第71話

 音消せるなら消しておいてくれよな……例えば重要な時はだけ音で知らせてくれね?


 けっこう五月蝿いんだよ!


 まぁ、その事より──ミカさんや何故前みたいに調べられないの?


『音は善処しよう。前みたいに出来ないのはさっき言った通りだ。私の力は制限がかかっている。そもそもこうなったのはお前を助けたせいだからな?』


 まぁ、確かに俺のせいだな……ミカには本当悪い事をした。


 ごめんな?


『謝罪を受け取ろう。まぁ過ぎた事だ。私もお前の必死さには感銘を受けたからな。ちなみに一応お前が寝てる間に出来る事を少し確かめたぞ』


 ミカ、お前優しい奴だな。


 それにミカが出来る事か……それは気になるな。


 教えてくれ!


『まず、お前の持っているスキルは私も使う事が出来るし、スキルのサポートが出来る。簡単に言えば『索敵』は私が行って、敵が近付けば教えてやる事が出来る。この間の『幻影魔法』みたいにスムーズに発動出来るようにサポートが可能だ。それと、『マップ』あるだろ? スキルを発動すると『索敵』と『鑑定』も自動で発動しているんだ知ってるか?』


 ほうほう、それはとても便利だなッ!


 凄いじゃないかッ!


 ユニークスキルだけあって『マップ』に『索敵』と『鑑定』が自動で組み込まれていたのか……確かにそうでなければ名前がわかったり、敵の位置とかわからないよな。


 つまり、俺が『索敵』や『鑑定』スキル持ってなかったら『マップ』はただ地形とかを見るだけのスキルだったというわけか……。



『まぁ、そういうこった。稀にだが、ユニークスキルは他のスキルと同時発動するものがある。通常スキルでも私がいる事によってスムーズに同時発動する事が可能だ。例えば──『怪力』と『身体強化』は相当訓練しないと同時発動が出来ないんだが、私がいれば簡単出来る上に、強化倍率を上げて使う事が可能だ』


 それはかなり凄い事なのでは?


『怪力』スキルとか持ってないけど、手に入れたら攻撃力が凄い事になるって事だろ?



『オーガとかでも腹パン一発だろうな。お前は『怪力』持ってないがな(笑)まぁ、サポートに関しては『幻影魔法』の時のように私がいれば、脳の負担は軽減出来るぞ』


 そういえば、スキル複数を同時にするのってあんまりなかったな……『隠密』、『気配遮断』、『幻影魔法』、『身体強化(極)』の4つ同時発動はした事があったぐらいか?


『今のお前だと5つ以上の同時発動は脳の血管が破裂してもおかしくないぞ。命拾いしたな』


 こわッ!?


『とりあえず、しばらくは私が不完全な『幻影魔法』のサポートをしてやるからコツを掴め』


 頼もしいッ!


 ミカ様、ありがとうございますッ!



 ピコンッ


『これだけ言っておく。私の機嫌損ねたらサポートしてやらんからな?』


 ──?! まさかの脅し!?



 ピコンッ


『なら私を楽しませろ。あ、そうそう【祝福ログインボーナス】を使え。けっこう良い物をくれるはずだ。最後に上司がそう言ってたッ!』


 むむ、それはやるしかないだろう。


 大事な事だから音を出してくれんだな?



 俺は【祝福ログインボーナス】を使用する──


 すると、文字が表示された。


[この度は、部下をお引き取り頂き誠にありがとうございます。つきましてはこの場をお借りして退。しばらくハズレ枠を減らすので今回はで許してね★]


「…………ん?」


 退職金を払う?


 ちょっと待ってくれないか!?


 これ俺の為の加護だよな?!


 何でミカの退職金が払われるんだよ!?


 しかも、俺への報酬はないの!?


 どうしてこうなった!?


 ピコンッ


『2回目頂きました! まぁまぁ、ハズレ枠がしばらく減るから良いじゃないか。これは私の肉体が無くなった詫びだと思えばいいだろ?』


 2回目って……まだ何かあるのかよ。というかこんな事で音出すなよ!?


 まぁ、確かに……俺のせいで肉体を失ったから……今回文句を言うのはお門違いだろう。



 しかし──


 何も出現しないんだが?




『うほッ、やったぜ! これでしばらくは暇はしないな!』


 いや、意味がわからんのだが? 俺には何も表示されてないんだが!?


『私の退職金は【神様マーケット】の接続権限さ♪ ちょっと、お買い物して来る〜♪ バイバ〜イ♡』


 …………【神様マーケット】? なにそれ?


 何か買えるのか?


 とりあえず、ご機嫌で何よりだな……。



 さて、謁見は明日だし、情報収集するか────




 ◇◇◇




 マイとティナは情報収集に向いてないので、俺とアリアの2人で行った。念の為に2人にはロッテの護衛を任せてある。


 潜入が得意な俺は分身体と共に王城に侵入したが、これと言って重要な情報は得られなかった。


 気になったのは──王の部屋にあった謁見の予定表とスケジュールだ。


 軽く見たのだが、俺達の謁見の件はそこまで大々的に行う感じではなさそうだった。


『慈愛の誓い』で国難を救った時は、国主催で盛大なパーティが行われていた記憶がある。それもスケジュールには書いてなかった。


 そういえば──


 今気付いたが、ギルマスからの話で褒賞について何にするかの相談もなかったな……普通は予め、滞りなく進める為に決めておくんだがな……。


 褒賞を渡さないつもりなのか?


 いや、エルドラン王国は小国だ。もしかしたら、しきたりとか緩くて王がその場で決める可能性もあるか?


 正直……きな臭い。



「エルク様」


 別行動をしていたアリアが俺の所に戻ってきて声をかけてくる。


「アリア、どうだった?」


「正直、大した情報はありませんね……あえて言えば私達は住人に英雄扱いされていますが、貴族の大半からは良い印象を持たれていないようです」


 なるほど、予想通りだな。これが歓迎されてない理由だろうな。


 だが、既に打てる手は打っている。


「そうだろうな。この機会に稼ごうとした貴族が高値で薬を売り払って、それを買い取っている貴族達は大損しているはずだ。高値で買っている貴族達からすると無料で配布されているのは面白くないだろう。金の無い貴族には配布したんだろ?」


 少しでも貴族を味方をつける為に薬を買えなかった貴族にも配るようにアリアに指示していた。


「えぇ、指示通りに貴族でも買えない者達には配布済みです」


「なら問題ないな。【深淵】の情報はなかったのか?」


 ここが1番気になる所だ。『病魔』カインを退けたとは言え、【深淵】が1人だけとは限らない。


 アリアにはそっちをメインに調べてもらっていた。


「残念ながらありませんでした。しかし、仮にいたとしても戦力的に問題ないのでは?」


 確かに、いたとしても俺、アリア、ギルマスがいればなんとかなるかもしれんが……加護複数持ちは油断出来ないからな……。


 まぁ、なるようになるか……どうせ明日にならんとどう転ぶかわからんしな。



 俺とアリアで情報共有した後孤児院に戻ると──


「お、エルク。明日約束の飯に行こうぜ」


 ライクさんが訪れていた。


「ライクさん、すいません。明日は謁見があるので、また今度でお願いします」


「ん? あぁ、街じゃ英雄扱いされてるぐらいだからな。褒賞が出てもおかしくないか」


「あ、そうだ。ライクさんも来ませんか? 少しきな臭いので護衛を頼みたいんですよ」


「はぁ? 王城で戦闘でもあるのか??」


「実は──」


 俺は【深淵】が今回関与している事と、知り得た情報を怪しくない程度に伝える。



「……なるほどな。俺に任せておけ。今回の元凶がいるかもしれないなら俺が潰してやる」


 さすがライクさんッ! ありがとう!


 協力な戦力ゲットだぜッ!


 でも、少し顔が怖いです!


 これで、もし仮に【深淵】がいたとしても対処出来るだろう。


 どうしてこうなった!? と言う場面がまだあるらしいから念には念をだ。


 ライクさんには明日孤児院に来てもらうようにお願いした──



 例え【深淵】がいたとしても──


 俺は『おっぱいがどこにあるのかわかる力』に覚醒したお陰で気配に敏感になった。


 カインの時のように油断しなければ不意打ちも対応出来るはずだ。


 敵が女性なら確実におっぱいセンサーにより、捉えられる。


 これはもう確定だろう。


 ティナとの訓練でも『身体強化(極)』を使えば捉えられるぐらいだからな。


 かつての偉人は言った──


『性欲は人を強くする』


 ──と。


 これを知った時は「こいつ馬鹿じゃね?」とか思っていたが、今ではわかる。


 俺がおっぱいを掴み取ろうとする執念はまさしく性欲の塊だ。


 これはもう認めるしかなかろう。


 絶倫を誇ろうと思う。



 ピコンッ


『お前は元から立派な絶倫王だろ』


 お前サラッと戻って来たな!?


 しかも他人に言われると腹立つなッ!?


 それにこの表示に音いらねぇだろ!?



 とりあえず、明日は謁見だな……。

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