第77話
俺は『身体強化(極)』を発動する──
ん? なんかいつもより魔力を使っている気がするような……他に魔力を使うような事したか?
体も怠いんだが……。
いや、今はそんな事を考えてる状況じゃない。
皆に近衛騎士団を殺さないように念押ししておかなければッ!
「とりあえず、無力化だからなッ! 殺すなよ!?」
「「半殺し承知ッ!」」
「……お、おぅ……」
本当に頼むぞ? 俺達の顔は割れてるんだからな?
こんな場所で殺して罪人とか洒落にならんからな?!
あと、ギルマス……そんなふらふらで大丈夫なのか?
とりあえず、ロッテを守らなければ──『分身』────
…………あれ? 発動しない?
何で?
その時、ふらつく──
しかも体がさっきよりも怠いんだが?
今更、毒が効いてきたとかじゃないよな?
──いや、これは魔力がガンガン減っているのか?
ピコンッ
『こっちで勝手に限界数まで『分身』は使っているから使えんぞ。分身に魔力を送ってるから無駄遣いするなよ? そっちは自力でなんとかしろ』
はあぁぁぁぁぁぁぁッ!?
ふざけんなよ!?
こっちも手が足りねぇよ!
近衛騎士団からのリンチだぞ!?
しかも魔力も勝手に使ってるとか鬼か!?
これで戦えってか!?
どうしてこうなった!?
説明プリーズ──
──うおッ!?
俺は近衛騎士団の攻撃をかろうじて避ける。
周りを見るとアリア達も手こずっていた。
なんか俺の予想と違うんだが?
近衛騎士団っていっても一般の兵士より少し強いぐらいだと思ってたのに普通に強いじゃんッ!
──ふぉッ?!
また鋭い一撃が襲ってきたので紙一重で避ける。
……覚醒したお陰で気配に敏感になった。回避はかなり良い感じだと思う。
だが、気配に敏感になったといっても男の気配を把握するのはけっこう難しい……。
女なら気配が簡単に察知出来るんだがな……男だと俺の反応が少し遅れてしまう。
ブォンと容赦なく迫る剣戟をロッテを守りながら捌いていく──
守りながらは無理だ。
きっついが『幻影魔法』を使う──
「ロッテはどこに消えた!?」
宰相が俺に叫ぶ。
「さぁな。探してみれば?」
やった事はいつも通りだ。ロッテの姿をカモフラージュして見えなくしただけだ。
俺は近衛騎士団達の攻撃を回避していく──
これは身体強化していなければ避けるのも厳しいな……近衛騎士団強すぎじゃね?
しかも体がさっきよりも怠い……ミカが勝手に魔力使っているせいか?
まさか、魔力まで勝手に使う事が出来るとは……魔力が足りん……。
ミカさぁぁぁん!
せめてアドバイスかフォロー頼むってッ!
『訓練だ。頑張れ。ちなみに分身体への魔力はMAXで回している。本体のお前が弱いせいで分身がすぐにやられて何回も復活させないといけないから大変なんだぞ? 【深淵】の相手で手一杯だ。お前が魔力寄越さないとマイとティナが死ぬぞ』
はあぁぁぁぁぁぁぁッ!?
結局【深淵】いるのかよ!?
『当たり前だ。じゃなきゃこんな対応されるわけないだろ。既にこの国の上層部は脅されて乗っ取られているからな』
そういうのわかってんなら教えておいてくれよな!?
魔力ならいくらでも使って構わんから、マイとティナは任せるぞッ!
『任せておけ。そっちは自力でなんとかしろッ! さっさと片付けて地下牢まで援護に来いッ!』
わかった!
──【深淵】がこっちにいないのであればなんとかなるか?
とりあえず、魔力が無駄遣い出来ない。この状況を打破するには低燃費で乗り切る必要がある。
そして、マイ達の援護に向かわなければならない。
戦況を確認する──
「中々沈みませんね──えいッ!」
アリアは消えては出現し、攻撃している。
「面倒臭ぇな──おらッ!」
ライクさんも一切寄せ付けない槍捌きで圧倒している。
だが、捕縛するには至っていない。近衛騎士団が予想よりも強いせいで無力化が難しいのだろう。
というか、けっこう重症なのに何度でも起き上がってくるんだが……ゾンビか?
下手な攻撃は殺してしまう可能性が高いせいで2人とも思うように動けていない。
ギルマスは──
「……腹が……」
とか呟きながら普通にボコられていた。普通に剣とか生身で弾いてるんだが?
凄く頑丈だな……あの調子だと死ぬ事はなさそうだな。
問題は俺の方だな……正面での戦闘じゃ互角だ……油断したら死ぬ……。
何より、魔力があんまり使えないのがキツイ……。
『身体強化(極)』も魔力消費が激しいが解けば死ぬだろうしな……節約する為に部分強化は無しだな。
というか俺の知らないとこで事態が動いているの何とかならんのか!?
ミカさんや、少しぐらい『ほうれんそう』をお願いしたいんですが!?
『ほう』→報告
『れん』→連絡
『そう』→相談
これ大人なら誰でも知ってる基本の事だからな!?
『……わかったわかった。また今度な? 最低限のフォローはしてやるから頑張れ。お前が対応し易いようにしてやる。もう一度『幻影魔法』を発動しろ。今回は特別に私が感覚がわかるようにフォローしてやるからコツを掴めよ?』
お前それ絶対に『ほうれんそう』しないだろ!?
とりあえず、俺は言われるままに『幻影魔法』を発動すると──
目の前の近衛騎士団に魔力が纏わりつく──
そして頭の中にミカの繊細なイメージが入ってくる──
なるほど。ここまで詳細にイメージすればいいのか。
ただ疑問がある……。
…………ミカさんや……何でイメージが美女達の裸体なんでしょうか?
『私もそんなに余裕が無いからな。お前が日頃考えている事をイメージしただけだが? これなら『絶倫王(極)』が対応しやすいだろ? 後は自分でなんとかしろ。じゃあな』
ちょっと待てッ!
これをそのまま具現化するのか!?
マジで?!
既にここまで発動したら止める事は出来ない──
目の前の近衛騎士団達は裸体の美女達に変わる。
いや、確かに本物と区別がつかないが──
これは酷くねぇか!?
どうしてこうなった!?!?!?
──そこかッ!?
おっぱいセンサーが働き、簡単に避ける事に成功する。
…………確かにこれなら簡単に対応出来るな……でもこの美女達の正体って近衛騎士団なんだよな……。
こんな使い方が出来るとは……『幻影魔法』って怖い魔法だな……。
おっと、敵かどうかわからないようでアリア達の手が止まっている。
「一応言っておく。こいつらは近衛騎士団だからな?」
「「え?」」
アリアとライクさんは『何故?!』と言わんばかりの表情をしていた。
「ウオォォォォォォォッ!!!! 美女達の裸体がァァァァッ!!!! 俄然やる気が出てきたぜッ!!!!」
ギルマスは裸体を拝むと同時に息を吹き返した。
そして、歓喜の声を上げると裸体目掛けて突っ込んで行き、組み伏せて無力化していく──
その姿は欲にまみれた漢だった。
ピコンッ
『お前と同じだな』
ちっがぁぁぁうッ!!!!
そんな事言う為に効果音つけるなよ!?
というかお前、マイ達のフォローで忙しいんだろうがッ!
あぁァァァァッ──
本当──
どうしてこうなった!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます