第72話
あの後、ミカはショッピングを楽しんだみたいでご満悦だった。
何やらスキルを買ったと言っていた。
一応、俺にも使えるか聞いてみたが──『使えないが、お前のサポート用に買ってやったから感謝しろよ?』と言われた。
せめて何のスキルなのか教えて欲しかったが……。
次の日──
俺達は王城に向かう為の準備が終わる。
アリアとロッテもワンピース姿の可愛らしいコーディネートだ。
ドレスはさすがに、もしもの時に動けないので却下したが、平民だし軽装でも問題ないだろう。
ライクさんの到着を待っていると姿が見えた。
「エルク、来たぜ? 謁見の間はメリルを孤児院で預かってもらいたい。メリル、いい子にしてるんだぞ?」
「はーい」
シスターがメリルちゃんを連れていく。
「……ライクさん、その槍は?」
「ん? 武器だが? だって王城を落とすんだろ? アレク──いや、ギルマスもたぶん武装してくるぞ?」
えぇ!? ライクさん?!
アレクってギルマスの事!? 立派な名前だな!?
というか、ギルマスも武装してくんの!?
何か戦闘になるような──俺の知らない情報があるのか?!
「うーす。来たぞ〜」
ライクさんの言う通り、ギルマスも謁見に行くというよりは戦闘に行くような姿だな。
腕には鉄甲を嵌めている。
「おい、ギルマス──王城に行くのに何故完全武装してやがる」
「……いや、だって【深淵】がいるかもしれないんだろ? これぐらい普通だろ……むしろ丸腰で行く勇気が無い。お前らこそ正気か?」
……なるほど。確かに一理あるな。
危うく、どうしてこうなった!? と言いそうになったぜ……。
『ちッ』
どうやら3回目は回避出来たようだ。
「理由はわかったが──そんな完全武装で大丈夫なのか? 王城に入れて貰えないんじゃないのか?」
「まぁ、謁見中はさすがに収納アイテムに入れておくぞ? ライクもだろ?」
「もちろんだとも。いきなり殺しはしないぞ?」
ライクさん……発言が少し怖いぞ?
「じゃあ行くか」
「あ、すまん。昨日言い忘れてたが、ここに馬車が迎えに来る手筈だ」
そういう大事な事は言い忘れるなよ!?
「……ギルマス……他にも言ってない事とかないよな?」
「ないはずだ」
なんか段々不安になってきたぞ?
『先行きが曇っとるなッ!』
うっさいッ!
しばらくすると数台の馬車と大量の兵士がやってきた。
まるで極悪人の犯罪者を移送するかのようだな。
どうしてこうなった!?
『今度こそ3回目頂きましたッ!』
今はそれどころじゃねぇよッ!!!
兵士は緊迫した表情をしている。
これは明らかに普通の対応じゃない。それに王都を救った英雄にする対応でもない。
【絆】が動いている事がわかっているなら、もっと丁重に扱うはずだ。逆らっても得なんか全くないからな。なにより、【深淵】を退けた事ぐらいは既にわかっているはず。
普通は敵に回すような対応はしないはずなのだが……。
連絡事項に不備があったのか?
俺はギルマスに視線を向ける──
「ギルマス……何でこんなに兵士が来るんだ? ちゃんと伝えたのか?」
「うむ、しかと伝えた。俺も兵士が何故こんなに来たのかさっぱりわからん。逆らえば捕まるような雰囲気だな。やはり武装してきて良かった良かった。【深淵】が指図したかもしれんし、殲滅するか?」
「アホか。ここで殲滅なんかしたら俺の計画が台無しだろうが。ちなみに何て伝えた?」
「普通に王都を救った者から謁見を求められていると言ったな」
「それだけ?」
「それだけだな」
……こいつまさか──
あれを言ってないな?
「【絆】が動いている事は言ってないのか?」
「……忘れてた……」
こんのアホッ!
そりゃー、敵意丸出しで来るわッ!
貴族連中からしたら、損させた相手に報復するチャンスだろ!
「お前らをこれから移送する。大人しくこれに乗れッ!」
豪華な鎧を纏った男がそう告げる。おそらく騎士団長と予想出来る。
さて、どうしよ?
「エルク様、ここは私に任せてもらえませんか?」
アリアが俺に耳打ちしてくる。
「何か策があるのか?」
「はい。このハゲの尻拭いは私にお任せ下さい。基本的に国は【絆】に対して不可侵とすることを約束しています。私がラウンズと明かせば丁重な対応になるでしょう。予定に変更はありません」
ん? 不可侵なのに正体明かせば丁重に扱われるの?? ちょっと意味がわからないんだが……これは【絆】に何か特権でもあるのだろうか?
そういえば【絆】は国に対してある程度融通が利くと聞いていたな。
「なるほど。予め通達出来ていれば問題なかったんだがな……すまんが、頼めるか?」
初めからアリアを頼れば良かったな……。
アリアは騎士団長の前まで行って、何か話しながらラウンズの証を見せる──
何と言っているのか聞こえんな……。
『やれやれ、仕方ない。教えてやるよ──
「誰に命令しているのかわかっていますか? 今からでも丁重に扱いなさい」
「逆らえば──こ、これはラウンズの証?! まさか!?」
「この者達は私の協力者です。もう一度言いますよ? 私達を国賓として丁重に扱いなさい。でなければ──【絆】に目を付けられます」
「わ、わかりました。これより我らは貴殿らの護衛にあたりますッ!」
──とまぁ、こんな感じだな』
…………ちょっと待て、【絆】ってそこまで国に影響力があるのか?
「エルク様〜、どうやら向こうの勘違いだったようですよ?」
「そ、そうか。勘違いは誰にでもあるからな。さすがアリアだ。頼りになるな〜」
少し頬が引き攣りながらアリアを褒めると、とても喜んでいた。
予定通り、俺、アリア、ロッテ、ライクさん、ギルマスが馬車に乗り込む。
ライクさんとギルマスは他の馬車だ。
中はとても広かった。
揺られながら乗っていると違和感に気付く。
馬車の中に姿は見えないが、俺達3人以外の気配がするのだ。
気のせいではない。
俺のおっぱいセンサーが察知している事から間違いなく──女性だ。
しかも2人いる。
そしてミカが何も教えてくれない事から、俺に対して危害を加える者──暗殺者の類ではない事が予想出来る。
動きはない。今なら確実に触れるな。
俺は誰もない場所に『身体強化(極)』で強化した状態で手を伸ばす──
「──そこかッ!」
おっぱいを掴み取る事に成功する。
ふむ、張りのある程よい弾力のある良い感触の大きなおっぱいと、少し小ぶりだが手に収まるお椀サイズか。
この感触は──
「あん♡」
「むぅ、バレた」
やはり、マイとティナか。
どうやら1号と2号が『幻影魔法』を使っていたようだな。
分身体は『気配遮断』や『隠密』を使っているせいか全くどこにいるかわからん……というか、こっちにいるなら連絡ぐらいしろよな……。
『私が報告する必要が無いと伝えている。分身体は私の指揮下にあるからな』
…………ちょっと待ってくれないか!?
確かに俺のスキルが使えるとは聞いていたが、お前の方に管理権限あるの??
『お前が指示するより、私が指示を出して報告してる方がお前が楽だろ? 優しい私の気遣いだ』
なるほど。それはありがたい事だな。一々画面チェックするの面倒臭いし、いつも観れるわけじゃないしな。
しかし、今気付いたが──
実は俺って凄かったんだな……気配を探りやすくなった今でも分身体の気配が全くわからんのだが……。
不意打ちされたら絶対対処出来ないぞ?
『自分の力を今知った件について!』
そうだなッ!
そして、これに対処してきた猛者達にびっくりだよッ!
逆に猛者達との差が明白になって凹んだんだが!?
『どうしてこうなった!?』
いや、お前が気付かせたんだろ!?
ってか、お前がそれ言うのかよ!?
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