第83話
「賭け?」
「賭けです。ミゼリーさんがこのまま俺を連れ去ろうとしたら全力で抵抗するつもりです」
「あまり傷付けたくない」
ミゼリーさんは人付き合いが苦手な人だけど、俺に対してはとても親切だし、思いやりもある。敵には無慈悲だが……。
唯一コミュニケーションが取れる俺を無碍にしないはずだ。
ミゼリーさんに賭けを持ち出した時点で俺は戦闘という手段は諦めている。
これから提案する勝負にはきっと乗ってくれるはずだ。
「だからこそ、戦闘以外で賭けをします。ミゼリーさんが勝てば俺を好きにしていいです。連れ去っても構いません。逆に俺が勝てば──見逃してもらえませんか? 俺はまだ旅をしたいんです」
「……勝負の内容は?」
「勝負の内容は────ミゼリーさんの媚薬を飲んで──最後に立っていた方が勝者です」
この危険な媚薬を飲む理由は──
一応、俺には作戦があるからだ。
ミゼリーさんの媚薬は強壮作用、そして体を敏感にさせる効果が通常の物よりかなり強い。まぁ、強壮作用が強すぎて自我が飛ぶんだがな……。
体を敏感にさせる効果は俺の追い風になるはず。
俺の策に抜かりはないッ!
『結局ヤるのかよ』
当たり前だろ!? それしか切り抜けられないんだからッ!
「その加護は使うの?」
ミゼリーさんに分身体を使うかどうかの事を聞かれた。
正直、使いたいが──アリア達のフォローに分身体は回したい。
やるなら本体の俺だけになる。
それにここでミゼリーさんを俺が倒せなければ──この先、確実に詰むからな……。
実力を試すッ!
「必要無いですね。正々堂々勝負です」
「望むところ。久しぶり過ぎて楽しみ。勝ちは貰った」
「余程の自信ですが、俺はもうあの頃の俺ではありませんよ?」
「エル──忘れたの? いつも最後に腰が砕けているのはエル。それは変わらない」
「俺の本気を見せてあげますよ。では誰にも邪魔されない場所でヤりましょう」
「わかった」
ミゼリーさんは素直に頷いてくれた。
後は──
「賭けをする前に少しやる事があります。付き合ってもらえますか?」
「やる事?」
最優先でやるべき事は、ここの後処理だ。犯罪者が牢屋を抜け出した状態で遠目からこちらを伺っている。
脱獄させるわけにはいかない。
「えぇ、犯罪者を逃すのは不味いですから──────?!」
ミゼリーさんは爆裂魔法である『フレアボム』を多重展開して犯罪者を爆散させる。
容赦が全く無いな……生き残りはいるのか?
ミカ──
『生き残りは0だ』
中には強者もいたはず……それを一瞬で殺すとは。
知ってはいたが、やはりミゼリーさん強すぎる……。
「──これで問題ない。早く賭けをする」
「まだです。俺達が城に来た目的がまだ果たせていません。俺とミゼリーさんとの賭けが始まれば、そちらに干渉出来ないので指示だけ出させて下さい」
俺は1号と2号を呼び出す。
「それがリーシェが言ってた偽物? 不思議な力……限りなく本物に近い……これは加護?」
「……そうですね。加護です。1号はマイとティナの介抱を頼む。2号は入り口で待機しているアリアを呼んでくれ」
「「了解」」
1号はマイとティナを1箇所に集める。
2号は入り口に向かって走り出す。
そういえば、ミゼリーさんはどこから入ってきたんだ? 普通に来るならアリアと接触しているはずなんだが──
「入り口? そういえば、ちょっと強い子がいたけど、ボロ雑巾にしておいた」
「え? アリアを倒してここに来たの??」
「通してくれなかったから仕方なく。殺してないから大丈夫。エルの昔の仲間でしょ?」
「──?! もしかして知ってるんですか?」
「私は知ってる。こそこそ動いてる事が多いから監視してた。他のメンバーも勘づいてるとは思う。今回もそれ関係で動いていたんでしょ?」
監視されていたのか……全くわからなかった……つまり、裏の仕事に関しては泳がされていたわけか。
でも、ミゼリーさんは裏の仕事の事は他のメンバーに話していないっぽいな。
助かる。【絆】だとバレたらとばっちりがフランのとこへ向かうからな……。
しばらくすると、2号がアリアを担いで戻ってきた。
アリアはボロボロになっていた。
【深淵】と【絆】の精鋭も『慈愛の誓い』の前では無力なんだな……。
アリアは起きる気配が無い……。
「……ミカから連絡を寄越すから後は任せた。皆には『帰れなかったらごめん』とだけ伝えておいてくれ」
俺は1号と2号にそう告げる。
まぁ、後やる事と言ったらロッテの奴隷からの解放と事情説明ぐらいなんだが1号やアリアに任せれば問題ないだろう。
俺は賭けに負ければ戻れないかもしれない。
その時はアリアにマイ達を託そう。
「「本体……」」
1号と2号は気の毒そうな顔をしている。
俺がこいつらの立場であっても同じ顔をしているだろう。
俺とミゼリーさんは歩き出す──
『死地へ向かう勇者みたいだな。賭けの内容が糞過ぎるがな』
うっさいわッ!
