第81話
見える──
糸が見えているならば避けられる。仮に捕まったとしても斬れば良い。
ミカ様のお陰っす!
しかも随時、『マップ』で周りの状況も確認出来るとか反則だろッ!
分身体が王をアリアの元まで無事に運び終わったようだし、遠慮なく戦えるぜッ! すれ違った事にすら気付かなかったがな!
これなら残り5分程度なら余裕で時間を稼げる。
『身体強化(極)』とおっばいセンサーがあればリリーに喰らいつけるはず。
それにリリーの攻撃は単調で読みやすい。
ふははははは──
来た──
俺の無双の時代がッ!
もしかしたら俺だけでも勝てるかもなッ!
「──急に動きが変わった? しかも獣人と違って避けるんじゃなくて斬っている? 私の攻撃を見切っているの?! ──?!」
俺はリリーの後ろに回る。
「──ふッ、何回も同じ事が通用すると思うな? 俺にはお前程度の攻撃など見切る事ぐらい造作も無い」
いつか一度は言ってみたかった台詞が言えたッ!
ミカ様々だぜ!
「さすがは私の見込んだ男。必ず──連れ帰るッ!」
リリーは動きが鋭くなる──
糸の速度が上がったな。
だが、これぐらい──
ヒュンッ、と音がした瞬間、俺の服が裂けた。
……へ? これってミカがさっき言ってた糸の攻撃??
「へぇ、こういう使い方も出来るんだ♪ 強度も変えれるのか〜。痛いかもしれないけど、後で治してあげるからね♪ えいッ♪」
俺は迫る糸を剣で斬ろうとすると──
ガギンッ、という音と同時に頬に痛みが走る。
手元の剣を見ると折れていた。
冷や汗が流れる。
もしかして──糸を攻撃に使える事を完全に認識したのか?
『お前が調子に乗ったせいでな』
俺が煽ったせいでリリーの凶悪性が増した件について!
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい──
今までは死ぬような攻撃じゃなかったから余裕があったけど、こんなもん喰らったら痛いぐらいじゃ済まないんだがッ!
死ぬ気で時間稼ぎをしてマイに託すしかねぇ。
戦闘が始まる前にマイが魔力の伝導率の高いミスリルが必要だと言うのでリーシェさんのサブ武器であるミスリルの魔剣を2本と鉄球を『無限収納』から出して渡しているが、あれをどう使うんだ?
「魔力が効かないなら、物理で攻撃すればいいんですよ」
とか言ってたから、投げるのか?
糸が邪魔するから生半可な攻撃じゃ通用しないぞ?
俺はマイを見る──
マイは俺が渡したミスリルの剣を2本ともこちらに向けていた。
その剣の間には鉄球を浮遊させている。
目を瞑って集中している事から、まだ準備は終わってないようだ。
魔力に余裕が無いが──足に『身体強化(極)』の部分強化するしかない。
残り5分だッ! 踏ん張れ俺ッ!
そして笑顔だッ!
余裕を見せろッ!
◆
王様を救出した後は、ティナちゃんがリリーの相手をし、私と分身体達は犯罪者の相手をします。
1号はティナちゃんに「俺達が戦うと掻き消される。ティナ、本体が来るまで粘ってくれ」と言いました。
私の魔術は『傀儡』のリリーにより掻き消されます。
つまり、魔術を無力化する加護、もしくはそれに類似する魔道具を持っている事になります。
この際、1号が犯罪者達を裸体の女性に変えた事は置いておきます。
私と1号達で犯罪者達を蹴散らしてティナちゃんを見ると何かを避けるように戦っていました。
私は何かあると思って、魔力を目に込めて見ると──
魔力で出来た糸をティナちゃんは避けています。
つまり、この糸を使って人を操る事が出来るのでしょう。
これを掻い潜って攻撃を当てるのは至難です。
しかも、魔術を無力化するのがとても厄介です。
この時──
前世の有名な偉人の言葉が思い浮かびました。
『魔術が効かなければ、物理で殺せばいいじゃない』
私にはそう聞こえてきました。きっと食べ物の格言だったと思いますが……。
見た所、魔術のみが無力化されていました。ティナちゃんの攻撃は避けていましたからね。
そんな事を考えていると、エルク様が到着されました。
エルク様は何もかもわかっているような素振りでした。私に魔術を撃たせて確認作業をされます。
そんなエルク様でも魔法を無力化する能力をどうするか悩まれていました。
そこで私はエルク様に耳打ちします。
前世の知識に『
これは確か2本のレールに違う方向の電流を流して磁場を作って弾丸を発射させる技術だった気がします。
私は他の魔術師と違ってイメージだけで魔術が放てます。
出来るかどうかわかりませんが、やってみる価値はあります。
確実に効果があると思って、エルク様に進言すると──
エルク様は「──マイがなんとか出来ると言うのであれば出来るだろ。必要な物は一応あるぞ」と言って出して下さいました。
私は魔力の伝導率が高いミスリル製の剣2本と、弾丸にする鉄球を頂くとエルク様はティナちゃんとリリーの戦闘に介入します。
お借りしたミスリルの剣がレールの役割を担ってくれるはずです。
私は全属性の魔法が使えます。
『雷魔法』を電流に変換して磁場を作り出します──
かなり制御が難しい──
暴発する可能性が高いです……ですが、ここで失敗は出来ません。
集中しているとリリーからエルク様を連れ去るというキーワードが聞こえてきます。
ここで負けたらエルク様は連れ去られてしまいます。しかも結婚させられるッ!
私達のエルク様は誰にも渡しませんッ!
私達は皆、エルク様が大好きなんですッ!
ロッテさんが正式に仲間になったら、祝杯を上げるんですからねッ!
満場一致であそことあそこを擦り付けるって皆で決めているんですッ!
横から掻っ攫うような女狐は許しませんッ!!!!
必ず『
消し飛ばすッ!!!!
そして、ロッテさんのローションを使ってたくさんサービスして私達も気持ち良くなるんですッ!
あぁ、きっと気持ち良いはず……全身で触れ合いながらの疑似体験──
きっと至福しかないでしょうッ!!!!
気が付けば──
目の前の磁場が安定し、魔力の制御が上手くいっていました。
これでいつでも放てる準備が出来ました。
怒りとエロは人を進化させるんですね。
後はエルク様の指示を待つのみです。
エルク様は不可視の糸攻撃を避け続けていました。
どうやらティナちゃんよりエルク様を脅威だと判断したようです。
糸を凄まじい速度で操って攻撃しています。
四肢を切断してでも連れて行く──そんな気迫を感じました。
その時、エルク様と目が合います──
これは『放て』という合図に違いありませんッ!
「──『
電流を弾丸の後方に流すと鉄球は周りを巻き込みながら進みます──
案外、生半可な知識でもなんとかなるもんなんですね。
◆
5分経ったが──
糸とレイピアの波状攻撃でマイに合図を送る暇がねぇよ……。
ピコンッ
『マイが裸になっているッ?!』
なんだとッ!?
俺はマイの方を振り向く──
裸じゃねぇじゃねぇか!?
どういうつもりだコラッ!
『合図を送りたかったんだろ? 今ので攻撃が来るから頑張って避けろ』
は?
「──『
マイがそう呟くと、鉄球が物凄い速度でこっちに向かってきた──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます