第80話

「今回は失敗しないもん! 私も強くなったし──絶対に結婚するもんね♪ 愛の巣はどこにしようかな〜♪」


 リリーは俺を拉致する気満々だな……。


 どうしてこうなったんだろ?


 なんか今回の件でそれしか言ってない気がする……。



 とりあえず、戦うにしても最低でも後10分ぐらいは時間稼ぎが必要だ。


 このまま惚けてくれないだろうか?



『ちなみにティナはもうすぐ魔力切れだから頼るなよ? 死ぬぞ? 分身体も魔力に戻されるから使えん』


 マジか……俺1人でなんとかするしかねぇな……今のリリーに10分の時間稼ぎはかなりキツいんだが……。



「さぁ行っくよ〜ん♪」


 リリーはレイピアを俺に向けて突き刺してくる──


「これぐらいならなんとか──?!」


 なんとかなると思っていると俺の右腕に違和感が走る──


♪」


 まさか、この違和感はリリーの仕業か?!


『違和感の上辺りを斬れ』


 俺は言われるままに剣を振るうと違和感がなくなる。


『これが操る種だ。魔力で出来た糸を作って操る』


 不可視の糸とか避けれんだろ……。


「厄介な攻撃をしてくるな……」


「ありゃ? 2回目だしバレてる?」


「あぁ、俺には通用しない」


 ミカがきっと糸の場所を教えてくれるはずだッ!


 ピコンッ


『ふッ、私の出番のようだな(キリッ)』


 あー、文字でお前がドヤ顔なのはよくわかったよ。


 頼んだわ。



「そっか……でも負けないッ! 絶対捕まえて帰る──」


 リリーは再度俺に向かって攻撃を仕掛けてくる──


『右、上、下、下、左、上、右斜め上──』


 ──わかるかッ!


 俺は一旦バックステップで後ろに下がる。


 そういえば、何故ティナは操られていなかったんだろ?


『単純にお前が弱いからだろ』


 お前の指示じゃ避けられんわッ!


『やれやれ。加護の『傀儡』にはスキルの『魔力糸』『操作強化』などが含まれている。簡単に言えば、魔力を糸に変えて、それを繋ぐ事によって操作を行う。更に言えば、『魔力糸』はもっと熟練度を上げれば攻撃にも使える。不可視の切断攻撃みたいな事が出来るぞ? ちなみにティナは野生の勘でその糸を避けていた。あの幼女自体は『操作強化』しているが、実際の所はティナよりは弱い。仕留め切れなかったのは『魔力糸』のせいだ』


 ……なるほど、それと不可視の糸か……『魔力糸』とやらをなんとかしなければ難しいな。


 というか、昔そんなに強くなかったのにな……使い方を極めて行けばどんどん強力になるんだな……。


『その通り。使わなければ熟練度は上がらない。『慈愛の誓い』が強すぎるのは長生きしてる上に使いまくってるからだな』


 その言い分だと、俺が勝てる日が来るとは思えないんだが?


『ふッ、お前には夜の覇者になる才能が眠っているだろうが。捕まっても返り討ちにするだけの絶倫力があれば問題ない』


 いや、お前格好良い感じで言ってるけど──


 要は戦闘では勝てないからベッドの上でエロい事して勝てと言ってるようにしか聞こえて来ないんだが?


『だって、お前のスキルって全部エロい系に使えるのばっかだしな』


 ……いやいや、そんな事ねぇだろ!?


『例えば良く使ってる『隠密』とか『気配遮断』とかお前がエロい事に使うなら夜這い専用間違いなしだろ』


 んなわけあるかッ!


 というか戦闘時のフォローしてくれよ!


『と言われても──『魔力分解』もあるからな……あれは空気中にある魔力を使った現象は魔素に分解されるというシンプルな効果なだけに強力だからな。弱点は効果範囲が限定的という事ぐらいかな。ちなみに破るには分解速度を超えるだけの魔力を込めた攻撃をするのが1番だが、現状無理だしな。マイの考えた作戦通りにやるしかないだろう。『身体強化(極)』なら『魔力分解』の影響は受けないし、時間稼ぎぐらいは出来るはずだ。『幻影魔法』も周辺は掻き消されて効果は薄いから使っても意味ないぞ』


 ……ミカがまともな助言をくれている?!


『ふッ、私はお前の守護霊みたいなものだからな。ちなみに戦わずに切り抜ける策が1つだけある。これはだがな』


 守護霊?!取り憑いてるの間違いじゃないのか?!


 まぁ、それはいい。


 それより──


 戦わなくて済むだと!?


 教えてくれッ!


『そのまま捕まれば良い。後処理はアリアに任せれば問題ないだろ』


 ……それは確かに戦わずに済むな! アリアなら上手くやってくれる気がするし!


 でも──


 俺捕まったら結婚させられるじゃん?!


『そこがミソだな。お前にはだろ? という切り札が』


 それはつまり──


 初夜で抱いた時に『慈愛の誓い』のミゼリーさんと爵位持ちの悪魔さんを呼び出すという事ですかね??


『うむ。まさしく。その後に逃げれるかどうかは知らんがな。待ってるは──色欲という名の拷問か、それとも自由かの2択だな』


 ……まさしく最終手段だな……ミゼリーさんに捕まればあの生活に戻るのか……。


 ここは死ぬ気で頑張るしかねぇな。


『まぁ、私もお前の活を見続けるのは嫌だから『魔力糸』の場所ぐらいはわかるようにフォローしてやる』


 性活言うなッ!


 俺だって嫌だってのッ!


 というか『魔力糸』の場所がわかるように出来るなら始めからしてくれよな!?


『いや、今思い付いたからな。その代わり──お前は『身体強化(極)』だけで乗り切れ。他のスキルは私が優先して使うぞ』


 わかった──



「どんどんいっくよ〜♪」


 リリーがこちらに向かって攻めてくる──


『──スキル『マップ』及び『幻影魔法』を融合──術者エルクの右目に付与する────これで捕まったらお前カスだからな?』


 カス言うなッ!


 ──それより糸の場所がわかるッ!?


 俺の視界には糸がどこにあるのかわかるぞッ!


『マップ』って地図みたいなスキルだと思ってたが、部屋の構造もわかるのか。しかも『幻影魔法』で糸の場所もわかりやすくしてくれている。


 これがスキルの合わせ技か──凄いな。


『3Dでお届けしています』


 なにそれ?!



 でも、これなら時間を稼ぐぐらいは問題ない──

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