第78話
「いったいどうなっている!? 近衛騎士団が消えたと思ったら、目の前には裸体の美女達!?」
宰相は混乱している。
そりゃあそうだろう。いきなり自分を守る者が消えたように見えたんだからな……俺のせいで……。
まぁ、ギルマスが防御無視の凄い活躍で組み伏せているから捕縛も時間の問題だな。やり方が酷いが……1人でもなんとかなるぐらいだ……。
これがギルマスの実力なのだろう……たぶん。
しかし、姿が変わっただけで近衛騎士団に変わりはない。
気になる事が2つある。
まず、この近衛騎士団の強さだ。
ラウンズであるアリアやAランクであるライクさんが手こずるレベルの近衛騎士団がいるとか明らかに普通ではない。
もう一つ気になるのは近衛騎士団の表情だ。無表情で、ただ宰相の命令に従っているような感じだった。
これは洗脳されているのか?
操られた上で強化もされている?
ミカは【深淵】がいると言っていた。
1人だけこんな事が出来る奴を知っている。
『傀儡』のリリーだ。
ミカは地下牢に来いと言っていた。
こいつは人や魔物の強さを限界まで引き出して操る事が出来たはずだ。
地下牢には犯罪者が大量にいるはずだ。操られれば厄介だ。
もうすぐこっちの戦闘は終わる──
「こんな所でやられてたまるか──」
宰相は逃げ出そうと走り出す。
「アリア、逃すな」
「承知」
アリアに宰相を逃がさないように指示を出す。
こいつは事情を知っているはずだからな。
「ぶふぇ──」
アリアの蹴りが直撃して宰相はボールのように転がって気を失う。
死んではいない。たぶん。
「エルク、こっちも終わったぞ」
「ありがとうございました。では──解除」
俺は『幻影魔法』を解除する。
「──こいつらは近衛?! 裸体の美女達はどこに行ったのだ!?」
ギルマスは何が起こったのかわかっていないようだった。
ライクさんはメリルちゃんの件で知ってるから普通だ。
ギルマスから呟きが聞こえてきた。
「まぁ、良い。美女達の裸体を拝めたし、好きなだけ抱きつけたし、さりげなく揉めたからなッ!」
近衛騎士団達よ……哀れなり……。
ちゃんと見てなかったけど、ギルマスはどんな事して無力化したんだよ……無表情だった顔が苦痛に歪んだ顔に変わっているんだが? 中には涙を流してる奴もいるぞ?
「そんな事するからモテないんだよ……。そういえばギルマスはけっこう攻撃受けてたが大丈夫なのか?」
なんやかんやでリンチにされてたし、奮起した後も攻撃を受けながら無力化してたからな……。
普通に戦えばかなり強いと思うんだが……。
「ふッ、俺の加護の前では、この程度問題ない」
「差し支えなければ加護を聞いても?」
「うむ、俺の加護は──『正義』──だ」
うわぁ……似合わねぇー。
お前に1番相応しくない加護じゃん……さっきのどこに正義の要素があったよ?!
「は? ちなみに効果は?」
「己が正義だと認識して動けば──能力が倍化する」
「……へぇ……今回どこに正義を感じる要素があったんだ?」
「女性の裸体は正義だろ」
自信満々に言葉を放つギルマスに俺はドン引きした。
モノホンの変態だ……そこは嘘でも国を救う為にとか言えよッ!
うん、考えるのをやめよう。今は急いでいるからな。
「……とりあえず、これでこいつらを縛っといてくれ」
「これは縄か? 普通の縄じゃないな」
ライクさんが俺にそう聞いてくる。
当然普通の縄では無い。
これは『慈愛の誓い』のミゼリーさんが作った魔道具だ。
「この縄を巻き付ければ魔力を封じる事が出来ます。ライクさんとギルマスはこいつらが逃げないようにここに残って監視と、他に敵が来たら捕縛をよろしくお願いします」
「……それって犯罪者とかに付ける腕輪みたいな効果だな……よくそんな物を持ってるな……」
これは何度も逃げ出す俺を逃がさないためにミゼリーさんが作った物だ。これで毎回ベットに固定されて蹂躙されていたなぁ……。
「まぁ、色々あったんですよ……。とりあえずそれでよろしくお願いしますね?」
「わかった。ここは任せておけ。エルクはどうするんだ?」
「俺とアリアは【深淵】の相手をします」
「──わかった。ちゃんと生きて帰ってこいよ?」
「こんなとこで死ねませんよ。また後で──アリア行くぞッ!」
俺とアリアは地下牢に向かって走り出す──
あれからミカから連絡が無い。無事だと良いんだが……。
『傀儡』のリリーも加護を複数持っている可能性がある。そうなると、かなり厳しい戦いになるのは間違いない。
そして、地下牢に到着すると──
まず目に入ったのは分身体達とマイが犯罪者であろう者達と戦闘している光景だった。
地下牢にいるぐらいだ……凶悪犯な上に強い奴らばかりなのかもしれない。そいつらが強化されていると考えるかなり厳しい状況だ。
何人か死んではいるが、犯罪者だから問題ないだろう。だが、まだ30人以上はいる。
俺の分身体とマイで掃討出来ていない事から、近衛騎士団よりは強いと見ていいだろう……よく持ち堪えていると思う。
まぁ、持ち堪えている理由はわかっているがな……。
なんせ俺の魔力がさっきから全く減っていないからおかしいとは思っていたんだ……。
まさか──
ここでも犯罪者を『幻影魔法』で裸体の美女達に変えているとは……。
すげぇ勢いで分身体が避けてるし、隙を見つけては殺している。
しかもたまにおっぱい掴んでるな……。
『やっと来たな。お前ってやっぱ変態だよな。あのハゲゴリラとそんな変わらんわ』
ギルマスと一緒にすんじゃねぇよッ!!!!