お前もそれしか無いって勧めてただろがッ!?
『まぁ、ミゼリーはエッチに関しては中ボスみたいなもんだし大丈夫だろ。問題はお前が久しぶりだって事ぐらいだな』
……しまった──それは失念していた!?
◆
「うぅ……」
「お、マイ起きたか」
「エルク様──じゃないわね」
「1号だ。これで全員目が覚めたな」
私が周りを見渡すとその場にはアリアさん、ティナちゃん、1号がいました。
他に気配が無い?
囚人達は全員が死んでいる?
「それじゃあ、お前らが知りたがってる本体の事を話すぞ? ──本体は自分を犠牲にしてお前達を救った」
「エルク様は死んでないですよね?! 生きてますよね?!」
私は咄嗟に声を上げます。
「そう、だな。生きている。だが、戻ってくるかは賭けだな……本体が機転を効かせていなければこの国は消滅していたかもしれん」
「生きているなら良いんです……今すぐ助けに行きましょうッ!」
「マイ姉、今の私達では無理」
「マイさん……残念ながら相手は『慈愛の誓い』の魔術師──『殲滅』のミゼリーです。私も全力で戦いましたが全く歯が立ちませんでした……」
裏の世界で生き抜いてきたティナちゃんとアリアさんが言うのであればそうなんでしょう……ですが、このままだとエルク様と会えなくなってしまう──
「まぁ、マイの気持ちはありがたいが──現状、俺達は消耗している。万全であっても負ける可能性が高い相手に今挑むのは却下だ。本体の策が上手くいけば──1ヶ月以内には戻ってくるはずだ。これからの事を伝えておく────」
1号はこれからの事やミゼリーという方の話をしていきます──
私達は協力してロッテさんを奴隷から解放する為に動くように言われます。
1号がエルク様の代役を務めるそうです。
エルク様は『慈愛の誓い』のメンバーである『殲滅』のミゼリーという方と賭けをする為にこの場を離れたそうです。
単純な戦闘ではまず勝ち目がないと判断したエルク様の機転です。
賭けの内容を聞くと──
「足腰が立たなくなるまでヤり続けて、最後に立っていた方が勝者という賭けだ」
なんとも羨ましい……ですが、私はここで魔契約があるのに出来るのか? と疑問に思って聞きます。
「あれは本体の浮気防止の為にかけられた魔契約だ。『慈愛の誓い』には効果が発揮されないようになっている」
まさかの浮気防止の為に魔契約を?!
エルク様は確かにエッチな方ですが、そこまで束縛しないとダメなんでしょうか??
それと気になるのは──
確か、『慈愛の誓い』のメンバーには毎晩襲われたと聞いています。それとずっと搾り続けられたと……。
それでも『慈愛の誓い』の人達は満足していなかったと聞いています。
エルク様も満足してないから浮気防止の魔契約を受けたんでしょうか?
確かに隙を見つけては本番無しの娼館などに行こうとしていたぐらいですからね……。
それに私達が夜中に出し続けても底無しです。
きっと賭けには勝って帰って来られるでしょう。
こうしてはいられませんッ!
私達も特訓ですッ!
満足感、そして出させる速度を上げなければッ!
【おまけ】
エルク達が去った後の謁見の間にて──
ライク「……お前が襲ってたの近衛騎士団の男ってわかってるよな? 発情すんなよ?」
ギルマス「いや、あそこに女もいるぞ? さっき拘束した時におっぱいがあったからな」
ライク「何気に胸触ってんじゃねぇよ。この変態がッ! ……可哀想に……それで涙を流してるのか……こんなゴリラに揉まれたらそりゃ、ショックだよな……」
ギルマス「失礼なッ! 拘束する為に鎧を脱がさなければならなかったんだッ!」
ロッテ「まぁまぁ、今はとりあえずちゃんと見張りをしましょう。ギルマスさん、これポーションです」
ギルマス「お、すまんな嬢ちゃん。なんな普通のポーションと違う味だな……。良ければ今度一緒にご飯どうだ?」
ロッテ「ふふふ……飲みましたね? 変態は滅びなければなりません。それは今開発中の不能薬です。とある方の為に作ったのですが、良い実験台ですね♪」
ギルマスは顔面蒼白になる──
1週間ほどギルマスのあそこは使い物にならなかったそうな……。
尚、この薬の開発理由は──
抜けなかった時に朝勃ちでエルクが苦しまない為に作られたらしい。
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