」とか呟いて平伏してるのはそのせいか!?


 とりあえず、今はロッテを返品せねばッ!


「いや、そこは本人の意思に任せましょう。ロッテはどうしたい? もう危険は無いと思うし、王女としてやっていくのも悪くないぞ?」


 もう軟禁生活もしなくて済むはずだ。王女というステータスは誰もが憧れる。


 きっと、ここに残ってくれるだろう──


「私はエルク様とずっと一緒にいたいですッ!!!!」


 え?


 続いてマイが告げる──


「私達もロッテさんが仲間になるのを望んでいます」


 え?



 俺の予定と違う!?



 どうしてこうなった!?



 ピコンッ


『当然、散々情事を見させられた私からの仕返しだが? ざまぁw』


 何で俺がお前にざまぁされなきゃいけねぇんだよ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る