そんでティナは?
『奥の方で戦ってるぞ』
視線を移すと──
激しい猛襲をリリーに繰り出しているティナがいた。
お互いに譲る気配は無く、凄まじい攻防だ。
マジかよ……単純な戦闘力は俺達の中で1番のティナでさえ互角かよ。
こんな激しい戦闘に介入するのは無理だな……俺が死ぬ。
というか──前に見た時はリリーの個人戦闘力はもっと弱かったぞ?
どうなってんだよ……やっぱり、こいつも加護の複数持ちか?
『まぁ、持っている事は持っているが──お前の話から察するに、あの戦闘力は元々の加護の力だな』
…………え?
それって、人を操る力じゃないの?
『あれは自分も操れるぞ?』
……なるほど、自分を戦闘人形みたいにしているわけか……。
加護も進化するのか? スキルもそんなのあれば良いのにな……。
『まぁ、そんな感じだな。使えば使うほど熟練度が上がって出来る事が増える。というか──お前さ、スキルって加護の下位互換だと思ってるだろ?』
ん? そうじゃないの?
『違う。スキルの集合体が加護だ。分かりやすく言えば、相性の良いスキルのセット売りみたいな物だな』
マジか!?
俺ってば色々スキルあるから組み合わせ次第で可能性が無限大じゃね!?
しかも使えば使う程強くなれるとか新発見だぜッ!
『いや、お前のスキル構成とか絶倫王になる為のスキルしかねぇだろ。夜の最強ならなれるだろうな』
ひどッ!?
でも、俺の【
『いや、普通に運だろ。お前の引きが弱いからな。というかマイを呼んで、攻撃させれば敵のもう一つの加護がわかる』
俺の運命は絶倫王しかないのか?
まぁ、それよりリリーの攻略の方が先だな。
「マイ」
「まさか本物のエルク様ですか!?」
「そうだ。ちょっとあいつに魔法撃ってくれないか?」
「わかりました──『
一条の閃光がリリーに向かっていく──
うおッ!? なんだこれ!?
明らかにオーバーキルだろ!?
城を消し飛ばす気か!?
しかし、リリーに当たる寸前で魔法は掻き消される──
…………ん? 魔法無力化の加護か何かか?
『惜しいッ! あれは『魔力分解』の加護だな。指定した範囲の魔法攻撃とかスキルの魔力を分解して無力化する。スキルでも同じのあるぞッ! ユニークスキルでッ!』
…………いや、こんなもんどないせぇちゅーねん……。
『分身体近づけたら魔力にされるから、お前を待ってたんだよ。さぁ行けッ!』
行けッ! じゃねぇよッ!!!!
あいつティナと互角なんだぞ!?
あんな速い動きについていけるかッ!
『お前のおっぱいセンサーは幼女であっても反応する。間違いない。私が保証しよう。だから対応出来るはずだ。私に絶倫王の力を見せてくれッ!』
そんな保証いらねぇよッ!
なんなの!? 俺のおっぱいセンサーは女であれば誰でもOKなのか!?
というか、今の俺の価値ってそれだけ!?
「はぁ……行くか……せめて決定打があればなぁ……」
「エルク様、私に案があります──」
マイは俺に耳打ちする──
──確かにそれが可能であれば行けるだろう。
「なら、俺とティナで時間稼ぐから隙を見て頼むわ──」
俺はティナとリリーの戦闘に介入する為に駆け出す──
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