第85話

 ◆──ティナ視点──


「足りない──」


 まだまだ力が足りない。


 私は荒野で訓練を黙々とこなしていく──


 エル兄がいなくなって1週間が経った。


【深淵】──


 今までは噂でしか知らなかった。


 でも、まさか私の必殺技の不意打ちを防ぐ程の猛者が裏組織にもいるとは思わなかった。


『傀儡』のリリーは奇妙な技を使ってきた。私は本能でなんとなく何か来ると思って避けていた。


 エル兄は糸を使っていると言っていた。その糸で人を操っているという事だ。


 エル兄と戦っている時はそれを攻撃として使っていた気がする。


 私は強いと思っていた。エル兄を守れるぐらいの力があると──そう思っていた。


 でも、エル兄が結果的に【深淵】の2人を退けた。


 それに『慈愛の誓い』の1人がエル兄を取り返しにきたから勝負しに行ったと聞いた。


 1号の話では1ヶ月ぐらいは帰れないかもしれないと言っていた。


『殲滅』のミゼリー。まさしく化け物の1人だ。


【絆】のラウンズであるアリア姉を無傷で倒すなんて私でも無理。むしろ搦手を使われたら私が負ける可能性すらある。


 もっと強くならなくちゃダメ。


「ティナちゃん、10日後に王城に向かうみたいですよ」


「マイ姉……わかった」


 ロッテ姉を奴隷から解放する為に謁見すると言っていた。


 1号が交渉するらしい。


 これについては問題ないと1号もアリア姉も言っていた。


 私とマイ姉はもしもの時の為に護衛として付いていく事になっている。


「……ティナちゃん……あまり無理すると体壊すよ?」


「マイ姉も訓練してるの知ってる」


「……まぁね……何も出来ずに気を失うとは思わなかったからね……『慈愛の誓い』は今の私達では相手にすらならない……アリアさんも隠れて訓練してるみたいよ?」


「皆で強くなる。エル兄は誰にも渡さない」


「そう、だね! 戦闘訓練もだけど、エルク様が帰って来られたら──満足させてあげる為に夜のご奉仕も訓練もしましょうねッ!」


「それは大事。きっと『殲滅』のミゼリーが来る事はエル兄の計算内。勝てる自信があるから行った」


「そうです! きっとしれっと帰ってきますよ! なんせ『先見』のエルク様ですから! さて──模擬戦しませんか? 私も強くなりたいので」


「望むところ」


 私とマイ姉はストレスを発散するように周りの被害を度外視して訓練をする──


 途中でアリア姉も参加して国の兵士が出動する事態になった。


 でも、アリア姉ので兵士達は顔面蒼白で帰っていった。


 さて、帰ったら舌の使い方練習しなきゃ──




 ◆──エルク視点──



 気が付けばミゼリーさんが目の前にいて、恥ずかしそうに頬を赤らめて声を殺していた。


 ちなみに俺はひたすら腰を振ってパンパンッ、と音を鳴らしていた。


 正直、久しぶり過ぎて体が止まらん……。


 更に言えば──


「──くぅ、ん、んふ、あッ、ふ、んん」


 ミゼリーさんが感じているのを堪えている声に興奮しかしない。


 しかし、逝かせてはいないのはわかる。なんせまだ恥じらいがあるからな……たぶん普通に正気なんだろう。


 俺はずっと逝き続けているせいか、ベッドとミゼリーさんがネバネバで凄い事になっているが……。


 それより、何で意識を取り戻したんだろ?


 それにどれぐらい意識を失っていた?


 けっこう体力を消費しているんだが……。


『丸3日だな。意識を取り戻したのは『健康』が頑張った結果だな。私が効果を底上げした』


 なるほど。どうやらミカの底上げした『健康』が丸3日かけて頑張った結果──意識だけを取り戻した感じなのか。


 3日って……お腹とか全然減らないんだが……興奮してるからか?


『あの薬には栄養もたっぷり入ってるいるし、お腹が減らない仕様だ。1週間ぐらいは余裕で持つぞ』


 マジかよ……。


 このヤりたい衝動に駆られてずっと腰振ってるんだがどうにかならないの?


 ミカさんや、どうやったら体自由になるの?


 反撃出来ないんだけど……というか、この薬の原液ヤバくね? 気持ち良過ぎて腰を動かす度に絶頂するんだが?


『うむ。そういう薬だからな。諦めて、そのままヤり続けろ。その内『健康』がある程度抵抗してくれる。お前ならまだまだ行けるだろ?』


 確かに丸3日ヤった割に俺の下半身は元気過ぎる。


 薬の強壮作用の効果もあるのかもしれないが、異常だ。


 まさか──


 欲求不満が俺を次の段階まで押し上げてくれたのか!?



『そんな事どうでもいいから、とりあえず──早く勝負をつけてくれ。童貞がひたすらヤり続ける素人のAVを永遠と見てる気分だ。お前は猿かッ!』


 俺は童貞でも猿でもねぇよッ!


 AVて何だよ?!



「エル……もっと…もっと、激しく──」


 ミゼリーさんの艶っぽい声が聞こえてくる。


 まだまだ余裕そうだ。


 だが、意識を取り戻した以上──このまま終わるつもりは毛頭ないッ!


 俺にはがあるからなッ!


 ハズレ枠の無い【祝福ログインボーナス】がなッ!


 ピコンッ


『待て、もうすぐ加護がする。後4日待つんだ。きっと良い物が当たるはずだ。そこから一気に決着をつけろ』


 なんだと!? 加護が進化?!


 それはかなり期待出来るな。ミカの言う通りにするべきだな。


 残り4日──


 とりあえず、本能のまま腰を動かすか……。


 体が自分の意志で動くようになったら──



 俺のターンだッ!



 4日も俺の体力が持つのか不安だがな……。


『身体強化(極)』の部分強化はここぞという時に残しておくか。


「あん、あ、うッ──強く──もっと、強くッ……激しく…来て……」


 …………とりあえず普通の『身体強化(極)』を発動だ──


 するとミゼリーさんは「ふぉ?! あはッ♡ もっとぉ〜♡」と少し大胆になり、更に感じさせる事に成功した──



 俺の戦いは始まったばかりだ────

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